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第五章 魔導大会編
302話 各ブロックの参加者たち
しおりを挟む「中は思いの外静かですのね」
会場の中、出場者用の入り口から足を踏み入れると、中は冷たく薄暗い通路だった。
外と同じく石造りの壁、この人数で通っても余裕がある程度には広い通路だ。もちろん、四十人が横並びで歩ける広さではないけれど。
通路は一本道なので迷うことはない。それに、目的地はすぐそこだ。
「おぉ……」
開けた場所に出ると、そこには参加者の面々がいた。
ある者はシャドーボクシングしていたり、ある者は座って精神を集中されていたり……
人間、獣人、亜人……様々な種族がいる。
ただ、その中にもエルフの姿だけは、ない。
「みんな強そうだねぇ」
「お前たちのように初参加の者もいれば、何度か大会に出場している者もいる」
「あ、あの人去年見たことがあるよ」
と、それぞれが口を開き感心したように話している。
そこへ、ふとこちらへ近づいてくる人がいた。
「参加者の皆さん、お名前をお願いしま……あれ、エランちゃん」
「おっ……カタリアさん?」
なにやら名簿らしきものを手に持った女の人は、見覚えのある人だった。
それは、冒険者ギルドの受付の女の人で、おっぱいの大きいカタリアさんだった。
なんで、冒険者ギルドの受付の人がここにいるんだろう。
「もしかして、お仕事?」
「えぇ。魔導大会には、冒険者ギルドも少し関わらせてもらっていてね。少しお手伝いをしているの。
もちろん、本業の方も疎かにしてはいないから安心して」
私の疑問を感じ取ったのか、笑顔でカタリアさんは答える。
この大会は国をあげてのものだし、魔導学園も学園としてエントリーしたりしてるし、冒険者ギルドが関わっていても不思議じゃないのか。
それからカタリアさんは、ざっと私たちを見回す。
「では、それぞれ名前をお願いします。各ブロックに組み分けていますので、それをお伝えします」
この大会のルール、各ブロックごとに分けて、総当たりで競い合う。
参加者としてエントリーした時点から、すでに私たちはそれぞれ、どのブロックに分けられるか大会側で組み分けていたらしい。
大会参加者は、合計五百十二人もいるという。ひゃあ、すごいね。
それを、AからEブロックの五つに分ける。なので、各ブロックに……百人くらいがぶつかることになる。すっげ。
学園関係者、先生を含めても五十から六十人ってところだろうし……これを抜いても、相当規模の大きな大会だってのがわかる。
まあ、この全部が全部魔導士ってわけではない。魔導具のみを駆使する人もいるだろうし、もしかして体一つで参加する人もいるかもしれない。
冒険者なんか、ほとんどそうだろう。
……ちなみにだけど、魔導を学ぶための学園は、なにも魔導学園だけではないようだ。魔導学園が一番大きくて、魔導に関して力を入れている学園だ。
なので、他の学園の生徒なんかも、いるのかもしれない。それこそ、国外のね。
「はい。エランちゃんは……Dブロックですね」
「Dブロックか」
みんな、自分が組み分けられたブロックを説明され、私も。私は、Dブロックだという。
結構後の方だ。それまでは、他の人の戦いでも観戦していよう。
「ん……お前と同じか」
「ダルマス」
当然だけど、ブロックが被っている相手が何人かいる。中には、先輩の姿も。
ただ、同じブロックで当たった以上、勝ち残れるのは一人だけ……それも、総当たり戦でだ。一対一ではない。
そして、勝ち残った五人が決勝に進み、そこでバトルロイヤルとなるわけだ。ただ、まだ内緒にしていることもあるようで。
噂じゃ、前回大会優勝者が、決勝に出てきて六人で戦うんじゃないかとか。
どうやら前回大会優勝者は見当たらないらしい。私は誰だか知らないけど。
で、勝った一人が、優勝賞品と優勝賞金をもらう……
「って、優勝商品ってなんなの?」
「後で改めて発表がありますが、皆さん周知ですので。とある魔導具です」
そういえば優勝商品はなんなのか、結局聞けていなかったなと思い出し、聞いてみると……それは、魔導具だという。
魔導具、魔導具か……これだけの大会の優勝商品なのだ、それほど価値のあるものなのだろう。
……私、少し前に"賢者の石"を貰ってるし、あんまり惹かれないなぁ……まあ、目的は強い人と戦うことはいいんだけど。
"賢者の石"は置いてきた。この大会は、私個人の力で勝ち抜くんだ。
「エランちゃんと同じブロックか、よろしくねー。ま、お手柔らかに」
「タメリア先輩」
うんうん、手合わせしたかった相手がどんどんいるようで、嬉しいよ。
AからEブロックに分かれている。試合は、当然Aブロックから順番に始まる。
なので、Aブロックに出場する人は、一足先に移動を開始した。
その中には、ナタリアちゃん、コロニアちゃんの姿もあった。
「おー、早速二人が出るんだね。頑張ってね!」
「ま、やれるだけやってみるよ」
「がんばるよー、見ててねエフィーちゃん」
学園では一年生で【成績上位者】のナタリアちゃんと、魔術を無詠唱で使えるコロニアちゃん……他にも、先輩たちも参戦する。
これは、自分が戦うだけじゃなく、誰かの戦いを観戦するのも楽しそうだなぁ!
他ブロックの人は、控え室みたいな風になっている言葉でモニター越しに試合を見るなり、観戦席に行って直接見るなり、その間の行動は自由だ。
私は……やっぱり、直接見ないとね!
応援ありがとうございます!
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