史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第五章 魔導大会編

350話 ダークエルフを消す

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 ダークエルフを"消す"……そう、エレガは言った。
 その言葉に、とっさに反応するエランは、魔導の杖を構え、魔法を放つ。火の槍をイメージした、殺傷能力の高いものだ。

 放たれたそれは、狙い狂うことなくエレガの顔に向かって……寸前で、打ち消された。

「!」

「おいおい、あぶねぇなぁ……ここは結界の中だが、一部割れてるから効果は機能してねぇ。
 つまり、あんなのが眉間にぶちこまれりゃ死ぬ。殺す気だったのか? ビビらせんなよ」

 ケラケラと笑うエレガは、その言葉とは裏腹に平然と立っている。
 今すぐに、その顔をぶん殴ってやりたい。

 ここは結界の中だが、一部割れてしまっている以上、その効力は失われた。
 でなければ、クレアがあんな傷を負うこともなかった。

「お前、ルリーちゃんになにを……」

「そっちのクレアちゃんと、ダークエルフ。どっちも助けようってか? 優しいねぇ」

「けど、その優しさが隙だらけ」

 激昂するエランの背後で、冷たい声が響く。聞き覚えのある声だ。女の声。
 ジェラか? いや違う。これは……

「っぶ……!」

 振り向く……と同時、頬になにかがめり込む。これは、つま先か。
 どうやら、背後から蹴られた。エランの体は、吹っ飛んでいく。

 しかし、強引に地面に踏みとどまり、すぐに顔を上げた。
 そこにいた人物は、自分やエレガ、ジェラと同じく、黒髪黒目をした特徴的な人物……

「れ、レジー?」

「よーぉ、あんときぶりだな」

 ここにはいないはずの人物。レジーと名乗った女が、いた。
 以前、王都内で魔獣オミクロンを呼び出し、甚大な被害をもたらした女だ。運良く、人死には出なかったが。

 暴れる魔獣を、ゴルドーラとサテラン教諭に任せ、エランはレジーと対決した。
 その際、ルランの介入もあり、捕らえることに成功し……地下牢に、閉じ込めていたはずなのだが。

「ど、どうして、ここに……」

 痛む頬を抑えつつ、エランは立ち上がる。
 同時に、確信する……予想はしていたが、レジーとエレガたちは、仲間だったのか、と。

 それに、よりによってこのタイミングで……
 奴らの仲間なら、誰かが助けに入ったのか。

「さぁて、どうしてか、な!」

「!」

 考える暇もない。迫るレジーは、身体強化で己を強化し、エランに接近戦を挑む。
 とっさにエランは防御態勢を取り、繰り出される拳や蹴りを弾いていく。

 それは、エランをその場に留めておくための、時間稼ぎ……ちらっと視線を向ければ、エレガとジェラが、ルリーに標的を絞っている。
 足止めで、充分なのだ……ルリー一人なら、どうとでもできるから。

 フェルニンたちは、魔獣の対処でそれどころではない。なにより、クレアがあの反応なのだ……ルリーのことすら知らない人が、ダークエルフを助けるために動いてくれるとは、思えない。

 そして、クレアは……

「……」

 悲鳴を上げ続けたためか、今はおとなしい。しかし、放心している。
 ダークエルフ、ルリーの正体、自分の身に起こったこと……それらが処理しきれず、放心してしまったのか。

 いずれにせよ、ルリーに迫る危機を、クレアは認識してすらいない。

「っ、この……」

 焦る気持ちが、さらにエランの行動力を制限していく。
 早く助けに行かなければ。そう思えば思うほど、目の前のレジーへの対処が、遅れてしまう。

 さらに、焦りがエランから、集中力を奪っていく。
 無論、この程度で魔導が使えなくなる、といったやわな鍛え方はしていないが……

「おらおらどうした! 動きが鈍ってんぞ!」

「っ……」

 同じく身体強化の魔法をかけていたエランだったが、本来の実力を出し切れていない。
 ただでさえ時間稼ぎに徹しているレジーに、これでは押し切ることもできない。

 このままでは……

「よぉダークエルフ。どうだお友達のあんな姿見て……どんな気持ちだ」

「……っ」

「これがてめーら、ダークエルフだ。見てみろよ、あんなになってかわいそうに……クレアちゃんのためにも、おとなしくこの場から消えちまえよ。な?」

「! ルリーちゃん、聞いちゃだめ!」

 それはまさしく、悪魔の囁き。
 ルリーは、クレアの姿を見る。思い出すのは、彼女から拒絶された事実。

 これまで正体を隠してきた。だから、こんな反応をされると、思っていなかった……
 いや、本当はわかっていたのかもしれない。自分が、ダークエルフが、思った以上に嫌われる存在なのだということを。

 ならばいっそ、消えてしまえば、彼女も自分も、楽に……

「ルリーちゃん!
 ……っく!」

 エランの言葉は、届かない。反応もしてくれないが、なにか良からぬことを考えているだろうことは、わかった。
 このままでは、本当に……!

「お……」

 ふと、レジーが声を漏らす。それは、エラン自身にはわからない変化。
 エランの動きが、よくなってきた……というより、規則性がなくなってきた。こちらからの攻撃を弾くだけでなく、カウンターまで入れてくる。

 これは、エランが意識的にやっているのか、それとも……

「……っ」

 しかし、それよりもエレガがなにかをしようとするほうが、早い。右手に、なにか持っている。
 魔石だ。色のない、透明な魔石……あんなのは、見たことがない。

 ……いや、ある。いつだったか、グレイシアとの修行の最中、見つけたものが……

「ひひひ、じゃあなダークエルフ。一人寂しく、ここじゃないどこかへ送ってやるよ」

 喉の奥から笑い、エレガは手に持つ魔石を、握りしめる。
 それを、ルリー目掛けてぶん投げようとして……

「調子に……乗るな!」

「!」

 鋭く伸びた、長い足。顔を狙ってきたそれを、とっさに腕でガードする。
 じんじんと、痛む。蹴りを放ったその人物……

 ラッへが、怒りの感情を瞳に乗せていた。
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