史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

237話 首輪の効果

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 私はただ一言『黙って』とそう言った。その言葉を聞いたレジーは、口を開いたまま言葉を詰まらせた。
 自分で言葉を止めたのではなく、自分以外の力で言葉が止まったのだと、いうように。

 レジーが、私の言葉を素直に聞く理由なんてない。だからこれがレジーの意思でないのは、確かだ。
 レジーの意思ではなく……これは私が、レジーにかけた『絶対服従』の魔法の効果によるものだ。

「……どう、なってる?」

 その光景を、不思議そうに見ているルラン。それはそうだろう、さっきまで余裕の表情でふんぞり返っていたレジーが言葉を失い、驚愕に目を見開いているのだから。
 エルフ族は他種族に比べて魔力に通じている、と聞くけど、どうやらルランでもこの魔法については知らないみたいだ。

 正直私も、今の今まで忘れていた魔法だし。

「こいつをどうしても許せないって、気持ちが限界突破しちゃったのかな……てね」

「? おい……」

「大丈夫。もうこの女は私に、逆らえないから」

 私は、杖を仕舞う。この魔法は、一度かけてしまえば後は杖は必要ない。必要なのは、私の言葉だけ。

 師匠は、この魔法をモンスターに使ったことがあった。私にこの魔法の効果を教えるためだ。
 魔法をかけられたモンスターの首には、今のレジーのように紫色の首輪が出現して……

 その後、首輪が出ている間師匠の言葉には逆らえなかった。抵抗の意思は見せても、師匠の言葉は強制力があり、それに逆らうことはできない。
 今私がやっているのも、相手がモンスターか人間かの違いってだけだ。

「この魔法をかけられても、別に喋れなくなるとか自我がなくなるとか、そういうことは起こらないよ。こいつが今黙ってるのは、私が黙るように言ったから」

「お前の……魔法をかけた術者の言うことを、聞いた。いや聞くしかなくなる。
 それが……『絶対服従』ってことか」

 今ルランが理解したので、おおかた合っている。というか名前がまんまだしね。
 ただ、言葉通りではあるとはいえ……『絶対服従』とは、なんともいやーな響きだ。

「私はこの魔法、人に使うの……というか、使うの自体初めてだったんだけど。うまくいったようでよかったよ」

「……そうか」

 なぜだろう、ルランから私に対して若干距離を感じる。物理的な意味ではなくて。
 まあ、いいけどね別に。

 さて。私がレジーに『絶対服従』の魔法をかけたのは、なにもルランに引かれるためじゃあない。
 この魔法は、いろんなことができる。今みたいに黙らせることもできるし、やろうと思えば全裸にして人前で踊らせることもできるだろう。

 いやそんなことはしないけどね?

「聞きたいことがある。レジー」

「……」

「あ、もう喋っていいよ」

 口を開いたまま、というかパクパクさせて私を睨みつけるレジー。ふと、さっき黙るように言ったのがまだ影響しているのだと気づく。
 なので、もう喋っていいと許可を出すと……

「っ! てめえ、気持ち悪い魔法かけやがって……くそが、ぶっ殺してやる!」

 ……と、なんともお行儀の悪い言葉が飛んできた。
 まったく……やっぱり黙らせておこうかな?

「私の質問にだけ答えて」

「……!」

 次の言葉に、レジーは再び言葉に詰まる。
 うんうん、これなら自分からは勝手に喋ることはできないし、私の聞いたことには素直に答える。服従させるにも言い方次第ってことだよね。

 さあて、なにを聞こうかな。

「さっき聞いたけど、もう一度ちゃんと答えてね。魔人って、なに?」

 さっきははぐらかされた質問。魔人という存在は、いったいなんなのか。
 それを聞いて、レジーは口を閉じようとする……けど。

「魔人、ってのは……人間と、魔族の血を持った、いわば混血のことだ」

 自分の意思とは関係なしに、口が開き、言葉が出てくる。ふふ、驚いてる驚いてる。
 『絶対服従』は文字通り。私の指示したことは、やりたくなくても言いたくなくても、体がその通りに反応してしまう。

 それに、『絶対服従』を受けて答えた言葉に、嘘はない。

「混血……人と魔族の?」

「バカな、ありえん。人間族は他種族との間に子を設けることはできる。その子は、両親の血を半分ずつ受け継いでいると聞く。
 だが、魔族とだけは……子を成すことはできない。いや、正確には魔族が、他種族と子を成すことはできん」

 私がわからないでいると、ルランが説明してくれる。もっとも、私に対して説明してくれたってよりは、確認って感じだけど。
 人間族と魔族とじゃ、子供はできない。だから混血も生まれない、か。

 魔族自体が、他の種族と交われないようになっているんだ。

「……」

 レジーは、ぷいっと視線をそらしてしまう。
 ……あぁそうか。私の言葉じゃなくルランの言葉だから、反応しないってことね。

「魔人は自然には生まれない。だから、自分たちで作ろうとした……そういうこと?」

「……そうだ」

 なるほど……この話を聞いて、だいぶ繋がってきた。
 魔石を取り込んだ人間は、魔の血が体内を巡りほとんどは死んでしまう。でも、元々の血とうまく混ざり合って生き残ったのが魔人……成功例は、ノマちゃんということになる。

 人工的に作り上げられた存在……それが、魔人。

「なら、なんで魔人なんてものを作ろうとしてたの。魔人を作って、あんたたちはなにをしようとしてるの」

 魔人がどういう存在かはわかった。でも、そいつを作ってなにをしようとしていたのか、目的がわからない。
 魔石を人間の体内に流し込むことが魔人を作るやり方なら、それはルリーちゃんの故郷を襲ったときからやっていることになる。

 それこそ、五十年前から。そんなにも昔から、おそらくノマちゃん以外に成功例はいないだろう魔人を作ろうとしていた理由は。

「それは……っ、ぐ……!」

「! お、おい?」

 『絶対服従』……それは私の言葉に逆らえなくなり、嘘がつけなくなる。でも、逆らえなくなると言ってもそれは完全に、ではない。
 本人がどうしても話したくないもの。話してはならないと感じているもの……固い意思があるもの。そういったものは、言葉には従わないときがある。これは『強制服従』ではないのだ。

 でも、従わないってことは……ダメなんだよ。あっちゃいけないことなんだよ。
 だから、術者の意にそぐわない行動、言動をした者は……首の紫色が、強く光り輝く。

 そして首輪は……魔法をかけられた者へ、激痛を与える。
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