史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

157話 ルリーの過去④ 【対極】

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 そこに倒れているのは、おそらくエルフ……
 自分たちダークエルフ以外の種族を初めて目にしたルリー、リーサ、ネルの三人は、その光景にしばし固まっていた。

「……エルフ、だよね」

 一番に我に返ったネルが、つぶやく。先ほどのリーサの驚きを、確認するかのような言葉。
 それを受け、リーサは小さく肩を震わせて……動く。倒れている人物へと、手を伸ばした。

 そして、今度こそその体に触れ、ゆっくりと体を反転させる。うつ伏せだった状態から仰向けになったことで、その顔が露わとなった。
 その顔は、思わず惚れ惚れしてしまうほどに、美しかった。

「うわ、すごいきれいな人……女の人かな」

「え、男の人じゃない?」

 美しい顔にため息を漏らす彼女らは、それぞれ別意見だ。
 美しい顔は、言ってしまえば中性的。男とも女とも取れる、顔立ちをしていた。その上、見た感じその体つきもまた、男とも女とも言い難いものだった。

 凹凸のない、スレンダーな体つき。服装はといえば、上下が一緒になっているタイプで、下はスカートのよう。さすがに捲って性別を確かめようとまでは思わないが。
 あまりに、防御力の面が心配になる服装だ。まあ自分たちが言えた義理ではないが。

 ……ともあれ、だ。

「この人がエルフで、お、男の人でも、女の人でも……」

「ん、放置はできないね」

 エルフの側に屈んで様子を伺っているリーサは、一番離れたところから見ているルリーの言葉に賛成する。
 彼あるいは彼女が何者であれ、倒れている人を放置しておくことはできない。
 見た感じ、ルランやリーサよりも年上だ。ラティーアくらいだろうか。まあ、エルフの見た目と中身年齢などあまりあてにはならないが。

 とりあえず、誰かを呼んでこなければいけないだろう。自分たちだけで判断することはできない。
 彼もしくは彼女が目を覚ましたときのために、リーサはここに残ることにした。
 ルリーとネルは、今来た道を戻っていった。

「ん、どうしたルリー」

「お、お兄ちゃん!」

 真っ先に向かったのは、ルランたちの待つ場所だ。リーサにより男子女子と別れたが、近くに居た彼らにまずは助けを求める。
 ここまで全速力で来たためか、息を乱している。早く要件を伝えたいのに、言葉が出てこない。

「ど、どうしたんだ。とりあえず、落ち着いて……」

「あっちに、エルフが倒れてたの」

 ルリーを心配するルランだが、横から言葉を挟むのはネルだ。
 彼女も息を乱してはいるが、ルリーよりは軽度のようだ。

 ネルの言葉に、ルランたちは言葉を失う。それもそうだろう……言っている意味が、わからないのだから。

「エル……フ?」

「そう」

 首を傾げるアードに、ネルは再度答える。なんとも自信満々な姿だ。
 後ろでは、ルリーもこくこくとうなずいている。三人は顔をあわせるが……

「リーサは?」

「そのエルフを見てる」

「……なら、ルリー、案内してくれ。
 ネルは、アードとマイソンと、大人を呼んできてくれ」

「あーい」

 ルランの指示に、それぞれが別れる。
 ルランは道のわかるルリーと共にリーサの下へ。同じく道のわかるネルは、アード、マイソンと共に大人を呼びに。

 先導するルリーに続けて走っていたルランだが、視界の先にリーサの姿を見つけ、駆け寄る。
 彼女の側には、仰向けに寝かせられた何者かがいる。若干の警戒をするが、リーサが無事なことを考えると杞憂だろうか。

 眠っているように見えるその人物は、見たことのない金色の髪をしていた。さらに、色白の肌……尖った耳さえなければ、きっと自分たちと含めて総称される『エルフ族』だとは思わなかっただろう。
 ルランは、リーサの側に屈む。

「ネルたちは?」

「ネルたちは、大人を呼びに行ってる
 俺はルリーに案内を任せて、先に来た」

「そっか」

 見たことのない種族……そもそも、この森に、自分たちダークエルフ以外が足を踏み入れていること自体が初めてのことだ。
 モンスターならまだしも、他の種族だなんて。

 その人物は、見た感じ外傷は見られない。が、ただ眠っているだけというのも考えにくい。なにかしら病に倒れている可能性だってある。
 エルフがここにいる理由がわからないことには、ルランたちにこの先行動の仕様がない。やはり、大人が来るまで待つべきだろう。

 そう、判断をつけたときだ……

「ん……」

「!」

 ふと、小さな声が漏れた。それはリーサのものでも、ルリーのものでも、そしてルランのものでもない。
 三人の視線は、自然と同時に、同じ方向へと向いた。

 それと同時に、視線を向けられたエルフは……そのまぶたを動かし、ゆっくりと目を開いた。

「ぅ……」

 漏れる声は、果たして男のものかそれとも女のものか。しかしこの際、それはどうでもいい。
 目覚めたエルフに、リーサは心配そうな表情で顔を覗き込み……

「あの、大丈夫……ですか?」

 そう、声をかけた。
 自分にかけられた声に気づいたのだろう、エルフはパチパチと何度かまばたきをして……視線を、動かした。

 開かれた目は、ルリーたちと同じ緑色をしていた。その特徴も、やはりエルフという確証を得るに足るものだ。
 その瞳を見て、きれいだな、とルリーは感じた。

 エルフは、目を開いて、その瞳が自分を覗き込む、リーサの姿を映し出す。
 ……その、直後だ。

「ひっ……」

 エルフの口から、まるで喉の奥から絞り出したかのような、悲鳴のようなものが聞こえた。
 それは、いったいなんなのか。理解するよりも先に、エルフが口を開いた。

「ぎ、銀色の髪……か、褐色の肌……尖った、耳……
 だ、ダーク……エルフ……!?」

「……」

 口にしたその特徴は、間違いなくダークエルフのものだ。どうやらこのエルフは、ダークエルフという存在は知っているようだ。
 だが……問題は、そこではない。エルフの、態度だ。

 目は見開かれ、視線をさ迷わせ……なにより、唇が、体が、声が震えていた。
 その態度には、間違いなく……恐怖が、滲んでいた。
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