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第十四章 他学年試合編
1139話 やるべきことはたくさん
しおりを挟むゴルさんだけではなく、いろいろな人たちと話した。特に、同級生ではなく上級生と。
試合が終わり、あとは自由時間。そして、決勝を戦った私たちはもちろん、それを見学していた他のクラスもみんな集まっている。
つまりは、他学年の交流会へと移行する。これは滅多にない機会……個人個人で交流することはあっても、クラス単位でとなると貴重な機会だ。
「キミたち、なかなかいいコンビネーションだったよ」
「えへへ、そうですか」
周りでは、普段話すことのない人たちが話をしている。試合で見せた力を認め合い、アドバイスをしたり、仲良く笑い合ったり。
私も、試合をしたクラスの先輩と主に話したりしている。
まあ、生徒会のメンバーは普段話しているから、それ以外の人たち……かな。というか、向こうから話しかけてくる。
「いやあ、一年生でこれとはたいしたもんだ」
「本当、将来有望よね」
「魔術をあれだけ撃てるのもそうだが、なにより戦略がすさまじいな」
「なあキミ、学園を卒業したらウチに嫁がないか?」
あれやこれやと、試合をしていないクラスの先輩まで詰め寄ってくる。
先輩からこんなに注目される、というのは悪いことではないんだろうけど……あ、圧がすごい。
私はとりあえず適当に受け流す……ことができているのかはわからないけど、できるだけ笑顔を浮かべながら対応していく。
「私なんてまだまだですよ。ゴルさん……ゴルドーラ先輩にだって、まだ及ばないですし」
「そもそもゴルドーラ様とあれだけ競り合える生徒がどれだけいるのかって話だよな」
「あぁ。なんせ下級魔導士相当だって話だからな」
「えぇ、私は中級はあるって聞いたわよ」
「いやぁ、あんな魔術をポンポン撃てるんだし、サラマンドラを使い魔にしてるんだ。上級はあってもおかしくはないと思うぞ」
どうやら、この学園で私よりも長くゴルさんのことを見ている先輩たちでも、ゴルさんの力は図れないみたいだ。
ていうか、私も……クレアちゃんが下級魔導士相当だって言ってたのを聞いただけで、実際の下級魔導士がどんなのかわかんないんだよな。
この国は魔導大国とは言うけど、ゴルさん以上の実力者がポンポンいるのだと思うと、末恐ろしくもある。
「使い魔って言うなら、フィールドくんこそだろ」
「そうねぇ、黒竜を使い魔にしてる人なんて、学園どころか国中にだっていないわよ」
「というか、黒竜をこの目で見たのだって初めてだよ」
ふむ……みんなクロガネのこと褒めてくれる。自分の使い魔が良く言われると、自分のことのように嬉しいですなぁ。
以前、この国の復興作業の時にクロガネを召喚したら、みんなすごい顔してたもんなぁ。
あんな形だけど、クロガネをみんなに自慢できたのはよかったぜ、へへ。
「……ふぅ」
それからしばらく先輩たちの質問攻めに遭い、なんとか脱出した私は一息つく。
いろんな人たちと話したかったのはその通りなんだけど、思ったより疲れちゃったよ。
試合が終わってそのまんまだからな。疲労も溜まってると言えば溜まってるし。
『お疲れだな、契約者』
「お疲れですよ、クロガネぇ」
頭の中に響く声。聞き慣れたクロガネのものだ。
「クロガネは、どうだった? 今回の試合」
『なかなか、楽しめたぞ。なかなか全力を出せる相手はいないからな、やはりあのサラマンドラは骨のある相手だ』
頭の中で会話していても、表情までは見えない。
それでも、クロガネのご満悦な表情が目に浮かぶようだ。
クロガネみたいに強大な力を持っていると、全力を出せる相手ってのも限られてくるんだろう。
そういう意味で言うと、クロガネといい勝負ができるサラマンドラってやっぱり強いよなぁ。
「……なんかいいよね、こういうの」
『こういうの?』
「うん。みんな楽しそうでさ」
少し離れたところで、周囲を見回す。そこには上級生も下級生も関係なく、ただ魔導の楽しさを分かち合っている姿があった。
普段は同じ学校にいてもあまり接することのない相手と、こうして話し合って笑い合って。それってとても素敵なことだと思う。
私にとっては……ずっと師匠と二人だったから、こういうのこそ憧れていた景色だ。
「友達や、仲良くなりたい人や……知り合いでも、そうじゃない人でも。自分たちの好きなこと話し合ってさ、情報交換したりなんでもない話をしたり。こういうの、憧れてたんだ」
『……契約者の周りには常に人がいるが、それで満足はしないのか?』
「満足なんて、全然。私はもっと、もーっと多くの人と友達になりたいって思ってるんだよ。……まあ中には、無理だろうなって人もいるけど」
頭の中に浮かぶのは、紫髪オールバックの筋肉男。はーっはっはっハと高笑いしている。
ああいうタイプとは、仲良くなる以前の問題だと私は思う。
そうだよあいつが降参しなければ……いや、言い訳だな。あそこで私が負けちゃったんだから、その時点で私が負けたことには変わりないもんね。
もっと強くならないとなぁ。以前指摘された対人経験以外にも、搦め手にも対応できるようにならなきゃ。
まだまだ、やるべきことがたくさんだ!
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