史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第四章 魔動乱編

295話 自分だけの力で

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「やぁ、いらっしゃーい」

「こんにちはー。もうこんばんはかな」

 お茶会が終わったあと、私はとある教室を訪れていた。
 それは、一つの研究室。あの日以来、ちょくちょく通うようになった場所だ。

 最初の頃は、ノックをしてから返事があるまで待っていたけど、今では礼儀としてノックはするけど、返事が来る前に扉を開ける。
 そのことに対して、もはや部屋の主となっているその人はなにも言わない。

 椅子に座り、なにかとにらめっこしていたその人……ピア・アランフェイクさんは振り返り、私の姿を見てにこりと笑顔を浮かべた。
 頭の猫耳は、ピコピコと動いている。私を歓迎してくれているのかな。

「お茶会は楽しかったかい?」

「……なんで知ってるのさ」

「アタシはなんでも知ってるのさ。
 ……なーんてね。ほのかな紅茶のにおいがしたから。ほっぺたにお菓子のくずついてるよ」

「えっ」

 なんてやりとりをしつつ、私は近くにあった椅子に座る。すっかりここが、私の定位置みたいな感じだ。
 室内は薄暗い。これも相変わらずだ。

 明かりをつければいいのに、と以前指摘したことがあったけど、研究開発のためにはこのくらいの明るさがちょうどいいんだという。
 私にはよくわからないことだ。

 この研究室は、ほとんどがピアさんの私室みたいになっている。そこらへんに、いろいろなものが転がっている。
 そう、魔導具と呼ばれるまでには完成していないものが。

「はー、相変わらずすごい数だねぇ」

「そりゃ、作って作って作りまくって、とにかく自分の納得がいくものができるまで作り続ける。いい魔導具を作るために、何度も挑戦することは大切なことだからね」

 この研究室で、ピアさんは日々魔導具を作っている。作っているとはいっても、そのほとんどが今、そこらに転がっているピアさん曰くガラクタの数々。
 彼女の納得いくものが生まれるのは、何度も何度も思考と作業を進めた先にようやく一つあるかないかだ。

 私に貸してくれた、『魔力剣マナブレード』もその一つだ。

「今は、なにを作ってるの?」

「アンタさんが使った魔力剣マナブレード、その改良点を加えた魔力剣マナブレード改を作ろうと思ってるんだけど、なかなか難しくてねぇ」

「改……」

 ネーミングがまんまだけど、まあいいか。
 私が決闘の最中で壊してしまった魔導具を、ピアさんは怒るでもなく次なる改善点を見つけたと言って。それを、今こうして作ろうとしている。

 やっぱり、なにかを開発したり研究したりする人ってすごいなぁ。マーチさんとすごく気が合いそう。

「それより、聞いたよ魔導大会の件。出場するんだって?」

「うん、ピアさんは?」

「アタシは、魔導でドンパチするよりも魔導具作ってる方が性に合ってる。って、魔導士らしからぬ発言だったかな」

 どうやらピアさんは、魔導大会には出ないらしい。
 なにも魔導を使って戦うだけが魔導士じゃないんだ、らしくないとは言わない。むしろ、ピアさんらしいと言える。

 ただ、なにか考え事をするように天井を見つめていたピアさんが「あ」と声を漏らした。

「そういえば、レニアは出場するって言ってたかな」

「レニア先輩が」

 ピアさんの口から出てきたのは、レニア……レニア・カーマン先輩の名前だ。
 レニア先輩はピアさんの幼馴染で、小人族ドワーフの亜人だ。だから、失礼だけど最初は先輩と思えなかった。背がね……私よりちょっと低かったんだ。

 彼も出るのか。会ったのは一回だけだけど、小人族ドワーフなんて珍しい種族なのでよく覚えている。
 見た感じ、強そうには見えなかったけど……というか、年下の私にも初めは敬語だったので、大会なんてものに出るほど熱い人だとは思わなかったな。

「だから、レニアが勝ち進めるための魔導具を、今作っているところ。
 アンタさんも、その依頼かい?」

「いや、私は……」

 大会では、魔導具の使用もアリだ。魔力のない人でも、魔導具を使って出場したって話は聞いた。
 レニア先輩は魔導と魔導具とで挑むみたいだ。

 ピアさんの魔導具には失敗品も多いけど、成功したものの性能は確かだ。使った私が言うんだから、間違いない。
 今回私も、以前の決闘のときみたいに魔導具作りを依頼にしに来たのかと思ったみたいだけど……

「今回は、魔導具はナシで挑もうと思うんだ」

「お」

 そう、今回は、魔導具は使わずにいく。
 ピアさんの魔導具が、という意味じゃない。魔導具全般という意味でだ。

「今回は、自分だけの力でどこまで行けるか試したいんだ。
 魔導具に頼ることもせずに、純粋に自分の力だけで」

 だから、賢者の石も今回は、外して参加する。
 自分の魔力を増加させるあの魔導具があれば、わりかし簡単に勝ち進めるかもしれない……あれも魔導具である以上、ルールには反していない。

 でも私は、純粋に自分の力だけで、挑みたいんだ!

 ……そういえば、賢者の石をピアさんに見せたらどんな反応をするだろうな。賢者の石付き指輪はさすがに毎日指にはめているわけでもないし、今は自分の部屋だ。
 国宝の魔導具だもんな。今度見せてあげよう。

「うんうん、良いと思うよ。でも、それならなんで今日はアタシのところに?」

「いやぁ、前もって話しておかないと、もし私の分まで作ろうとしてたら悪いなって」

「にゃはは、確かにね。りょーかい、じゃあアンタさんに当てようと思ってた時間、レニアのにつぎ込むとするよ」

 自意識過剰な考えだったかもしれないけど、本当にピアさんは私の分も作ろうとしてくれたみたいだ。
 ゴルさんとの決闘以来、今度は私にどんな魔導具を……と言っていたのを聞いていたから、もしかしたらと思ったけど。

 気持ちはありがたいけど、今はその気持ちだけ受け取っておくことにする。
 それに、ピアさんの魔導具を相手に挑むっていうのも、それはそれで面白そうだ。

 その後、本格的に暗くなるまでの少しの間、お話に花を咲かせて、私は研究室を後にした。
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