史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第二章 青春謳歌編

87話 内側から爆ぜろ

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「オォオオオ……!」

 胸の奥に響き渡るような、重々しい音……いや、声。
 これは、ゴーレムのものだ。土人形であるゴーレムは、人の形をしていても口などの気管はない。せいぜい目っぽいものはあるけど、それでも視力があるわけではない。
 当然、口もない。

 そんなゴーレムが、どこからこんな声を出しているのだろう。
 わからない……けど、わかる。これは、ゴーレムの声だと。

「こ、コーロラン様……?」

「えっと……プランは……?」

 周囲の生徒が、私がゴーレムの標的にされたことでざわめく。
 ただし、それはウチ「ドラゴ」クラスの生徒ではない。……「デーモ」クラスの生徒のものだ。

 その言葉の内容は、プランと違う……というものだ。なるほどね。
 これまで、王子様は試合開始早々魔導で私たちを分散。そこを数で叩きつつ、ゴーレムを生み出す時間を稼ぐ……そして、ゴーレムで私以外の生徒を倒し、その間私は他のクラスメイトと足止めをしておく。

 ゴーレムが「ドラゴ」クラスの生徒を倒している間、数で私を囲って倒す。もし倒せなくても、「ドラゴ」クラスを全滅させた後、ゴーレムも含めて今度こそ私を叩く。
 それが、王子様のプランだったのだろう。

 だってのに……

「ウチのクラスメイトがまだ残っている段階で、私をご氏名ってわけ」

 まだ「ドラゴ」クラスは半数以下だけど残っている。その段階で、私に切札ゴーレムを向けるっていうのか。
 そもそもがプランだ、なにも完璧に運ぶわけじゃない。臨機応変に切り替えるもので、本来たくさん用意してあるんだろう。
 現に、最初私たちがバラバラに散らばる以外の行動を取った場合、それ用のプランがあったってノマちゃん言っていたし。

 ……けれど、みんなの様子を見るに、完全に想定外。どうしていいか、わからなくなってしまっているようだ。
 事前に立てておいたプランを、独走した人のせいで台無しにされることはあるだろうけど……まさかプランを立てた指揮官本人が、思わぬ行動を取るなんて、思いもしないだろう。

「オォオオオン……!」

「って、考えてる場合じゃないか!」

 そうしている間にも、ゴーレムの拳が振り下ろされる。あの巨体だ、注意していれば当たることはないけど……
 リーチと、攻撃の面積が大きい。なので、よっぽど遠くに逃げないと……

「うわぁあああ!」

 振り下ろされる拳、その風圧……それだけで、近くにいる人たちは吹き飛ばされる。
 拳が振り下ろされてからじゃなく、振り下ろされるまでの余波ですでに被害が出ている。

 だったら……

「これで、どうだ!」

 杖を前面に突き出し、魔力を込める。次の瞬間、私の目の前に現れるのは透明な壁だ。要は、魔力障壁。
 魔力障壁に、ゴーレムの拳が衝突する。その衝撃が、また余波となり周囲に被害を及ぼす。

「無駄だ! そんなものじゃ、ゴーレムの拳は防げない!」

 王子様が叫ぶように、こんなものじゃゴーレムの攻撃を防ぐには、心許ない。
 けれど……私がやろうとしているのは、ただゴーレムの拳を受け止めることじゃない。

 これは、ただの魔力障壁じゃあない。
 ゴーレムの拳は、障壁に弾かれるのではなく……障壁に、埋まっていく。まるで、弾力あるクッションに拳を突き刺したように。

 そして……その拳は、弾力に逆らうことはできずに、ポヨンっ、と弾き返された。

「なっ……」

「さっきの、お返しだよ!」

 さっき、私は王子様に繰り出した拳が、彼に届くことなく弾き返された。今回のは、そのお返しだ。
 拳を弾き返されたゴーレムは、バランスを後ろへと崩す。

「まさか……ゴーレムを、弾き返すほどの障壁を……!?」

「……あちゃー、だめかやっぱ」

 バランスの崩れたゴーレムに、二、三発の魔力弾を撃ち込むけど、直撃してもダメージは見られない。
 魔獣に撃ち込んだときも、ダメージなかったし……自信なくすなぁ。

「! お、っと!」

「くっ!」

 危ない危ない、ゴーレムばかりに注意してもいられない。
 他の「デーモ」クラスの子たちもだけど、術者の王子様の相手もしなければいけない。

 ゴーレムみたいな召喚系の魔術は、魔術を唱えたあとに術者もフリーになるのが、利点だよな。術者とゴーレム、単純に戦力は倍だ。
 おまけに、ゴーレムを生み出すほどの術者なら、魔導士としてのレベルもかなり高いし。攻撃を弾くのも一苦労だ。

「くそ! くそっ、くそ!」

「……」

 次々に、王子様から魔力弾が放たれる。それを私は、防ぎ弾き相殺する。
 その度に、王子様の表情が険しくなっていく。

 ……冷製に、なれていないな。王子様なら、もっと効率的な方法で私を追い詰められるはずだ。それに、ゴーレムも私を狙っていることで、結果的に敵味方限らず被害を出してしまっている。
 冷静ならば、もっとうまくゴーレムを操れる。ゴーレム自身にもある程度の自我があるとはいえ、細かな命令は術者に依存する。

 このまま、相手の自滅を狙う……のも手だけど。
 それじゃあ、面白くないよね!

「とぅ!」

「なに!?」

 私は、その場でジャンプ。高く、高く、高く……飛んで、空中で停止する。
 まるで、空中に見えない足場があるように、その場に立つ。

「空中に……まさか、浮遊、魔法……!?」

 驚愕するのは、王子様だけではないようだ。みんなが、私が飛んでいることに驚いている。
 これ、そんなに驚くことかな。飛ぶことくらい、誰でもできると思うんだけど……

 ……あ、これパンツ見えてるんじゃない? まさかみんな、そこを見ているのか!?

「いやんもう! 手早く終わらせるよ!」

 私は、その場から後退。みんなの視点を一点に浴びないためには、こうして自在に移動するのが一番だ。
 それに、こうして移動を繰り返せば、ゴーレムに狙いを定められることもない。

 で、こっからどうするかというと……!

「爆炎で焼き尽くす豪火よ、天地をも焼焦やけこが死火しかと成りて、すべてを灰燼かいじんと帰せ!」

「浮遊、しながら……魔術の、詠唱……!?」

 そう、魔術の詠唱だ。地上にいれば、王子様たちに妨害されて詠唱もままならないだろう。
 けれど、空中ならば誰にも邪魔されずに、詠唱に集中できる。まあ、誰か同じように飛んできたらまた考えたけど……その様子はない。

 下から、魔法を次々撃ってくるが、それを避けるのは容易い。
 私は、膨大な魔力を杖の先端に集中させ、それをゴーレムへと向ける。ゴーレムは、私を握り潰そうとしているのか、手を伸ばしてくる。

 大きな手のひらが、私の視界を覆っていく……そして……

紅炎爆発プロミネンスブラスト!!!」

 …………刹那、ゴーレムの手が、腕が、その体が……崩れていく。杖の先端から放たれた、赤い光……それに触れた途端、ゴーレムの体は内側から弾けたように、爆発した。
 今私が使ったのは、火属性の魔術。大規模な爆発を起こせば、その被害は甚大だ。

 だから、ゴーレムの外側ではなく内側から作用するよう、コントロールした。魔術のコントロールにより、対象をどう爆発させるかも選択できる。
 崩れていくゴーレム……その様子は、みんなの目にはどう映っただろう。

「そ、そん……な……っ」

「さ、お次はなにが出てくるのかな?」

 呆然と立ち尽くす王子様の眼前へ移動し、杖を向ける。
 ゴーレムという魔術を使った以上、あれが彼の最後の切り札か……それとも、実はまだなにかあるのか。

 私の質問に、ピクリと肩を震わせた王子様は……なにを答えるでもなく、崩れ落ちるようにその場に膝をついた。
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