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第十二章 中央図書館編
926話 これが天才肌
しおりを挟む「ふわぁ、よく読んだぁ」
中央図書館の外へ出た私は、大きな欠伸をしながら背筋を伸ばす。
文字ばかり読んでいて疲れはしたけど、内容が内容だけに眠くなることはなかったな。
知りたいことも調べられたし。まさか今日だけで、一通り調べられるとは思っていなかったけどね。
「これからどうしよっかな……」
外はもう暗くなり始めている。どうしようもなにも、学園の寮に帰る一択しかないわけだけど。
まだ時間はあるし、せっかくここまで来たんだからどっか寄っていきたいよなぁ。
まあ、どこへ寄るんだって話ではあるんだけど。
「せっかくだから、ご飯でも食べていこっかな」
いつもの食堂のご飯でもいいが、せっかくだ。外食もいいだろと考えた私は、近くにおいしそうなお店がないか散策する。
この国に来たばかりの頃、クレアちゃんに案内してもらったことを思い出すなぁ。今じゃ私もすっかり道に慣れたもんだよ、多分。
さあて、どっこかいいお店はないかなぁ。
「あれ、エフィーちゃん?」
「ん?」
背後から聞こえた、知った声。そして、この特徴的な呼び方。
振り返ると、そこには……
「コロニアちゃん」
「やっほ」
やっぱり、コロニアちゃんだ。この国の第一王女である彼女が、なんでここに?
まあ、休日に誰がどこにいても不思議じゃないけどさ。
……後ろから出てきたってことは……
「もしかして、中央図書館に?」
「そうだよりもしかしてって、エフィーちゃんも?」
「うん」
なんと、コロニアちゃんも中央図書館にいたのだという。
うーん、見かけなかったけどな……って、別に限定区域に入れる王族だからって、そこにいたとは限らないか。
あの広い一般区域で、居るとも思っていない人を見つけるのは至難の業だし。
「へぇ、エフィーちゃんが調べ物かぁ」
「なんか言いたそうじゃのう」
歩き、隣に並ぶコロニアちゃんが私の顔をじっと見つめた。
相変わらず王族としては覇気のない雰囲気だ。まあ、代わりに親しみやすいんだけどね。
それに、親しみやすいのは中身だけの話じゃない。ふわふわのブロンドヘアーは思わず触りたくなってしまうし、タレ目は保護欲をかきたてる。もふもふの耳に丸っぽい尻尾……うん、もふもふしたい。
「……」
「どうしたのエフィーちゃん」
なにより……スタイルが抜群だ、出るとこは出て締まるとこは締まっている。いやはやなんとも……
「えぇ身体してまんなぁ」
「……」
あ、やべ声に出てた。
さっと胸を隠し、距離を取るコロニアちゃん。さすがの彼女も、こんなストレートに言われては恥ずかしがってしまうようだ。
「あはははは、まあまあ気にしないでよ」
「……それエフィーちゃんが言う台詞じゃないよね」
ともかく、ここでコロニアちゃんと会えたのもなにかの縁だ。
「ね、一緒にどこかでご飯食べていこうよ」
「……いいよ」
わーい。普段こうして話す機会も多くはないし、せっかくだからいっぱいお話しよう。
私たちはおいしい料理点を探しながら、話を続ける。
「クラスが違うとなかなか話ができないよねー。それにコロニアちゃんは人気だから、いつも周りに人がいるし」
たまに教室の中を覗いても、いつも周りには人がいる。主に女の子が。
ナタリアちゃんやサリアちゃんと同じクラスだし、みんな仲良くしているのだろうか。
友達と友達が仲良くしてると、私も嬉しいしね。
「そうかな? というか、人気で言ったらエフィーちゃんの方でしょ……いつも、誰かしら侍らせてる」
「言い方!」
「エフィーちゃんは、人を引き付ける不思議な魅力があるから」
お、おぅ……不思議な魅力か。そんなん言われたら、照れちゃうなぁえへへへ。
確かに、私はわりと誰かと行動することが多いもんな。教室、お昼、放課後……いろんな子と接する機会がいっぱいあるのは、いいことだ。
ま、私としてはもっと多くの子と絡んでみたいんだけどね!
「エフィーちゃんの噂は、クラスが違ってもよく聞く。魔導の実力はすでに、一年生の範囲じゃないって。私もそう思うし」
「え、えへへへどうしたのさ、そんな急に褒めちゃって。そんなに褒めてもなんにも出ないからね。あ、キッスしてあげようか?」
「いらない」
ふるふると首を振るコロニアちゃん。つれないんだから、もう。
別に唇にしようってんじゃないんだから。
「でも、魔導の実力で言えばコロニアちゃんだって。魔術の無詠唱なんて、コロニアちゃんくらいしかできないよ?」
魔導の実力……これは本気でそう思ってる。
魔術の無詠唱発動。これができる人間は、ほんの一握りに限られている。
私はもちろんだし、あのゴルさんだって無詠唱魔術はできないのだ。というか、他に使える人を見たことがない……
……師匠は、どうだったかなぁ。無詠唱魔術の存在は教えてくれたけど、自分ができるかどうかまでは……
「魔術は、精霊さんの力を借りて放てるもの。魔術を使うのだって、精霊さんと仲良くならないといけないのに……無詠唱なんて、もうよっぽど仲がいいってことだよ」
「……そう、なのかな。物心ついたときから、魔術は使えたからあんまり意識したことはない」
「かぁーっ、言ってくれるねー!」
これが天才肌ってやつなのかねー!
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