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第十五章 最高の魔導士編
1165話 帰ってまいりました
しおりを挟むべルザ国に帰ってきた。思えば、外からこうして国を見るのってすごく久しぶりだな。
師匠と度々来ていたときや、魔導学園に入学するために来たり、魔大陸から帰ってきたり……だけど、それもかなり前のように思える。
こうして、外から国の中に入ろうとするのは、なんだか新鮮な感じだ。
そして、大きな門に近づいていく。そこに立っているのは、門番のおじさんだ。よく会うよな。
「おー、エランちゃんたち、戻ってきたな。まさか日を跨ぐとは思ってなかったよ」
「やっほ。私もだよ」
お互いに手を上げ、ハイタッチ。こういう気さくな仲なのもいいよね。
ルリーちゃんはぺこりとお辞儀をして、フィルちゃんはぴょんぴょんと跳ねている。
そうして見て回っていると、気まずそうなキリさんの姿が目に入った。
「えぇと……あれ、その馬車はパルシュタン家の? それにあんた、確か護衛の騎士じゃなかったか」
「その……いろいろありまして」
……まあ、気まずいのも当然か。国の外に出るということは当然、門番さんと接しないといけない。
彼らがいつ国を出たのかはわからないけど、まあ私たちが戻ってきた時間を考えると……一時間かそこらってところだろう。
そんな短い時間で、別の国に行くために出ていった馬車が帰ってきたのだ。
「うーん、そうなんだよ。いろいろあって……」
「そ、そうか。そもそもなんでエランちゃんたちが一緒なのかとか、気になることはあるけど……その中に、ヨークリア様は乗っているのかい?」
「ヨークリア様は乗っていません。少し理由がありまして、馬車だけ戻ってきました」
だけってのも正確じゃないんだけどね。
門番としての役目を果たすため、おじさんは馬車の中を改めると言う。
それもそうか。中に危険物はないかとか、不審者は乗っていないかとか、それらを確かめなければいけない。
少々衝撃的な光景かもしれないけど、ここで隠してもまったく意味のないことだ。なので私は、馬車の扉を開ける。
「……なんだいこれは」
馬車の中の光景を見て、門番のおじさんは顔を引きつらせていた。ま、そうなるよね。
馬車の中では、十人の黒装束がぎゅうぎゅうに詰められているのだから。
経緯を説明するのは手間だけど……ま、仕方ないか。
かくかくしかじかちょもらんま
「野盗……とは違った連中か。おまけに、魔力が使え無くなる石を持っていたと」
「放置しておくのも危険なので、国へ連れ帰ったのです」
なんとか話を纏め、話す。おじさんも魔導は使えないみたいだけど、それが深刻な事態だというのはわかっているみたいだ。
「けど、このまま王城にいくということは、その石も一緒に持っていくということだろう? 大丈夫か?」
「……」
あー……そうか、お城に行くためには王都を通らないといけないわけで、そうすると魔力封じの石が周囲にその効果を発揮してしまう。
その範囲はわからないけど、歩けば近くの人たちは魔導が使えなくなるわけだ。
そもそも生活最低限の魔導しか使ってはいけないとはいえ、いきなり魔導が使えなくなるようなことがあればそれは大変な騒ぎになるだろう。
これを持って移動するのは、危険……か。
「なら、これ本当にどうしよう」
国の中で危険に襲われることはないとはいえ、魔導が使え無くなればパニックは必至だし。
うんうんと考えていると、ルリーちゃんが手を上げる。
「それなら、手間になりますけど……エランさんが一度お城に行って、その魔導具に詳しい人を呼んでくると言うのはどうでしょう。石は私がここで持って待っておくので」
ルリーちゃんの提案。
確かに、石を持ち運ぶよりはここに置いておき、誰かを呼んできた方が早い。
ルリーちゃんが、石を持ってここで待っていてくれると言う。私たちが持ち帰ったものだし、おじさんに任せるのも悪いもんね。
「でも、いいの?」
「どのみち、話を通すならエランさんの方が早いと思います」
……まあ、自分で言うのもなんだけど、私ならバシバシ話を通せる。
お城に気軽に入れるって言うのもそうだし、ルリーちゃんやフィルちゃんではうまくいかない可能性が高い。
そういうわけで、ルリーちゃんとフィルちゃんにはここで魔力封じの石を持って待っていてもらい、私とキリさんが馬車と一緒にお城まで行く。
そこで黒装束の扱いはキリさんに任せ、私はマーチさんを呼んでくると言うことに。
「しかし、考えが及ばなかった……申し訳ない」
「いいですよ。むしろ魔導士の私が気づかなきゃいけないことだったし」
魔法が使えなくても、魔力封じの石が近くにあれば使い魔だって消えてしまうだろう。
周りを見れば、使い魔と遊んでいる子供や使い魔と仕事をしている人たちもいる。
使い魔が消えてしまえばそういったところにも影響が出る。
「マーチさんなら、なにかわかるかな」
「……エランさんって実はものすごい人なんじゃ……」
「へ?」
「な、なんでもないです」
そんなこんなで話しているうちに、王城につく。
城の門番に停められたが、事情を簡単に説明し通してもらえた。この石のこともあるが、貴族の命が謎の集団に狙われた……というだけでも一大事だ。
さて、まさかこんな形でゴルさんに会うことになるとは思わなかったけど……行きますか。
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