史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

737話 怖いものなし

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 アルミル・カルメンタール……サプライズゲストとして学園祭に来た彼の魔導講義は、時間にして三十分程度のものだった。
 "四柱しちゅう魔導士"ってやつの一人で、魔導のエキスパートと呼ばれる人物だ。

 彼の話は知識もそうだけど、声の迫力からして人を離さないなにかがあるようだった。

「はぁあ、素敵な時間だったわ」

 話が終わり、人々が解散していく中で、クレアちゃんは興奮冷めやらぬ雰囲気だった。
 かなりの有名人だし、そんな人の話を聞けるのは貴重だもんな。

「クレアちゃん、熱心に聞いてたもんね」

「そりゃあそうよ、むしろエランちゃんはなんでそんな冷静なのよ。
 あの聡明なアルミル・カルメンタール様を前にして」

 クレアちゃんが、私をジト目で見てくるけど……
 そう、めい? あのおじいちゃんが?

 確かに、話している姿は立派だったし、かなりの貫禄が見て取れた。でも……

「……」

「なによ、その渋い顔は」

 私、あのおじいちゃんがオールバックの若者と口喧嘩みたいなのしてるとこ見ちゃったからなぁ。
 おじいちゃんが魔導のエキスパートで、若者が武術のエキスパートだったっけ。

 仲が良くないのは一目瞭然だったけど、あんな姿見ちゃったら……聡明なんて、ねぇ。

「あ、そうだ、わたしちょっと挨拶してくるよ。クレアちゃんも行く?」

「…………はっ?」

 ぱん、と手を叩く私を、なに言ってんだこいつみたいな目を向けてくるクレアちゃん。
 最近辛辣な視線向けてくることが多いなぁ。それだけ気を許してくれてるってことなんだろうけど。

「いや、え、は? 挨拶って……いやいや、無理でしょ!」

「行けるって。ほら、私会ったことあるし」

「なんの根拠もない!」

 行けると思うんだけどなぁ。
 クラスでの出番まで、もう少し時間はあるし……おじいちゃんに挨拶してから、お昼食べて教室に行こう。

 よし、そうしよう。

「じゃ、行こうか!」

「ちょっ……なんでこう、思いきりがいいのよエランちゃんは!?」

 周囲の人たちがあちこちに歩き出す中、私は舞台の方へ。
 クレアちゃんも、どうしようか迷っているようだったけど、結局ついて来たみたいだ。

「なんだ、やっぱりクレアちゃんも行きたいんじゃん」

「エランちゃんが無礼を働かないか心配なのよ! というか、なんで雲の上の存在にそんなほいほい会いに行こうって思えるのよ!」

「なんでって……」

 うーん、あんまり深く考えたことはなかったなぁ。
 みんなにとっては、雲の上の存在……か。そりゃすごい人なんだろうけど。

 私はあのおじいちゃんより、すごい人を知ってるし……

「私ってほら、王様に呼び出されること多かったじゃない? だから……偉い人に会うの慣れちゃってるのかも」

「……慣れるものなの、それって」

「多分?」

 アルミルおじいちゃんが"四柱魔導士"でも魔導のエキスパートでも、この国の国王はそれよりも偉いんだろう。
 そんな人と結構会ってるから、偉い人と会うありがたみが薄れているのかも。あんま緊張しない。

 なにより……アルミルおじいちゃんが世の中に四人しかいない"四柱魔導士"でも、私の師匠はそのてっぺんの"魔導賢者"なんだ。
 一番すごい人と暮らしてたんだから、それ以上に緊張することなんてない。

「クレアちゃんはビビり過ぎなんだよー。なにも取って食われやしないって」

「……その肝の据わり方、見習うべきかどうか悩むところね。
 いや、そんな域に行ったらもう戻れなくなる気がする」

 ぶつぶつとなにかを言っているクレアちゃん。
 まったく、ルリーちゃんに刺々しかったあの態度を少しは出せばいいのに。

「それに、相手は凄腕の魔導士かもしれないけど、ナタリアちゃんのおじいちゃんだよ? お友達として挨拶するだけでも、変なことじゃないでしょ」

「……ちょっと待って。ナタリアちゃんとアルミル様ってそうなの? いや、カルメンタールって同じだからそうじゃないかとは思ってたんだけど」

 おっと、口が滑ってしまった。いかんいかん。

 ともかく、そうやって話している間に、舞台の近くへ。
 とりあえず、裏へ回ってみましょ。

「お疲れ様でした、アルミル氏」

 裏へと回っていく……その最中、声が聞こえた。タメリア先輩のものだ。
 やっぱり、こっちで合っていたみたいだ。

「いや、私などの力でよければ、いくらでもお貸ししよう。もっとも、私でなくても誰にでもできることだ。こんなおいぼれでも、必要としてくれるならばありがたいがな」

「そんなご謙遜を。アルミル氏の代わりなんて他に居ませんよ……」

「こんにちはー」

「……」

 タメリア先輩とアルミルおじいちゃん、二人が話している中に、私はできるだけ元気な声を出して挨拶をする。
 私の後ろから、クレアちゃんが申し訳なさそうに出てくるのが見えた。

 二人とも、しばし目を丸くして……

「え、エランちゃん……?」

 驚いた様子で、タメリア先輩が私を見た。
 お、その表情珍しいね。なんかラッキーな気分。

 対してアルミルおじいちゃんは、私の顔をじっと見て……

「あぁ、あの時の。国王様に一目置かれている、エラン・フィールド殿……だったかな」

 どうやら、名前も覚えてくれていたようだ。
 この髪の色だ、特徴を覚えてもらっている自信はある。でも、名前も覚えてくれていたなんてね。

 ろくに自己紹介もしなかったのに、それだけ印象的だったってことかなー?
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