394 / 1,198
第六章 魔大陸編
386話 魔族と話そう
しおりを挟む魔物の暴走……それを止めるために、クロガネにはなにやらいい案があるという。
私たちよりも魔物に詳しいクロガネのことだし、本当にナイスなアイデアがあるのだろう。そう思った私は、素直にクロガネに任せることにした。
クロガネに向かってうなずき、その動きを見守る。
私に応えてくれたクロガネは、鳥型の魔物の上……私の隣に、ルリーちゃんとラッへを移らせる。
『よし。契約者らは、耳を塞いでおけ』
「わかっ……ん?」
ルリーちゃんとラッへを移し終え、クロガネはまた移動していく。私たちがいる場所よりも、下降していく。
去っていく際、クロガネが言った言葉に、私はちょっと不安なものを覚えた。
なにが起こるかはわからないけど。とりあえず……
「二人とも、耳塞いで!」
「あぁ?」
「え?」
言われた通りのことを、伝えるだけだ。
私は耳を塞いで、ルリーちゃんとラッへも遅れて耳を塞ぐ。
クロガネは、ある程度降下して、その場に留まる。そして、大きく息を吸う動作を見せる。
……クロガネの言う、いい案って……まさか……
「ゴギャアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「……っ!」
耳を塞いでいても、耳の奥底にまで響くかのような、大きな声。耳の奥というか、胸の奥底というか……とにかく、全身に重々しく伝わる、叫び声。
その圧倒的な咆哮は、クロガネより上空にいた私たちも……そして、塔から魔物を攻撃している魔族も……
地上に群がっている、魔物たちにも等しく、轟き、響き渡る。その身に、強制的な拘束でもかけられたように、みんなその場から動かなくなる。
いや、動けなくなる。
「……っ、す、すごい、声……」
味方であるはずの私たちも、あまりの圧に動けなくなってしまう。
クロガネの、いい案ってこれか……なんていうか……
「なんてハチャメチャな……」
「さすがエランさんの契約モンスターですね……」
「ん?」
無理やり、咆哮で魔物を黙らせるなんて、とんでもない方法だ。結果オーライだけど。
ルリーちゃんがなにか言っていたような気もするけど、まあいいや。
魔物たちはというと、その場に止まり、キョロキョロと周囲を見回している。
さっきまでの暴走が、嘘みたいな静けさだ。
「くっ……なっ、ど、ドラゴンだと!?」
「あれも魔物の味方か!?」
「いや、だったら我々はすでに落とされている……!」
クロガネを見て、魔族たちが口々になにか言っている。
あー、そりゃそうか。巨大なドラゴンが急に現れたら、混乱もするよね。
「よっ……!」
「え、エランさん!?」
私は、鳥型の魔物の上から飛び降り、クロガネの背中へと着地する。
ちょっと足が痺れちゃったけど、まあこれくらいなら問題ない。
ドラゴンの上に、誰か乗っているので、魔族たちはまた口々になにか言っている。
うーん、こういうときは……
「ねえ、この中で一番えらい魔族って、誰なの?」
一番えらい人に話を通すのが、一番早い! そのはずだ!
「なんだ人間! いきなり現れて、なんのつもりだ!」
「そもそもなんで人間がここにいるんだ!」
「帰れ!」
魔族からの帰れコール……うわぁ、圧倒的アウェー感。
それを受けて、クロガネが低く唸りを上げる。すると、魔族たちは一斉におとなしくなる。
わぁい、暴力的力バンザイ。
「……わしが、この塔を治めている者だ」
「お」
すると、塔の中から声が。
奥から出てきたのは、他の魔族に比べてひときわ大きな体。声は少ししわがれているけど、なんていうか威厳のある声だ。
青い肌の巨躯、額から生えた太い角、顎に生えた白ひげ、そして眼力のある瞳……
明らかに、下にいる魔族たちとは違う。
「して、人間。人間が、なぜこの魔大陸にいる?」
やっぱり、人間がここにいるのは、不自然なのだろう。
どこにいても同じことを聞かれる……
「飛ばされてきちゃったんだよ。転移ってやつ」
「ほぅ……」
「それより、お話がしたいの」
私が知りたいのは、魔物が人のいる大陸日報向かおうとしている理由だ。
魔物自身、そのことはわからないという。それなら、別視点から聞いてみようってことだ。
それに、えらい人ならいろいろ知っているかもしれない!
「ふむ……話、か。
……いいだろう」
「ガロアズ様!」
一番えらい人……ガロアズって呼ばれた魔族は、私の要求を受け入れてくれた。
さっき、魔族の子供の件があったせいで、魔族に対していいイメージ持ってなかったけど……話せばわかってくれそうな、いい人だ。
やっぱり、種族を一括りにして見ちゃあ、いけないね。
「人間……名は?」
「エランだよ。エラン・フィールド」
「そうか。実は、近々この地に人間が現れると、予見があった。わしからも、話が……いや、見せたいものがある。
しかし、その間、下の魔物たちが再び暴れ出さないとも限らない」
「その心配はないよ。クロガネ」
『……大丈夫か?』
「うん!」
私は、塔へと飛び移る。そしてクロガネは、さらに下へ。
魔物のことは、クロガネに任せるとしよう。また暴れ出さないように、そして魔族も変なことをしないように、しっかりと監視を。
ルリーちゃんとラッへも呼び、塔へ降りてきてもらう。
「……魔族と話し合いだ? なにがどうして、そうなったんだ」
「エランさんすごいです」
「はぁ、もうなにがなんだかわからん。
……てか、大丈夫なのかよ」
ラッへが呆れたように……そして、小声で私に話してくる。
「この塔の中で、魔族相手に私らだけだと? クロガネもいる外で話したほうが安全だろ」
「でも、塔の中じゃないと見せられないものがあるって話だし……敵意は感じないから、大丈夫だよ」
「のんきな……」
魔族の、えらい人が言うには……私が、というか人間がここに来る、予見があった。
それは、どういう意味なのか。そして、見せたいものはなんなのか。
それを確かめるため、私たちは塔の中へと、足を踏み入れた。
1
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はアレク
両親は村を守る為に死んでしまった
一人になった僕は幼馴染のシーナの家に引き取られて今に至る
シーナの両親はとてもいい人で強かったんだ。僕の両親と一緒に村を守ってくれたらしい
すくすくと育った僕とシーナは成人、15歳になり、神様からギフトをもらうこととなった。
神様、フェイブルファイア様は僕の両親のした事に感謝していて、僕にだけ特別なギフトを用意してくれたんだってさ。
そのギフトが裁縫ギフト、色々な職業の良い所を服や装飾品につけられるんだってさ。何だか楽しそう。
無能と蔑まれ敵国に送られた私、故郷の料理を振る舞ったら『食の聖女』と呼ばれ皇帝陛下に溺愛されています~今さら返せと言われても、もう遅いです!
夏見ナイ
恋愛
リンドブルム王国の第二王女アリアは、魔力を持たない『無能』として家族に虐げられ、厄介払いとして敵国ガルディナ帝国へ人質に送られる。死を覚悟した彼女だが、あまりに不味い帝国の食事に耐えかね、前世の記憶を頼りに自ら厨房に立つことを決意する。
彼女が作った温かい家庭料理は、偶然離宮を訪れた『氷の皇帝』レオンハルトの孤独な心を癒していく。やがてその味は堅物騎士団長や宰相をも虜にし、食べた者を癒す奇跡から『食の聖女』と讃えられるように。
価値を知った故郷が「返せ」と言ってきたが、もう遅い!
これは、料理で運命を切り開き、最強皇帝から世界一甘く溺愛される、美味しい逆転シンデレラストーリー。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる