史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十章 魔導学園学園祭編

757話 きっと気のせい

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「リーフェル……」

 まだ聞いていなかった、女性の名前。
 にこりと笑って答えてくれたのは、もちろん彼女自身の名前。

 リーフェル……それが、彼女の名前だ。

「良い名前、だね」

「ふふ、ありがとう」

 私もにこりと笑って、言葉を返す。良い名前だと思ったのは、事実だ。

 だけど……なんだろう。この違和感。リーフェルという名前に、引っかかりを覚える。
 さっきスキンヘッド男たちを見かけた時に感じたような、あの気持ちと似ている。

 私、この名前に覚えがある……?

「エランちゃん、悪いけどこの方を外まで送ってくれる?」

「! うん、それはもちろんだけど……カルさんは?」

「ちょっと連絡入っちゃって。すぐに追いかけるから」

 カルさんは端末を見せつけた後、来た道を戻っていく。
 私は言われた通りに女性……リーフェルさんを、外まで案内することに。

 その間も、私はその名前が気になっていた。

「……あの、どうかしました?」

「へ?」

 あ、しまった。つい気になり過ぎて、見つめすぎちゃってた。
 ううん……

「いやあ……私たち、どこかで会ったことなかったかなぁって」

 考えた結果、見ていた理由を正直に話すことにした。
 別に変な意味じゃないし、笑いながら言えば変にも思われないだろう。

「やだ、なんの口説き文句ですか?」

 ぷっ、と吹き出すように笑うリーフェルさん。
 ほら、あんまり深刻にならずに済んだ。

「私は、初対面だと思いますけど……というか、エランさんのような特徴の人と会ったことがあったら、私は忘れませんよ」

「ですよねぇ」

 結局、私の勘違い……ってことか。
 リーフェルさんの方がなんらかの理由で隠してる、なんてことも考えたけど……私の方にも、見覚えはないし。

 黒い瞳の人なんて、印象に残るはずだ。
 もちろん、今みたいに瞳の色を変えてた可能性もあるし……

「リーフェルさんって、この国の人?」

「いえ、この国に来たのは少し前です。いろいろあって、旅をしてまして」

 旅、か。じゃあやっぱり、私の気のせいかな。
 この国の人なら、どっかですれ違ったなんてこともあるかもしれないけど。

 そうやっていろいろ話したり考えているうちに、校舎の外へと出た。

「ありがとうございました、わざわざ案内してもらって」

「いや、これもお仕事ですから」

「ふふ。では、この後もお仕事頑張ってくださいね」

 もうこれ以上一緒にいる理由もなし、ここでお別れかぁ。
 少し寂しいけど、しょうがない。私が生徒会のお仕事じゃなかったら、この後一緒に回ろうと誘うことも出来たけど……

 いやいや、相手だってこのまままた回るのかわからないし、もう帰るのかもしれないし。
 だいたい、会ったばかりの人と一緒になんて、なんか図々しい感じするよね。

 私ってば、なんでこんなことを思ったんだろう。

「リーフェルさんも、もう変な人に絡まれないように気を付けてね」

 こういうのって気を付けてどうにかなるもんなんだろろうか……そう思いながらも、私は手を振っていた。

「はい。それでは……」

「エランさぁん!」

 リーフェルさんも手を振ってくれて、お互いにばいばいをしている最中……私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
 見れば、手を振りながらルリーちゃんが走って来ていた。

「あ、ルリーちゃん」

「! ……それでは、ありがとうございました。私はこれで」

「あ、うん……じゃあ」

 急いでいたのだろうか。なんか、ちょっと慌てて行ってしまったな。
 その背中を見送っていると、隣にルリーちゃんがやってくる。

「エランさん、ここでなにを? も、もしお暇なら一緒に……」

「あー……今生徒会のお仕事してるんだよね。ほら」

 ルリーちゃんからの申し出はありがたいけど……私は腕を見せる。
 生徒会の腕章が付いている。これで、今は仕事中だと示しているのだ。

 それを見たルリーちゃんは、しゅんとしてしまった。

「そうですか……」

「ごめんねぇ」

「い、いえ! エランさんは悪くないので!」

 さすがに一日中ってわけじゃないから、タイミングが合えばルリーちゃんと回ることはできるかもしれないけどね。
 なんにしても、まだ仕事中。放り出すわけにはいかない。

「ところで……先ほどまで、誰かと話していたんですか?」

「あ、うん。そうなんだ」

 さっき走って来ていたルリーちゃんは、私が誰かと話しているのを見たらしい。
 やっぱりエルフ族っていうのは、目がいいんだなぁ。

 私はなんとなく、リーフェルさんが去っていった方向を見た。

「今生徒会のお仕事でね。変なスキンヘッドに絡まれてた女の人を送っていったところなんだ」

「……変なスキンヘッド、ですか」

「うん。いやあ、きれいな人だったな」

 さすがに、もうリーフェルさんの姿は見えない。
 あの人だかりの中じゃ、また見つけるのも一苦労だ。

 私はルリーちゃんの方を見直すと……ルリーちゃんは、人だかりの中をじっと見つめたままだった。

「どうかした?」

「…………いえ、きっと気のせいです」

 それだけ言って、ルリーちゃんはにこりと笑った。
 なにが気のせいなのかは、わからなかったけど……気のせいなら気のせいってことでいいんだろう。

 その後、ルリーちゃんとは別れ……戻ってきたカルさんと、見回りの仕事に戻っていく。
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