史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第六章 魔大陸編

381話 魔物の暴走

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「ちょっと待て。あれ魔族か?」

「へ?」

 ラッヘがどこか冷静に言うもんだから、私も目を凝らして見てみる。
 というか、クロガネの視界を通して、だけど。

 走ってきているのは、青色の皮膚の、角が生えた、さっき会った魔族の子供と類似した特徴の……

「……外見は魔族に見てるけど、どちらかというと……」

「魔物?」

 二足歩行で走っているのが目立ってはいるけど、四足歩行の獣のようなものもいる。
 なにより……なんか、おかしい。

 大勢いるその誰もが、白目のまま、正気とは思えない状態で走ってきている。
 その姿は、まるで本能のまま動く、獣のようだ。

「今まで魔物は見てきたけど、魔族に似ている魔物はいなかった。それも、あんなに居るなんて……どういうこと?」

「さあな、ただでさえ魔大陸って未知の場所だ。生態が違うのかもな。あれだけの数の魔物が一斉に迫ってくる……まさに、暴走スタンピードってわけだ。
 それより……」

「このままじゃ、あの大群に押しつぶされちゃいますよ!?」

 あの大群は、なんの目的で私たちに向かってくるのか……いや、私たちじゃなくて、塔か?
 魔物たちは塔に向かってて、逆に塔からは魔物たちに光線が放たれている。

 もしかしてさっき放たれた光線は、私たちが魔物の仲間だと誤解して、撃たれたものだったのか?

『どうする契約者よ。上空に逃げるか……それとも、ワレが一掃するか?』

 クロガネが、なんとも力強いことを言ってくれる。

「ううん、上に逃げたら、またさっきみたいに狙い撃ちにされるだろうし……」

 上空に逃げるのは、ダメだ。さっきの二の舞になる。
 なら、クロガネに魔物を倒してもらう? クロガネの力なら、あれだけの数が居ても、魔物なんて目じゃない。

 もし、魔物たちを倒せば、塔の魔族に私たちは敵じゃない、ってわかってもらえるかもしれない。

「よし、ここはクロガネにあいつらを倒してもらう方向で……」

「う、撃ってきましたよ!?」

 このあとの対応を、決める……そのタイミングで、ルリーちゃんの声が響く。
 彼女が指さしているのは、迫りくる魔物たち……彼らが、一斉に魔法を撃ってきたのだ。

 あるものは口から、あるものは手から……次々と、魔法が放たれる。
 私たちを、完全に敵だと定めている。

「グォオオオオ!」

 迫りくる魔法の数々に、クロガネは竜魔息ブレスを放つ。私でも防ぐのに手一杯な、口から放出される魔力の塊だ。
 炎のごときそれは、迫る魔法とぶつかり合い、爆発する。

 ……一つの威力なら、クロガネの攻撃が当然強い。だけど、相手の魔物たちは、一斉に攻撃してくる。
 単vs多。数の違いで、向こうの攻撃の威力が跳ね上がっている。

「クロガネ、も、もう一回お願い!」

『うむ。ハァアアア!』

 私のお願いを聞き、クロガネが再び竜魔息ブレスを放つ。だけど、魔物たちもまた再び魔法を放ってくる。
 互いの攻撃がぶつかり合い、それらは相殺した。

 あの魔物たち……魔物に仲間意識はないと思うけど、結果的に力を合わせる形になって、力を増幅させている。

「このままじゃあの大群につぶされっぞ!」

「! 仕方ない……クロガネ! お願い私たちを乗せて飛んで!
 そのあとは、またあの光線が飛んでくるかもしれないから、注意! クロガネが急に方向転換しても振り落とされないように、しっかり掴まって!」

「はい!」

『うむ』

 私の指示を受け、ラッへとルリーちゃんは素早くクロガネの背中に飛び乗る。私も乗って、クロガネは翼を広げて飛び立つ。
 クロガネが地上から離れ……しばらくもしないうちに、私たちがさっきまでいた場所は、魔物の大群が押しつぶしていく。

 巨体のクロガネならともかく、私たちがあの群れに潰されたら……一大事だ。

「わっ……すごい、ですね」

「うん……」

 下を見ると、まるで魔物の波だ。肌が青いから、波打つ水のようにも見える。
 同時に私は、塔にも注意を払う。飛び立ったことで、またさっきみたいに襲われる可能性が高いからだ。

 クロガネにも、塔に注意を向けてもらい……しっかりと、背中にしがみつく。

「! 来たぞ!」

 カッ、と塔の一部が光り輝く。その直後、放たれる光線が迫りくるのを目視する。
 ただ、さっきまでのものとは、違った。

「魔物たちを、狙ってる……」

 光線は、空を飛んでいる私たちではなく、地上の魔物たちを狙っている。
 やっぱり……さっき狙われたのは、私たちが地上の魔物たちの仲間と思われたからか。

 つまり、優先順位は魔物たち。襲ってくる様子のない私たちは、放置ってことだ。

「んじゃ、このままあの塔には向かわずに、移動した方がいいんじゃねぇか」

「うん、そうだね……」

 なんとなく、クロガネに任せてこっちの方向に来ていたけど……進むのがこの方角だとしたって、あの塔の近くを通らないといけない、なんてことはない。
 魔族に感知されない距離から、さっと抜けてしまえばいい。

 クロガネもうなずき、少し遠回りして同じ方角に向かうことに。
 それに、クロガネに全速力を出してもらえば、あの光線だって当たりはしないはずだ。

『! 来る!』

「へ?」

 少し、注意をそらした瞬間だ……クロガネの言葉に、私はすぐに視線を戻した。
 そこに、黒く大きな……鳥が、いた。

 クロガネとそう変わらないほどの、巨大な鳥。
 それだけじゃない。

「怪しげな魔物め……ここで殺してやる!」

 その背には、魔族が乗っている。今度こそ、間違いない!
 しかも……私たちのことを、魔物だと、思っている……!?
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