828 / 1,198
第十章 魔導学園学園祭編
815話 たとえつらい過去でも
しおりを挟む「不思議な……感じ……」
頭を押さえるリーフェルさんは、ルリーちゃんを見て不思議な感じがすると……懐かしいと、そう言ったのだ。
それを受けてか、ルリーちゃんが立ち上がる。
「ルリーちゃん?」
今のルリーちゃんは、見慣れたフードを被った姿ではなく……フードを脱ぎ、銀色の髪を、尖った耳を、褐色の肌を……緑色の瞳を、露わにしている。
そんなルリーちゃんは、座ったままのリーフェルさんの隣へと経つ。
そして、身を近づける。
「あ、あの……?」
「……やっぱり、似てる……ううん……似てるって言うよりも……」
まるでリーフェルさんの顔を観察するようなその様子に、私たちはなにも言えなかった。
ルリーちゃんがここまで積極的に自分からやっているんだ。事の成り行きを見守りたい。
ぶつぶつとなにか呟いていたルリーちゃんは、数秒して身体を離す。
「エランさん……やっぱりリーフェルさん、私の知ってるリーフェルさんだと思います」
そして、さっきまで自信のなさげだった震えた様子はなくなり……どこか自信を込めて、言ったのだ。
「だから、それはありえないわ。リーフェルさんは人間で……」
けれど、種族の問題がある。だからそれは違うと、クレアちゃんが口を開くけど……
「はい、クレアさん……それは重々承知しています。でも、そうとしか……本人だとしか、思えないんです」
「……」
一番の問題である、エルフと人間の違い。これが違う以上、それぞれ本人であるはずがない。
でも、ルリーちゃんはそれを分かった上で……
「確かに、エルフであるという魔力は感じませんし、見えません。見た目だけの問題でなく、間違いなく人間です」
ルリーちゃんの"魔眼"は、相手の体内に流れる魔力を見ることが出来る。魔力ってのは、種族ごとに違うものだ。
だからいくら姿を変えても、魔力まで変えられない以上ごまかしようはない。
リーフェルさんは、エルフではなく人間の魔力を持っていると……ルリーちゃんは話す。
「なら……」
「リーフェルさんは、ハーフエルフでした」
「!」
そういえば、そんな話をしていたな。ルリーちゃんの記憶だと、リーフェルさんって人はエルフと人間のハーフで……そのせいか同族にも嫌われ、ダークエルフの村にたどり着いたってことだ。
エルフ族の扱いを思えば、人間にどう思われていたか……そして、人間をどう思っていたか。
だからなのかな。人間の血も引いているから嫌われてたのは。
「ハーフ……でも、それが?」
「わかりません。わかりませんけど……あの一件のあと、なんらかの理由でエルフの力を失ってしまって……それで、今は人間になってしまったとは考えられないですか?」
それは、ルリーちゃんの想像でしかない。
だけど……絶対にない、とも言いきれない。あり得ないと断言するには、私たちは世界のことを知らなさすぎる。
まして、私はただでさえ世間に疎いんだから。
「うーん……いや、私だって別に意地悪で言ってるんじゃないのよ。ただ……リーフェルさんが、あんたの知り合いだと確証がないのに決めつけちゃうっていうのは、もし違ったってなったらあんたががっかりするんじゃないかって……」
「おぉ……クレアちゃん、ルリーちゃんのことを考えて!?」
「クレアさん……」
「! い、今のなし」
照れるクレアちゃんだけど、クレアちゃんの言うこともわかる。
期待して、もし違えば……期待しただけ、がっかり具合は大きくなる。
でも……期待しなきゃ、なにも始まりもしない。
「ありがとうございます、クレアさん。私のこと、考えてくれて」
「……別に」
「ただ……私は、可能性に賭けてみたいんです」
ルリーちゃんは、じっとリーフェルさんを見た。
かつて、故郷を奪われ……家族を、友達を、仲間を奪われた。お兄さんのルランや幼馴染のリーサのことも死んだと思っている。
だから……ルリーちゃんにとって、もしリーフェルさんが生きていたとしたら、それはどんなに嬉しいことだろう。
ダークエルフとエルフ……ううん、ハーフエルフだったとしても、二人は仲が良かったんだから。
「あ、そうだ……あの、り、リーフェル、さん……」
「なにかしら?」
そこで、ルリーちゃんがなにかを思い出したようにリーフェルさんに問い掛ける。
「……リーフェルさんは、昔のことを思い出したいと、思いますか?」
……それは、忘れている自分の記憶を思い出したいか、というもの。
今まで、こっちで勝手に盛り上がっていたけど……重要なのは、リーフェルさんの気持ちだ。リーフェルさんに過去のことを思い出す気持ちがあるのか、ないのか。
私のように、別に思い出したくない場合もある。その場合、リーフェルさんの過去を探ろうとしている私たちは、はっきり言って邪魔だ。
だから……もしリーフェルさんが迷惑だと言うのなら、ルリーちゃんには悪いけど……
「そうね……考えたこともなかったけど。……自分が何者か、か。
もしかしたら、あなたと私は友達だったのかもしれないのよね?」
「友達……は、はい! 友達でした、リーフェルさんとは……」
「だったら、思い出したいかな」
少し考えるようなそぶりを見せた後……リーフェルさんは、にこりと笑った。
それは、ルリーちゃんと仲良くしていた過去があるなら、それを思い出したいと……そう感じてくれたのだろう。
……ただ、ルリーちゃんとの関係、自分が何者かってことを思い出すってことは……
「それが、たとえつらい過去でもですか?」
……私が考えていたことを、そのままルリーちゃんは口にした。
過去を思い出すってことは、嬉しいことも嫌なことも……全部思い出すってことだ。
……自分が何者であるか、知るって言うのは……そういうこと、なんだろうな。
11
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。
敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。
結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。
だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。
「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」
謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。
少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。
これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。
【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
テーラーボーイ 神様からもらった裁縫ギフト
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はアレク
両親は村を守る為に死んでしまった
一人になった僕は幼馴染のシーナの家に引き取られて今に至る
シーナの両親はとてもいい人で強かったんだ。僕の両親と一緒に村を守ってくれたらしい
すくすくと育った僕とシーナは成人、15歳になり、神様からギフトをもらうこととなった。
神様、フェイブルファイア様は僕の両親のした事に感謝していて、僕にだけ特別なギフトを用意してくれたんだってさ。
そのギフトが裁縫ギフト、色々な職業の良い所を服や装飾品につけられるんだってさ。何だか楽しそう。
無能と蔑まれ敵国に送られた私、故郷の料理を振る舞ったら『食の聖女』と呼ばれ皇帝陛下に溺愛されています~今さら返せと言われても、もう遅いです!
夏見ナイ
恋愛
リンドブルム王国の第二王女アリアは、魔力を持たない『無能』として家族に虐げられ、厄介払いとして敵国ガルディナ帝国へ人質に送られる。死を覚悟した彼女だが、あまりに不味い帝国の食事に耐えかね、前世の記憶を頼りに自ら厨房に立つことを決意する。
彼女が作った温かい家庭料理は、偶然離宮を訪れた『氷の皇帝』レオンハルトの孤独な心を癒していく。やがてその味は堅物騎士団長や宰相をも虜にし、食べた者を癒す奇跡から『食の聖女』と讃えられるように。
価値を知った故郷が「返せ」と言ってきたが、もう遅い!
これは、料理で運命を切り開き、最強皇帝から世界一甘く溺愛される、美味しい逆転シンデレラストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる