史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第八章 王国帰還編

571話 えげつないこと

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 ブリエ改めイシャス。女性に化けていた彼は、泥のようになったりみんなを洗脳したりと、厄介な力を持っている。
 それでもって、その力でみんなを洗脳した理由が「退屈しのぎ」じゃたまったもんじゃないよ。

「……すべてが欲しい、といったか。それが、この結果だと?」

 ただ、後に続いた言葉はこれだった。すべてが欲しい。
 そのために、国中を巻き込んだ真似をしたと。

「あぁ」

「……ならば、わざわざレイド・ドラヴァ・ヲ―ムを国王に仕立てなくとも、貴様自身が国王として周囲に思わせればよかったんじゃないか?」

「わかってねぇなぁ。俺ぁ周到なんだよ。
 もしお前らみたいのが現れたら、真っ先に疑われるのは新国王だろ」

 ……イシャスが、すべてが欲しいと言いながら自分は国王にならなかった理由。
 それは、自分が疑われるのを防ぐためか。あいつは国王じゃない、ってのが国王になってたら、そいつに疑いが行くのは当然だもんな。

 確かに、私たちだってレイドやレーレちゃんが怪しいと睨んでいた。

「だってのに、なんでバレたんだか。王女に仕える地味な女に化けてたんだがな」

 なんでバレたのか、か。それは、リーメイのおかげだ。
 リーメイがいなかったら、今も私たちは関係のないレイドやレーレちゃん相手に疑心を募らせてうんうん言っていたことだろう。

 ま、それを正直に教えてやるわけないけど。

「じゃあもうおとなしく捕まって、みんなの洗脳を解いて」

「そもそも、貴様が国王に添えたあの男は何者だ」

 私と先輩の杖がイシャスを捉えたまま、にらみつける。
 変な動きをしようものなら、すぐに対応できるように。ルリーちゃんほどじゃないけど、私だって魔法の早撃ちには自信がある。

 自信といえば、イシャスが全然うろたえずに自信満々に見えるのも疑問だけど。

「あぁ、あいつらのことが気になるのか? なんてことぁねぇ、別の国で王族やってたってだけだ」

「! ……他国の、王族だと!? まさか、攫ったのか!」

「人聞きの悪い。王族を攫いやしねえよ。
 ただ、ハメられたかなんかで王族の地位から失墜したかわいそうなやつらさ。だから誰も知らないこの国で、王族に返り咲かせてやったんだ。俺ぁ優しいだろ?」

 ……レイドとレーレちゃんの正体。それは元々、別の国の王族だったと。
 みんなこの名前を聞いたことがないあたり、王族とは言っても遠く離れた国の話か、それとも小さな国の話か。
 ま、どっちでもいいか。

 それにしてもこいつ、さも自分がいいことしてやったみたいな雰囲気出してるけど。
 自分の目的のために、利用しただけだろう。

「ふん……まあ、あの男たちが何者かはどうでもいい」

「おいおい、お前からあいつらの正体聞いたんだろうよ」

「貴様が黒幕であることに変わりはない、その確認だけで充分だ」

 キッ、とにらみつける先輩。次の瞬間、魔導の杖の先端が光り、小さな光が放たれる。
 それは魔力弾……ではなく、鞭のように伸びて生き物のように動く。

 室内でド派手な攻撃をするのかと思っちゃったよ。
 狙う先にいるのは、もちろんイシャス。

「また拘束か、芸がねえな!」

 生き物のように動くそれは、軌道が読めない。なのにイシャスは、それがどんな動きをするのかわかっているかのように、後ろへ横へ動いて避ける。
 部屋の中で、あまり派手な動きはできない。
 なのに、最小限の動きで、かわしていく。

 膠着した状態……これが一対一なら、そうなっていたかもしれない。

「ぅお……!」

 私は、魔力で微弱な風を起こし、イシャスの足元に向けて放つ。
 こんなの、そよ風程度の風だ。でも、集中的に足元に向けて、止まる間もなく移動している相手に放てばその動きを鈍らせることくらいはできる。

 時間にして、一秒にも満たない隙。けれど、この場においてそれだけの時間があれば充分だった。

「せヤ!」

 バランスが崩れ、注意力が散漫になる。
 イシャスの視界には、先輩の鞭……それを防ぐために、思考してしまう。

 だから、リーメイが背後から放った水魔法への、反応が遅れた。

「ごぼっ……」

 イシャスの顔は、水の玉に埋まる。リーメイの魔法が、イシャスの顔を捉えたのだ。
 どんな生き物でも、呼吸系統を塞がれれば生きるために必要な酸素を取り込めなくなり、呼吸ができなくなり、いずれは……

 ……リーメイ、えげつないことするなぁ。
 このまま、動けなくなったところを再び拘束。また逃げ出さないようにしっかりと見張っておく……はずだったんだけど。

「んぐっ……ははっ!」

「!」

 イシャスは苦しそうな表情を浮かべたのも一瞬、次の瞬間にはその場から一歩を踏み出し……
 リーメイの眼前へと移動すると……リーメイの顔を、殴り飛ばした。

「! ぐぁ……!」

「リーメイ!」

「!」

 殴り倒されたリーメイに、イシャスはさらに追撃を加えようとする……だから私はとっさに魔力による身体強化をして、イシャスとリーメイの間に割り込む。
 イシャスの拳を、受け止める。

「っ、なんで……」

 リーメイが倒れたことで、水魔法は解除される。
 私の疑問を汲み取ったのか、イシャスが笑う。

「なあに、大したことじゃねえ。
 "酸素が欲しい"と、そう求めただけだ」

「はぁ?
 ……っ、よくも、女の子の顔を殴れるね」

「男女平等って言葉知らねぇのか? ガキぃ!」

 こいつ……結構、力が強い……!
 この場に踏ん張り、なんとか押し返そうとしていると……ふと、怖気のようなものを感じた。

 その方向を見ると、そこには先輩の姿が……

「貴様……よくも、リーメイを……!」

 ……気のせい、だろうか。先輩に、牙が生えているような……?
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