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第十二章 中央図書館編
951話 一人じゃないだけでも
しおりを挟む「……ふぅあー……」
「すまなかったな、無理を言って」
地下室から出てきた私は、思わずため息を漏らしていた。なんかどっと疲れてしまった。
その理由は、エレガたちと話していたことやあの閉鎖的な空間に居たことも関係しているんだろう。
ゴルさんからの労いをもらい、私は首を振る。
「ううん、大丈夫。私こそ、あんまり役に立てなくてごめんね」
「お前が気にすることではないだろう」
ゴルさんから質問をぶつけても、エレガたちは適当にはぐらかすだけだ。
なので間に私を挟むことで、スムーズに話させる。それ自体は成功したんだけど。
期待していた答えはなかったというか。まあなにを期待していたんだって言われればそうなんだけど。
「ゴルさんだって忙しいのに、あんまり手掛かりになること知れなかったねー」
「お前を呼んだのは俺なんだし、そこを気にすることはない」
いろいろと聞いてはみたけど、全部曖昧なものだ。
お前たちはどこから来た→異世界。お前たちの目的はなんだ→暇つぶし。誰か裏にいるのか→誰にも従わない、などなど。
知っているような情報や、大したことのないものばかりだ。
「それで……エラン、奴らと話していた別の世界というのは……」
広間へと戻る最中、ゴルさんは私に聞いてくる。
結局、そのへんの話もゴルさんには流れで聞いてもらってたからな。わからないのも無理はないだろう。
……ゴルさんなら、まあ話しても問題ないがな。信じがたいような話ではあるけど、呑み込み力は強いわけだし。
「実はね……」
とりあえず、私の知っていることを話した。本で得た情報も含めて。
こことは別の世界があること、エレガたちだけでなくヨルやマヒルちゃんもその世界から来たこと、黒髪黒目の人間の特徴が別の世界出身だということ……
詳しくは、ヨルとかに直接聞いてみればまたわかるんだろうけど。
「……やはり、にわかには信じられんな。だが、こんなときにお前がふざけるとも思えんしな」
「こんなときって。私はいつでもお真面目ですよー?」
「…………それにしても、お前にしか見つけられなかった本か。それもまた信じがたい話ではあるが……」
「なんでスルーするの!?」
広間に戻り、その奥の部屋へと通される。
私もいいのだろうかと思ったけど、通してくれるなら遠慮せずに行こう。
室内は、生徒会室見ないな感じだ。広さも……広間に比べれば当然大きくはない。
あくまで、個室……プライベート空間って感じだな。
「ここは、国王専用の部屋、と言ったところか。誰でも通していいわけではないぞ」
「ってことは、それだけ私を信用してくれてるってことー?」
「あぁ、そうだ」
「……!」
も、もー、ゴルさんったら。そういう恥ずかしいことをさらっと言っちゃうんだから。
私だからまだいいものの、他の女の子にそういうこと言ったら勘違いさせちゃうよ。
「罪作りな人だなぁゴルさんは」
「なんの話だ」
それからゴルさんは椅子に座り、私はソファーに座る。
うわぁ、ふっかふかだぁ。いいなぁ。ほしいなぁ。
「それで、エラン。お前、あの男たちとなにやら因縁がありそうだったな」
「あー……」
鋭いなゴルさん……やっぱり、勘付いちゃうのか。
「そりゃあ、ほら。あいつらのせいで魔大陸まで飛ばされちゃったわけだし。魔大陸で戦うことになって、いろいろ因縁はできたってもんよー」
「にしては、魔大陸にまで飛ばされたその理由を聞いていなかったようだが?」
……私がなに聞いてなにを聞いていないかまで、もしかして覚えてるのかこの人は。
さすがに言えないよなぁ。あいつらの本当の狙いはダークエルフであるルリーちゃんで、私はその転移に巻き込まれる形になった、とは。
別の世界のことは、別に明かしても問題はないから話したけど。
何度も考えていることだけど、ルリーちゃんがダークエルフと結び付けられるのは避けなくては。
「それはまあ……いーぃじゃん細かいことは」
「まったく別の大陸に飛ばされてそれを細かいとはとても言えんが……ま、お前が話したくないならそれでいい」
ふぅ……ゴルさんてば、わたしにちょっと甘い所があるよね。まあそれが助かってるんだけどさ。
あいつらがルリーちゃんを狙ったのはダークエルフだから。そしてダークエルフを魔大陸に飛ばしたのは、孤立させたところで無惨に死ぬはめになったら面白いから……とか言っていた気がする。
魔大陸はダークエルフにとってはパワーアップする環境だけど……だからこそ、面白がっていたのかも。
どちらにしろ、ろくでもない。くそみたいな理由だよ。
「根掘り葉掘り聞かれなくて助かりますよ……」
「お前なら、必要と思ったことは話すだろう。とはいえ、抱え込みすぎて潰れてしまう前に誰でもいいから話せよ」
「はぁい」
なんか似たようなこと最近言われた気がするな。
確かに抱え込みすぎかもしれないけど……いいんだ、私は別に一人で抱え込んでいるわけじゃないから。
クロガネがいる。使い魔のクロガネになら、なんだって話せる……というか共有してるし。
特殊な事情は特殊な事情を知っている人にしか話せないけど、クロガネとならなんだって話し合うことが出来る。
一人じゃないだけでも、だいぶ楽だよ。
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