史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第八章 王国帰還編

499話 ……ヨシ!

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 地下から出るのは、難しくなかった。
 なんたって、道は一つ。迷いようがない。それに、見張りの兵士もさっき倒した二人だけだった。

 こんな広くもない通路に、人を配置することはしないだろう。
 いるとしたら、地下室へ降りる階段の先にある扉……その向こうか。そこもやっぱり出入り口は一つだから、そこを見張っておけばいいもんね。

 ちなみにさっきの兵士たちは、魔力が戻ったので魔法で作り出したムチで、縛っておいた。

「へぇー、人魚! すっげー、初めて見た!
 伝説上の生き物だと思ってたよ。ま、この世界がもうファンタジーだけどさ」

「えっへん」

 地下通路を歩く最中、これまでの出来事をざっとヨルに説明する。
 私がこの国の状況が気になっていたのと同じように、ヨルもヨルで私のことが気になっていたという。

 後ろでは、ヨルがリーメイと話をしている。どうやらヨルは、ニンギョがどういうものか知っていたみたいだ。
 私は初めて見たし、そういつ種族だってのも知らなかったのに。

「ヨルは、リーたち人魚族のことには詳しいノ? 人間にしては珍しイ!」

「詳しいってほどでもないけどな。ファンタジーものにおいて人魚ってのは、王道の一つだから!」

 よくわからない言葉が聞こえるけど、リーメイからしてみれば自分の種族を知っている人がいるってのは、嬉しいらしい。
 すっかり仲良くなっちゃって……ちょっとジェラシー。

「それで、こっちのエルフが……魔導大会で、決勝まで勝ち上がった子だよな」

「ラッへだよ!」

「……確かに記憶喪失みたいだな」

 ラッへは、魔導大会に出場していた。そして、決勝では素顔もさらしていた。
 なので、わかるといえばわかるか。その後いろいろあったけど、忘れてはいないようだ。

 ただ、素直に記憶喪失だと話してもすんなりと信じてはもらえなかった。
 その後ラッへと話をして、ようやくって感じだ。

 まあ、魔導大会でのラッへの様子を見てたら、とても今と同一人物とは思えないもんな。

「にしても、ホントにエランと似てんなぁ……てか顔そっくりだ」

「……ラッへがその状態でよかったね。そんなにジロジロ見てたら鼻が折れるまで殴られてるよ」

「そんなに!?」

 まあ、ざっと説明したとは言っても……本当にざっとだ。
 どこに飛ばされて、どうやって帰ってきて……その間にも私たちの関係もまた変わっていって。

 そうじゃないと、話が長くなりすぎるしね。少なくとも今ここで話すことでもないし。

「……で、こいつらがあの事件の」

「そ。多分ヨルと似た感じの奴らだと思う」

「俺こんなやばいことしないだろ!?」

「いや、そうじゃなくて……」

 黙って歩いているエレガたちは、魔力封じの手枷を付けている上『絶対服従』の魔法をかけているから、もうおとなしくしているしかない。

 手枷は、どうやらエレガたちに付けていても『絶対服従』は有効らしい。
 あくまで術者……この場合は私の魔力が封じられたら、『絶対服従』の効力もなくなる。

 そんで、こいつらは……ヨルと同じような言葉を言っていた。イセカイだとかテンセイだとかなんとかかんとか。
 だから、その点でヨルと似ているんじゃないかと、思った。

「まあ、気になるところではあるけど……」

「そのあたりの話はあと、ね」

 牢屋は、通路の一番奥の部屋の中にあった。なので、入口からそれなりに歩いてきたけど……
 それも、終わりだ。階段が見えた。上に上がる階段。

 この上に、地上に繋がる扉がある。

「どう? 上の扉の向こうに見張りは、いると思う?」

「うーん……こっちも二人、かな」

 ヨルによると、上にいるだろう見張りは二人らしい……
 あ、ダジャレじゃないよ。

 黒髪黒目を要注意として閉じ込めておくなら、もっと見張りを増やせばいいのに……ま、こっちはありがたいけど。
 魔力を封じられたらなにもできないだろう、と思って油断しているのか。

「どうしよっか。魔法か魔術で扉ごとぶっ飛ばそうか」

「さ、さすがにそれはちょっと……」

「あはは、冗談だよ」

「目が笑ってないぞ」

 さすがに、魔導でぶっ飛ばすなんてことはしないよ。こんな狭い地下通路でそんなことをしたら、崩落の恐れがある。
 ダンジョンのときみたいな失敗はこりごりだからね。

 え、そういう問題じゃないって?

「ま、さっきみたいに私とヨルで兵士を気絶させる、でいいんじゃないかな」

「だな」

 やることは、さっきと一緒だ。
 むしろさっきと違って魔力が使えるだけ、一人でも充分なくらいだ。

 静かに、階段を上っていく。階段を上る音が扉の外にまで聞こえるかはわからないけど、念の為だ。
 外の兵士が油断しているところを、一気に無力化する。

「じゃ、行くよ」

「あぁ」

 階段を上がり切り、扉に手をかける。
 まず私が扉を開いて外に出て、続いてヨルが仕掛ける。制圧し、危険がなくなったとわかればルリーちゃんたちも出てくる。

 ヨルと目で合図をして……私は、扉を勢いよく開けた。

「!? な、なん……っ……」

 いきなり扉が開いたことに驚いた兵士が、振り向く……その瞬間に、私は兵士の顎に拳を打ち込んだ。
 顎が揺れれば脳も揺れる。そのまま、兵士は倒れてしまった。

 もう一人の兵士は異変に気づき、腰に構えた剣を抜こうとするが……それよりも先に、ヨルが兵士を足払い。
 体勢が崩れたところで、顔面に蹴りをおみまいした。

 扉を開いてわずか三秒で、終わってしまった。

「……ヨシ!」
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