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第十四章 他学年試合編
1135話 やっぱり戦闘狂
しおりを挟むゴルさんとの接近戦の最中、クロガネの竜魔息が放たれる。
強大な魔力の塊、魔術にも匹敵するそれはゴルさんと……私を飲み込もうと勢いよく迫ってくる。
当然その場から避けようとするゴルさんの足元に、私は風の鞭を絡めつかせる。
「!」
「リリアーナ先輩の真似だよ!」
私の身体を拘束していた、リリアーナ先輩の風の鞭。それを応用したものだ。
もっとも、それが風であろうとなんであろうと……燃えるゴルさんの足は、その炎で鞭をあっという間に燃やしてしまう。
もっとも……そのわずかな時間があれば充分だった。
「ちっ」
「私は、これで!」
足元に魔力で作った足場……それも、弾力性の高いものを作り出す。
それに乗って、反動で思い切り飛ぶ。さっき人間砲弾を弾き返された、その応用だ。
ぼよんと飛び上がることで、竜魔息の射程圏から脱出する。
「おぉおおおお!!」
その場に残されたゴルさんは、逃げることを諦め……いや、諦めなんて後ろ向きな考えではないな。
攻撃を待ち構えて、腰を下ろして……右拳に、力を集中させる。その拳が、真っ赤に燃え上がる。
本来、それは無謀にも思える行為だ。いくら魔力強化した拳でも、魔術並の攻撃には届かない。
だけど……それは、使い魔の力だ。
「おぉおおおっ!!」
拳を、放つ。炎に覆われた拳が、自身を飲み込もうとする竜魔息と衝突した。
クロガネの攻撃と、使い魔の力を纏わせたゴルさん。両者のぶつかり合いは、拮抗していた。
……今なら、横から攻撃でもしてしまえばゴルさんを倒せるかもしれない。
「むっ……ぬっ、ぅうううう!」
「へ」
そんなことを考えていると、驚くべきことが起こった。
拳で竜魔息を受け止めたまま……両手を使い、それを"掴んだ"のだ。
そして、身体を捻り……私目掛けて、腕を思い切り振るう。
つまり、竜魔息を私に向かってぶん投げた……みたいな形になったわけで。
「嘘でしょ!?」
信じられない。クロガネの竜魔息を防ぐならともかく、攻撃の軌道を変えてしまった。
燃える拳で打ち消すのかと思っていたから、これは思いもよらない使い方だ。
って、のんきに分析している場合じゃない! どうしよどうしよどうしよ!
「ゴォオオオ!」
「あれ」
すると、背後に強大な気配が。
振り向くと、そこには大きな口を開けたサラマンドラの姿があった。心なしか、額にブチギレているような青筋が見える。
こりゃあ……怒っちゃってるってことだよねぇ。そりゃあ、さっき思いっきり額に激突しちゃっだもんねぇ。
「ォオオオォオ……!」
「やば……」
正面からはクロガネの竜魔息、背後からはサラマンドラの炎が放たれる。
強力な二つの攻撃を、正面と背後から同時に食らってしまう。魔術並の威力を持つそれらを。
咄嗟に、身体を魔力強化で固めたけど……それに果たして、どれだけの効果があっただろう。
「……かふっ……」
爆音が響き、もろに攻撃を受けてしまった私はダメージの重さにその場に立っているのがやっとだった。
結界の中でこれか……これはなにもないところで食らったら、とんでもないことになってしまう。
今でも、ちょっとふらふらするし。これは、結構ヤバいかも……
「……あれを食らってまだ立っているのか。信じられないやつだな」
『契約者……!』
ゴルさんが私を見て呆れたように言葉を漏らし、クロガネは慌てたようにしている。クロガネのそんな姿、初めて見たよ。
でも気にしないで、クロガネが悪いわけじゃないから。私だって、まさかあんなやり方でクロガネの攻撃をかわすなんて思わなかった。
あんな……あんな……
「やっぱりゴルさんは、すごいなぁ……!」
「! 髪が……」
あー……かなりヤバいはずなのに、なんだか気分が良くなってきたかも。なんでだ?
テンションが上がって、なんだか……なんだか、いい感じだ!
「キッヒヒヒ!」
「あれを食らって倒れないどころか、その状態になるのか」
私は飛ぶようにしてゴルさんの眼前へと迫る。繰り出した拳は、寸前で顔を横にずらされたので直撃は避けられる……
けど、ほっぺたがちりっと切れて血が流れた。
ゴルさんこそ、これを防ぐなんてやるじゃん!
「あっはははは、もっともっと楽しもうよ!」
「戦闘狂が!」
ゴルさんの身体が全身燃え、サラマンドラの力が膨れ上がる。繰り出される拳を蹴りを、私は冷静に対処していく。
避けて弾いて、防いで。だけど、使い魔の力を混ぜたそれは私にわずかにでも着実にダメージを加えていく。
人のこと戦闘狂って言うけど、ゴルさんだって……
「おぉおおお!」
「せぇえええ!」
ゴルさんの蹴りと私の拳が激闘。炎により燃えるけど、この熱さも今は心地良い!
私もまだまだ高まるし、ずっとこうして戦っていたい……
「狂炎太陽黒《ベルセルクコア》!!!」
「ぁえ……?」
いつの間にか、背後にいたゴルさん……その分身。
私と組み合っている隙に分身魔法を使い、しかもバレないように詠唱を済ませていたのか。
そして今、背中に……強烈な、魔術がぶつかった。
「ぐっ、ぁ……!」
これ、この感覚……楽しい、のに……
なんか、力が抜けていく……ような感じがする……!
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