史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

文字の大きさ
159 / 1,198
第四章 魔動乱編

155話 ルリーの過去② 【訓練】

しおりを挟む

「よし、そっちに行ったぞ!」

「あいよ!」

 森の中に、元気な声が響き渡る。それは、この森に住むダークエルフの子供たちのものだ。
 ガサガサ、と草を踏みしめ、標的を追う。アードとマイソンが追いかけているのは、四足歩行のモンスターだ。

 逃げるモンスターの前に、また別の人影が行く先を塞ぐ。
 急に現れた子供の姿にモンスターは驚くが、止まらない。あるいは、急には止まれないのか。
 いずれにせよ、このままでは子供は、モンスターに跳ね飛ばされてしまうだろう。

「ルラン!」

「そこ!」

 モンスターの先にいる子供、ルランは魔導を放つ。それはまるで、魔導の杖の先端から伸びる光の鞭……
 鞭はモンスターへと向かい、モンスターはそれを避ける。鞭はモンスターの体から狙いを外れるが……

 が、そもそもルランの狙いはモンスター自身ではない。

「ブモ!?」

 とたんに、モンスターが体のバランスを崩す。
 ルランの放った鞭は、初めからモンスターの足を狙っていた。鞭は華麗にモンスターの四つ足を絡めとり、モンスターを転倒させた。

「よっしゃあ、今日の昼飯ゲット!」

「さすがはルラン、精度のいい魔導だね」

「二人が予定通りここまで追い込んでくれたおかげた」

 モンスターを捕らえたことで、それぞれの健闘をたたえ合う。
 男三人がハイタッチしているその姿を見つめているのは、近くの木に持たれて座っている三人の少女だ。

 ルリー、ネル、リーサはその光景を見つめながら、パチパチパチ……と拍手をしていた。

「いやぁ、さすがルランね。ルリー、あなたも妹として鼻が高いんじゃない?」

「お兄ちゃんも言ってたように、アードとマイソンがモンスターを追い込んだおかげだし」

「わぁ、冷めてるなぁ。ネルはどう思う?」

「お、男の子同士の友情って、いいよね……うふへへへ」

「あー、そうね」

 もはや、あの程度のモンスターならば全員でかからなくても、男子たちだけで捕らえることができる。
 魔物であれば話は別だろうが、モンスターのままであれば問題はない。

 少し遅れて、女子たちの拍手とは別の拍手が、その場に響き渡る。

「いやぁ、三人ともお見事」

「ラティ兄」

 柔らかい笑みを浮かべ、姿を見せるのはラティーアだ。村の若者の中心人物で、子供たちの世話係も兼ねている。
 居ることはわかっていたが、いったいどこから見ていたのか。突然隣に現れる彼の姿に、ルリーの胸は高鳴った。

 そのラティーアが向かう先は、三人の男子のところだ。

「俺たちは、ただモンスターを追い込んだだけだよ」

「そうそう。モンスターを捕まえたのはルランだし」

「なに言ってんだ、アードとマイソンの役割だって必要なものだぞ。それぞれが、役割を分担して標的を追い詰める……
 あの、遊んでばかりだった子供が、こんなに立派になって……」

「おっさんかよ」

 モンスターの狩りを初めて、数年が経っていた、本来であれば、狩りなど子供に任せたくはないのだ。
 しかし、ダークエルフの数は少ない。そのため、なにをするにも人手不足となっているのだ。
 なので、子供たちもある程度体力が付けば、村のために協力してもらうこととなる。

 とはいえ、さすがに子供だけで、モンスターの相手をさせるわけではない。いずれは彼らだけで、とは考えていても、まだそのときではない。
 なので近くには、常に大人が付き添っている。危なくなった時、すぐに助けに入れるように。

「けど、このモンスターも森に迷い込んできただけなのに、気の毒だよね……」

「はは、ルリーは優しいな」

 遅れて、ラティーアの後をついてくる女子三人。捕まったまま暴れているモンスターを見て、ルリーはぽつりと呟いた。
 その声が聞こえたのか、ラティーアは笑いながらルリーの頭を撫でる。

「か、髪が乱れるからっ」

「あぁ、悪い悪い」

 自分の頭を撫でる大きくあたたかな手を、ルリーは跳ねのける。しかし、それは本気で嫌がっているわけではない。
 素直に恥ずかしいのだ。だから、無愛想な言い方になってしまう。

 ラティーアも、本気で嫌がっていると知れば撫でてはこないだろう。しかし、事あるごとに撫でるのをやめないのは、ルリーが本気で嫌がってないと気づいているのだろう。
 ……撫でられる度にあたたかくなる、ルリーの胸の内には気づいてはいないだろうが。

「ま、ルリーの気持ちもわかるよ。けど、早いうちに対処しないと……このモンスターが、魔物になってしまう前に」

「魔物……」

 心優しいルリーの気持ちは否定しないながらも、しかしモンスターを放置できない危険性もラティーアは口にする。
 その口から出た、魔物という単語を誰かが復唱した。

「けど、本当なのかよ。モンスターが魔石を食べたら、魔物になるって」

「嘘は言わないさ。以前一度、見ただろう?」

「そうだけどさ……本当に魔石が原因なのかなって」

 どこか半信半疑なマイソンの言葉に、ラティーアは首を振る。
 以前に一度だけ、子供たちにはモンスターが魔物に成る姿を見せたことがある。魔物の危険性、モンスターを放置できない理由を説明するために。

 あれは、まさにモンスターとは別次元の圧力だった。魔物に成ったばかりで油断していたところを、ラティーアが倒したので実際に戦ったわけではないが。

「まあ、正確には魔石の中にある魔力が原因だとは言われているな。
 魔石に込められた膨大な魔力を、モンスターが体内に取り込むことで、魔物に……」

「ちょっとマイソン、ラティ兄の言うことが間違ってるわけないでしょばか!」

「なっ、誰がばかだ!」

「ルリー、今そのラティーアさんが話してるから」

 興奮するルリーの肩を、リーサはポンポンと叩く。つい熱くなってしまった、恥ずかしい。
 その姿を、ラティーアはおかしそうに、マイソンはつまらなそうに見ている。

「ま、ともかくだ。モンスターが魔物になる前に、対応する。それが大切なことだ。
 中には魔石を好まないモンスターもいるから、全部が全部ってわけじゃないけど」

「え、モンスターは魔石を好むんじゃないの?」

「うーん、俺は専門家じゃないからよくわからないけど……
 ネルにも、好きな食べ物や嫌いな食べ物はあるだろう?」

「なるほどー」

 好き嫌いの問題か、とネルは納得した。
 そしてこのモンスターは、魔石を好むモンスターだった……放置して魔石を食べれば魔物になるし、これは聞いたことしかないが魔物がさらに魔石を取り込むと、魔獣と成るらしい。

 それほどまでに注意しなければならないのは、この森には魔石が溢れているからだ。
 村人はたまに、生活に使うためか魔石を採集しに向かう。

 ルリーたちも、何度か魔石採集に同行させてもらったことがある。

「さ、そろそろ戻ろうか。みんなの活躍を、みんなに伝えないとね」

「ワタシたちはなにもしてないけどねー」

「あははは」

 ラティーアがモンスターを担ぎ、子供たちがついていく。
 魔導で運べばいいのにと思うが、なんでもかんでも魔導に頼っていてはダメとのことらしい。

 ともあれ、小さな少年少女たちからちょっとだけ成長した少年少女たちは、今日も平和に過ごしている。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はアレク 両親は村を守る為に死んでしまった 一人になった僕は幼馴染のシーナの家に引き取られて今に至る シーナの両親はとてもいい人で強かったんだ。僕の両親と一緒に村を守ってくれたらしい すくすくと育った僕とシーナは成人、15歳になり、神様からギフトをもらうこととなった。 神様、フェイブルファイア様は僕の両親のした事に感謝していて、僕にだけ特別なギフトを用意してくれたんだってさ。  そのギフトが裁縫ギフト、色々な職業の良い所を服や装飾品につけられるんだってさ。何だか楽しそう。

無能と蔑まれ敵国に送られた私、故郷の料理を振る舞ったら『食の聖女』と呼ばれ皇帝陛下に溺愛されています~今さら返せと言われても、もう遅いです!

夏見ナイ
恋愛
リンドブルム王国の第二王女アリアは、魔力を持たない『無能』として家族に虐げられ、厄介払いとして敵国ガルディナ帝国へ人質に送られる。死を覚悟した彼女だが、あまりに不味い帝国の食事に耐えかね、前世の記憶を頼りに自ら厨房に立つことを決意する。 彼女が作った温かい家庭料理は、偶然離宮を訪れた『氷の皇帝』レオンハルトの孤独な心を癒していく。やがてその味は堅物騎士団長や宰相をも虜にし、食べた者を癒す奇跡から『食の聖女』と讃えられるように。 価値を知った故郷が「返せ」と言ってきたが、もう遅い! これは、料理で運命を切り開き、最強皇帝から世界一甘く溺愛される、美味しい逆転シンデレラストーリー。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

処理中です...