史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第六章 魔大陸編

426話 牢屋にて

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 部屋を出た私は、とある場所へと向かっていた。
 それは、エレガ、ジェラ、レジー、ビジーの四人をそれぞれ捕まえてある、牢屋のある場所。

 長い廊下を歩いて、階段を上ったり下ったりして……
 そして、たどり着いた一室。扉を開くと、中は広い空間だ。

 扉を閉める。左右には、いくつもの牢屋が並んでいて、その中には今回の戦争で捕らえた捕虜、なんかも入っているらしい。
 まあ、私はそこには興味はない。私の目的は、この奥だ。

 しばらく足を進めると、四人が閉じ込められている牢屋にたどり着く。
 一人一つの牢屋に、それぞれ入れられている。

「よぉ、また来たのか」

 私に気づいた男……エレガが、口を開いた。
 その声は、少しかすれてはいるけど、相変わらずの調子のようで複雑な気持ちだ。

 憔悴しきった姿が見たいわけじゃないけど、平然と余裕を見せられるのもそれはそれで癪だ。

「お前がまだここにいるってことは、あのエルフはまだ目ぇ覚ましてねぇみてえだな」

「……」

 エレガたちも、ラッヘが眠ったままであることは知っている。あの魔力の爆発的な上昇と、エルフの限界魔力オーバーブーストってやつの存在を知ってれば、まあ察せるのだろう。
 ただ、私がそれに正直に答える義理はないけど。

 私は黙って、質素な布団の上に座っているエレガを、見下ろした。

「それで、なにか話す気になった?」

「なにかって、なにをだ?」

「……魔族の戦争に介入した理由。魔導大会をめちゃくちゃにした理由。私たちがいなくなった後みんなはどうなったのか。ルリーちゃんを……ダークエルフの故郷を襲った理由。魔獣を従えている理由」

 とぼけているエレガに、私は苛立ちを抑えながら言葉をぶつけた。
 ぱっと思いつくだけでも、こんなに聞きたいことがある。

 もっと聞きたいことはある。だから、こうして生かさず殺さずって姿勢を貫いているわけだ。

「さあね」

 だけど、エレガの……エレガたちの答えは、こうだ。
 私は隣の牢屋に入っている、レジーに視線を移す。

「レジーは、なにか話す気になった?」

「はっ、知ったことか」

「……」

 本当なら、レジーにかけられた『絶対服従』の魔法で、洗いざらい喋らせたいんだけど……

 本人がどうしても話したくないものや、話してはならないと感じているもの。つまりは、固い意思があるもの。そういったものには、従わないときがある。
 これは『絶対服従』だけど、『強制服従』ではない。似てるようなもんだけどね。

 本来なら、術者の意にそぐわない行動や言動をした者には、罰が落とされる。
 『絶対服従』の魔法は、紫色に光る首輪を付けられているような形。罰とは首輪が強く光り輝き、魔法をかけられた者へ激痛を与える、というもの。

「ふん……」

 だけど、罰は発動しない。本人が我慢している様子もない。
 さすがに時間経過により魔法の効力が切れつつあるのか、レジーに初めて使ったこの魔法に私が慣れていないのか。

 いずれにしろ、簡単な命令なら従わせられるけど。それも、いつまで続くかはわからない。

「ていうかさ……なんか、これデジャヴュだよね。牢屋の中好きなの?」

「喧嘩売ってんのかてめえ」

「売られてると思うなら自覚はあるってことだね」

 王国で暴れまわったレジーは一度、捕まえられて……王城の地下牢に、ぶち込まれていたっけ。
 あのときも、私は会いに行ったっけな。まあ、王城まで行くの面倒だったから頻繁にではないけど。

 あのときのことを思い出すよ。

「私に絶対服従したり、二回も捕まったり、いいとこないよねレジーちゃんって」

「喧嘩売ってんなてめぇ! ちゃん付けなんかしやがって! この拘束解きやがれ!」

「解くわけないでしょ」

 ぎゃいぎゃいと騒ぐレジーは、放置。
 四人を拘束しているのは、魔族特製の、魔力を奪い続ける拘束具、というものだ。見た目はただのロープだけど、縛った相手の魔力を奪う。

 だから、こんな元気に暴れているように見えても……結構ギリギリのはずだ。
 魔力は、言ってみれば生命線のようなものなのだから。

「ねーねーお姉ちゃん、こっから出してよー。暗くてつまんない」

「……」

 退屈だ、と言うように、私に話しかけてくるビジー。
 退屈なのだから牢屋だと思うのだけど、この子全然反省している様子がないな。

 この、一見無邪気に見えるけど本性は危険な子。私に同情を誘っているのか、それとも本心なのか。
 その言葉に負けて、ここから出すわけないけど。

「私の質問に答えてくれたら、考えてあげるよ」

「だからー、別にたいした意味なんてないんだってば」

 ……エレガとレジーは、頑なに口を閉ざす。一方ビジーはあっさりと口を割る。
 だけど、たいした意味なんてないというふざけた理由だ。煙に巻こうとしているわけだ。

 ただ……ジェラの言葉と、似通っているんだよなぁ。
 あいつは、面白いからって理由で暴れていると言っていた。深い理由なんか無く、ただ面白いからだと。

 ジェラもビジーも、嘘をついている感じはしない。
 もし本当に、単に面白いからという理由でこれまでいろんなひどいことをしてきたのなら……

 理由があればいいというわけでは、ない。だけど、ないならないで余計、許せなくなる気がする。
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