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第二章 青春謳歌編
85話 ゴーレムの脅威
しおりを挟む現れた土の人形……ゴーレム。見た目だけだと魔物っぽくもあるけど、れっきとした魔術による創造物だ。
それをやってのけたのが、コーロラン・ラニ・ベルザ……このベルザ王国の第二王子!
ゴーレムは土属性の魔術によるものだ。
まさか、この学園に入学してこんなにも早く、魔術の使い手と試合するときが来るなんて。
「おぉ、あれが……」
「あぁ、話には聞いてたが」
ゴーレムを見上げ、驚くのは私だけじゃない。私のクラス、そして王子様のクラスの子たちも、一様に驚いている。
その様子を見るに……同じクラスの子も、あのゴーレムを見るのは初めてなのか。ただ、事前に聞いていたからだろう私のクラスほど驚きは大きくない。
……なるほど読めてきたぞ。試合開始から、まず私たちをバラバラに分散。それを追撃する形で、複数で叩く。
その間に、自分はゴーレムを生み出すための魔術を唱える準備を行う……これが、王子様の策略。
「あんな大きいの、初めて見たよ」
ふと、思い出す。師匠と魔導訓練をしていた頃……師匠は、色んな魔法、魔術を繰り出してきた。
その中に、ゴーレムとの訓練、というのもあった。それも複数の。……ただし、それは人の大きさとそう変わらない。
目の前のゴーレムは、大きさはその比ではない。大きさが変われば機動力も変わるけど……このゴーレムは、どんなもんか。
ちなみに、ゴーレムには大きく分けて土で作ったものか、石で作ったものがある。これは前者だ。
「みんな、散らばれ!」
「攻撃を当てろ!」
クラスメイトたちの反応は、まちまちだ。ゴーレムから逃げろと言う者、ゴーレムに攻撃を当てて倒せと言う者。
初めて見る魔術、それも土の巨人相手に、多くは混乱しているようだ。
……ただし……即座に行動する者もいる。
「はぁ!」
逃げるにしろ攻撃するにしろ、一旦はみんなゴーレムから距離を取っている。
そんな中で、飛び出すのが一人。ダルマスだ。
彼は、手にしていた剣を大きく振りかぶり、ゴーレムの足へと刃を食い込ませる。
ガギンッ……と、土を斬ったとは思えない音が、響き渡る。
「なに!?」
土でできているゴーレム……けれどその硬さは、土ではありえないものだ。
それはそうだろう。もしもその感触まで土だったら、あんな巨体を支えられない。だから、土で作り上げてるけど、硬度も上がっている。
刃の通らないゴーレムは、ダルマスへと狙いを定めた。足を振り上げ、一気に落とす。
ただ、足踏みをするだけの行為。だけど、あんな巨体に潰されたら、一発アウトだ。
「くっ……!」
もちろん、黙って踏み潰されるダルマスではない。身体強化で、足の速度を上げ、その場から離れる。
巨体から繰り出される踏みつけは、ダルマスを捉えきれないが……地面に衝突したその衝撃だけで、周囲に余波が及ぶ。
「うわぁ!」
「早く逃げ……おわっ!」
ゴーレムの攻撃に、直撃しなくても余波だけでこちらに被害が出る。だから逃げようとする生徒に……「デーモ」クラスの生徒からの、追撃が入る。
敵は、ゴーレムだけじゃない。むしろ、今までクラスメイト同士で戦っていたはずが、ゴーレムが現れたことで一気に注意を持っていかれることになった。
結果として、今度はゴーレムを気にしすぎて、他がおざなりになってしまう。
「さあ、どうですの我らがコーロラン様のゴーレムは!
素晴らしいでしょう!」
王子様に想いを寄せているノマちゃんからしてみれば、王子様の活躍はさぞ気分のいいものなんだろうな。
なんにせよ、あれをどうにかしないと……少し目を離しただけで、次々とウチのクラスメイトが犠牲になっていく。
同じく初めてゴーレムを目にしたはずの「デーモ」クラスの生徒は、ゴーレムに驚いてはいても、その被害にあってはいない。
ゴーレムに動揺するウチのクラスメイトを、隙をついて倒していく算段ってわけだ。
「確かに、あんなのに暴れられちゃたまったもんじゃないね」
「でしょう!
フィールドさんも魔術を使えるのは知っていますが、魔術を使う隙は与えませんわよ!
魔術さえなければ、あのゴーレムは誰にも倒せません!」
誰にも倒せない……か。言ってくれるねぇ。
ま、言うだけのことはある。クラスメイトたちが、四方から魔導を撃ち込んでも、ゴーレムはびくともしない。
さすがに魔術で作られただけある。
ただ……ゴーレムを倒すのに、一番手っ取り早い方法がある。ゴーレムは硬い。並の魔法じゃ歯が立たない。ならば……
「……ひひっ」
「! ……あなた、まさか!」
なにかに気づいたのか、ノマちゃんは杖を振るう。
さらに蔦のようなものを増やして、私の足を、手を、体中を拘束していく。
動けなくして、このまま私をゴーレムに潰させようってのか。
……けど。
「せいや!」
「なっ……引きちぎって!?」
全身に魔力を纏わせて、蔦を強引に引きちぎる。
それが予想外だったのか、ノマちゃんは驚愕の表情だ。そりゃ、あんな拘束を力任せに突破するなんて、思わないよな。
「おいおい、なんつー怪力女だぁあぶっ!」
「誰が怪力女だ!」
「ターサイ!」
失礼なことを言う男子生徒に、拳をおみまいしてやった。その衝撃で吹き飛んだ男子生徒は、そのまま戦闘不能に。
それから私は、その場から一気に飛び出す。向かう先は、決まっている。
ゴーレムを倒すのに、最も有効な手段……それは!
「術者を、ぶん殴る!」
「! やはり来たね……!」
戦況が混乱しているから、隙間をついて移動することも難しくない。目的の人物のところに、一直線だ。
その人影を見つけ……私は、右拳に魔力を込めて、思い切りぶん殴りにかかる。
その先にいた相手……王子様は、まるで私が来るのを予感していたかのように、笑みを浮かべて。自身の前に張った魔力障壁で、身を守る。
私の拳が、障壁へとぶつかった。
「ぬぬぬ……!」
「力の出し惜しみは、なしだ!」
「わっ」
障壁に阻まれて押しきれない……どころか、硬かった障壁が急に柔らかくなり、拳の衝撃を吸収。弾力が生まれ、私はそこから弾き返されてしまう。
驚いたけど、なんとか着地。
……ゴーレムを倒すには、ゴーレムを生み出した術者を倒すのが一番。それが、手っ取り早く且つゴーレムを相手にするよりも確実な方法だ。
でも、そううまくはいかないらしい。
ゴーレムはすでに、自立して動いている。魔術だけど、自立してしまえば術者はあとは自由に動ける。狙いはウチのクラスメイトたち。
あれじゃ近いうちに壊滅しちゃうな……とっとと、なんとかしないと!
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