史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
58 / 1,141
第二章 青春謳歌編

58話 魔石採集の実習

しおりを挟む


「それでは、本日は実習を行おうと思う」

「ガッデム!」

「!?」

 ホームルームが始まり、今日も昨日のように座学ばっかりだろうと思っていた。
 昨日の決闘は、例外だったから。

 座学の間は体を動かすこともないし、ある程度体力の消耗を防ぐこともできる。
 だというのに……!

「ど、どうしたフィールド」

「あ、な、なんでもないです」

「そ、そうか……」

 あまりの衝撃に、机を叩いてしまった。
 いけないいけない。

 私は、さっきまで迷ってしまっていたせいで、朝ごはんを食べそこねてしまった。
 だから、あんまり体力を消耗することは、避けたかったのに。

「先生、実習とは、具体的にはなにを?」

「うむ。まあ、そんな複雑なものではない……
 言ってしまえば、魔石採集だ」

「魔石採集……」

 今から行われる実習のその内容に、周囲は少しざわつく。
 てっきり、昨日の決闘までとはいかなくてもなにかしら体を動かすものだと、思っていたからだろう。
 まあ、魔石採集も体を動かすことには違いないけど。

 魔石……それは、主に魔導具の材料として使われるものだ。
 また、魔石自体に魔力を取り込む性質があり、魔力が弱い人でも、魔石を使うことで人並み以上の魔力を使うこともできる。

「魔石が、あるのですか?
 それも、採集するほど」

「あぁ、この学園の裏の森にな。
 魔石は、森や洞窟の中、といった場所に発生しやすい。今回は、学園裏手の森で、魔石の採集を行ってもらう」

 魔石は、大気中に当たり前のように存在している魔力と同じように、どこにでもあるものだ。ただ、自然が多くあるところに発生しやすい。

 魔力を吸収する魔石。基本的には、大気中の魔力を吸収しその中に魔力を溜めるが、人為的に溜める場合もある。
 ただ、人為的よりは自然に溜まったほうが、魔力の質はいいらしい。

 なので、採集してもいいだろうって時期になったら、冒険者ギルドに魔導具技師による魔石採集のクエストが、増えるのだとか。

「えっと……大丈夫、なんですか?」

「安全は、事前に確認してある」

 そして、魔力を溜めるという性質上か、魔石はモンスターを引き寄せやすい。
 今、安全を確認したのも、そのためだ。

「昨日、我々教師陣が、森の安全は確認した。
 魔物や魔獣といった、危険な獣はいないから安心しろ。
 ……と、そうだな。ついでだ、魔物と魔獣について説明してもらうか。ノーマン」

「はい。
 魔物とは、モンスターが魔石を食べることで変化した獣です。
 魔獣は……その、上位種、でしょうか」

 当てられた男子生徒が、立ち上がり答える。
 魔物については、おおかたその説明であっているが……

「ふむ、惜しいな。
 ノーマンの言ったように、モンスターが魔石を食べることで、魔物に変化する。モンスターとの違いは、魔法を使えるかどうか、だな」

 そう、魔物に関しても、説明を付け加えるならば……
 魔物は、魔法を使うことができる。魔石を体内に取り込んだ、おかげだろう。

 それに、そのほとんどが凶暴化する、とも言われている。

「魔獣が魔物の上位種というのは間違いではない。
 が、魔獣とは魔物が、さらに多くの魔石を取り込んだ姿だ。姿かたち、凶暴さが魔物の比ではないほどに変化している。
 さらに、言語を話せるほどに知能を備えたものを"上位種"と呼ぶが……まあ、これは人間の言葉を覚え、適当に話しているだけだから気にしなくていい。
 もっとも、今の諸君らには手に負えない相手だ。
 魔物は数人で囲めば諸君らにもどうにかなろうが、魔獣はそれどころではない。もし見つけても、下手に手出しせず、その場から逃げて助けを求めるように」

 とはいってもすでに危険がないのは確認しているがな、と先生は笑う。
 確かに、魔物はともかく魔獣なんて、他のみんなには手に余る相手だろう。

 私だって、師匠と一緒にしか、魔獣は倒したことがないし。

 さて、話は少し脱線したけど、実習の内容は魔石採集。
 先生たちが安全を確認してくれているなら、問題もないだろう。

 それに、昨日の決闘みたいに魔力を使う必要もなさそうだし……
 あんまり、お腹空かなくても済むかもしれない。

「言っておくが、他人の集めた魔石を奪い取る……といった危険行為はなしだ。
 あくまで実習……なにも、魔石を集めた数を競うわけでは、ないからな」

 釘を差すように、先生が言う。
 危険行為は禁止か……ま、それも当然だろう。

 そういう意味では、たとえ魔物や魔獣と出くわしても、戦わず逃げるべきというのが正解だ。
 魔物や魔獣は、倒せば死体とは別に、魔石が出現する。
 その原理はわからないが、その魔物が食べた魔石が返ってきた……と考えればいいだろう。
 そして死体はそのうち消えてなくなる。

 危険行為は禁止しておかないと、それを知ってる生徒が、魔物に挑みかねないもんな。
 まあ、先生たちが危険を排除してるから、考えるだけ杞憂かな。

「ちなみに、今回の実習はラルフクラスとの合同だ。
 合同といっても同じく魔石採集の実習をしているだけ、だがな。
 だからラルフクラスの生徒と会っても、不審がるんじゃないぞ」

 ふと思い出したかのように、先生は手を叩く。
 私たち以外に、別のクラスも参加しているらしい。

 えっと、ラルフクラスって確か……
 お、ルリーちゃんがいるクラスじゃん!

 やった! ってことは、ルリーちゃんと授業の中で会えるかも……

 ……ルリーちゃんのクラス?

「あいつがいる……!」

「?」

 そうだ、ルリーちゃんのクラスには、あの変態魔王ヨルがいる。
 くそぅ、上がりつつあったテンションがダダ下がっていく!

 せめて、週一の代表顔合わせは諦めがつきつつあったというのに……! 授業でも顔を合わせる可能性が!?

「さて、本日の実習は、魔石採集。
 魔導具に触れたことはあっても、魔石に触れたことのある者は少ないだろう。それと、これを機にクラスメートとの親睦を深めるといい」

 急に、ニコニコし始めた先生は、教卓の下から箱を出す。
 なんだ、あれ。

「では一人ずつ、この穴からくじを引け。
 同じ番号の者同士、共に行動して実習に当たるように」

 ……くじ、か。
 なんて原始的な。

 しかも先生、妙に目がキラキラしている。
 あれ、お手製なのかな……今日のために、作ったのかな……

 先生の意外な一面に衝撃を受けつつ、クラスのみんなはそれぞれ、くじを引いていく。
 クレアちゃんやロリアちゃんたちと同じになれたらいいけど。

 魔石採集かぁ……ワクワクしてきたよ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

わけありな教え子達が巣立ったので、一人で冒険者やってみた

名無しの夜
ファンタジー
教え子達から突然別れを切り出されたグロウは一人で冒険者として活動してみることに。移動の最中、賊に襲われている令嬢を助けてみれば、令嬢は別れたばかりの教え子にそっくりだった。一方、グロウと別れた教え子三人はとある事情から母国に帰ることに。しかし故郷では恐るべき悪魔が三人を待ち構えていた。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。

さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。 荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。 一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。 これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。

平凡な王太子、チート令嬢を妻に迎えて乱世も楽勝です

モモ
ファンタジー
小国リューベック王国の王太子アルベルトの元に隣国にある大国ロアーヌ帝国のピルイン公令嬢アリシアとの縁談話が入る。拒めず、婚姻と言う事になったのであるが、会ってみると彼女はとても聡明であり、絶世の美女でもあった。アルベルトは彼女の力を借りつつ改革を行い、徐々にリューベックは力をつけていく。一方アリシアも女のくせにと言わず自分の提案を拒絶しないアルベルトに少しずつひかれていく。 小説家になろう様で先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n0441ky/

処理中です...