史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
16 / 1,198
第一章 魔導学園入学編

16話 ダークエルフの少女

しおりを挟む


「あ、えっと……あ、りがとう、ご、ざい、ます……」

 手を差し伸べられた女の子は、キョロキョロと視線をさまよわせた後……恐る恐るといった感じで、私の手を取った。
 エルフ特徴の長い耳は、ペタンとうなだれていた。

 うーん、これがダークエルフ……
 髪の色や肌の色は私の知っているエルフとは違うけど、それでもきれいだな。

「私、エラン。エラン・フィールド!
 あなたは?」

「あ……る、ルリー……です」

「ルリーちゃん!」

 掴んだ手を引っ張り、立ち上がらせたダークエルフちゃん……もとい、ルリーちゃん。
 なんかもじもじしてる……そういう仕草、ぐっと来ますな。

「ルリーちゃんも、入学試験、受けに来たんだよね」

「は、はい。でも、私は……」

「じゃ、行こう!」

「え、ちょ……わわ!」

 同じ入学希望者なら、ここでじっとしているわけにもいかない。
 お話はしたいけど、それは移動中でもできる。
 私は、ルリーちゃんを引っ張り歩き出す。

 迷子だった私だけど、ふふん。もう道はわかるのだ。
 あの、同じく入学希望者であるダルマ男の行った方向についていけば、私たちもたどり着けるはずだ。

 ……なんか、あの男に頼るみたいで、嫌だけど。

「四の五の言ってられないもんね」

「あ、あの……」

「あ、ごめん、痛かった?」

 ふと、ルリーちゃんの手を引っ張ったままだったことを思い出し、手を離す。
 小さく柔らかい手だった。思わず強く握っちゃったかな?

「そ、そうでは、なくて……
 あの、わ、私……エルフ、です」

「え、うん。聞いたけど」

 俯き、なにかに耐えるようにしていたルリーちゃんは、恐る恐るといった感じに、口を開く。
 私はエルフだ、と。

 けど、それは今更だ。
 髪の色や肌の色は違うけど、その耳や瞳の色は間違いなくエルフだし……
 それに、さっきダルマ男が散々言ってたし。

「え、っと……それ、だけ、ですか?」

「……?」

「あの、ほら……
 私、ダークエルフ、です!」

「……??」

「いや、そんな『なに言ってんだこいつ』みたいな顔されても……」

 自分の髪をかき上げ、耳を掴んで、自分はダークエルフだと、見せつけてくる。
 なんだぁ? その髪嗅いだらいいのかぁ? なーんて!

 みたいな、もなにも……私は今本気でこの子に『なに言ってんだこいつ』と思っている。
 だって、エルフだとかダークエルフだ、とか言われても……

「もしかして、さっきダルマ男が言ってたことと関係ある?」

「は、はい……
 って、その、ダルマ男って……」

「さっきの男のことだよ?
 イザ……ダルマ……とか言ってたっけ」

「……」

 あれ、なんか……私の言葉を聞いてか、ルリーちゃんが唖然としているような?
 きょとん、というか、信じられないものをみるような、そんな目だ。

 さっきの、ダルマ男たちも、一瞬そんな目をしていたな。

「あ、あの、ダルマス家ですよ?
 知らないん、ですか?」

「知らない」

「お、おぉ……ほんとに、そんな人いるんだ……」

 なんだ、もしかしてあの男、有名人なの?
 悪いけど、この国に来たばかりの私には、なんのことだかわからないんだよ。

 それから、ルリーちゃんはフードを被り直し、顔を……というより髪と耳を隠した。

「えぇと、ですね……
 ダルマス家というのは、貴族の中でも上級の貴族。
 あの人、イザリ・ダルマスは、その家の長男なんです」

「ほほぉ」

 上級貴族……確か師匠から聞いたな。
 家柄によってその人の身分に差がある。大きく分けて貴族と平民に別れる。
 その違いは、簡単に言えば家名があるかないかだ。

 家名があるのが貴族。……ただ、その貴族の中でも、階級というものはある。
 上から、上級貴族、中級貴族、下級貴族。一番上には、王族がある。

 つまり……

「あのダルマ男、めちゃくちゃ偉い人だった……ってこと?」

「そ、そうなりますね……
 ご存知、ないんですか?」

「私この国の出身じゃないからー」

 なんてこった、偉い人だったのか……そんな人と知らず、私は後先考えずに飛び出してしまった。
 目ぇつけられちゃったかなぁ。

 まあ、偉い人だと知ってても、同じことをしただろうけどね。

「それはわかったけど、あいつらがルリーちゃんをいじめてた理由は?」

 私たちは、移動しながら会話を続ける。

「ほ、本当に知らないんですか?
 ダルマス家のことは、外にいたからまだ知らないのはわかるにしても……」
 世界の、常識みたいなものですよ?

「そんなになの。知らないよ」

「そ、うですか」

 知らない、と私が言うと、ルリーちゃんはホッとしたような……でもすぐに、唇を噛んで複雑そうな表情を浮かべた。

「エルフ族は……迫害、されているんです」

「はくがい?」

「はい。
 昔、エルフ族とそれ以外の種族との間で、ある出来事があったらしくて……
 以来、エルフ族は迫害を受け、誰にも見つからない森の中へ、身を隠したんです」

 ルリーちゃんの説明を受け、私は一つ納得をしていた。
 この国に来てから、いろんな人たちを見た。人に、亜人に、獣人に。
 その中で、エルフ族だけ、見たことがなかった。

 その理由が、わかった。
 エルフ族は迫害されているから、こんな場所にはいれない……というわけか。

「特に、ダークエルフは、エルフからも嫌われていて……
 汚らわしい種族、として、扱われているんです」

「そんな……どうして」

「ダークエルフは、不幸を呼ぶ存在だと言われてるみたいで。
 それに、精霊と心を通わせやすいエルフとは違って、ダークエルフは邪精霊と通じやすいから」

「邪精霊」

 ううむ、邪精霊……師匠から教えてもらったな。
 確か精霊と対を成す存在、だっけか。

 それと心を通じやすいから、同じエルフからも嫌われている、と。

「それもひどい話だよ、同じエルフ族のはずなのに」

「……エランさんは、私のことを、その……」

「ん? お友達だと思ってるよ」

 またも、ルリーちゃんはきょとんとする。
 また私、なんかやっちゃっただろうか?

 次第にルリーちゃんの瞳には、涙が溜まっていく。

「わわっ、どうしたの!?
 私なんか言った!?」

「い、いいえ……友達、なんて……嬉しく、て……」

 おそらく、これまでに友達は……少なくとも同じダークエルフ以外、いなかったのだろう。
 だから、感極まってしまった。

 あー、さっき複雑そうな表情をしていたのは……今の話をして、私が離れていかないか、心配したからか。

「でも、種族ごと迫害されるなんて……いったい、なにがあったのさ」

「おーい、エランちゃん!」

 エルフ族迫害の理由。それを聞こうとしたところで、私を呼ぶ声。
 正面から聞こえてきた、聞き馴染みのある声。

「あ、クレアちゃん」

「あ、じゃないわよあ、じゃ!
 もー、どこ行ってたの! 試験始まるよ!?」

「あははー、ごめんごめん」

 駆け寄ってくるクレアちゃん。それに、周囲にはたくさんの人たち。
 そこでようやく、私たちは、本来いるべき場所に来れたのだとわかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はアレク 両親は村を守る為に死んでしまった 一人になった僕は幼馴染のシーナの家に引き取られて今に至る シーナの両親はとてもいい人で強かったんだ。僕の両親と一緒に村を守ってくれたらしい すくすくと育った僕とシーナは成人、15歳になり、神様からギフトをもらうこととなった。 神様、フェイブルファイア様は僕の両親のした事に感謝していて、僕にだけ特別なギフトを用意してくれたんだってさ。  そのギフトが裁縫ギフト、色々な職業の良い所を服や装飾品につけられるんだってさ。何だか楽しそう。

無能と蔑まれ敵国に送られた私、故郷の料理を振る舞ったら『食の聖女』と呼ばれ皇帝陛下に溺愛されています~今さら返せと言われても、もう遅いです!

夏見ナイ
恋愛
リンドブルム王国の第二王女アリアは、魔力を持たない『無能』として家族に虐げられ、厄介払いとして敵国ガルディナ帝国へ人質に送られる。死を覚悟した彼女だが、あまりに不味い帝国の食事に耐えかね、前世の記憶を頼りに自ら厨房に立つことを決意する。 彼女が作った温かい家庭料理は、偶然離宮を訪れた『氷の皇帝』レオンハルトの孤独な心を癒していく。やがてその味は堅物騎士団長や宰相をも虜にし、食べた者を癒す奇跡から『食の聖女』と讃えられるように。 価値を知った故郷が「返せ」と言ってきたが、もう遅い! これは、料理で運命を切り開き、最強皇帝から世界一甘く溺愛される、美味しい逆転シンデレラストーリー。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

処理中です...