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第十二章 中央図書館編
954話 年相応の顔
しおりを挟むかりかりかり……と室内にはペンを走らせる音が響いている。
それはゴルさんが資料に文字を書いているために出ている音だ。この部屋は王の間の奥にあるけど、窓もちゃんとある。
窓の外から見える景色は、なんともきれいだ。お城からの眺め……それも国王専用の部屋ともなれば、窓から見える景色も一流だ。
「この部屋、いろんな本があるんだね。見てもいーい?」
「構わんが、あまり荒らすなよ。というか、中央図書館の限定区域にまで行ってきたなら、この部屋にあるものはそう珍しくもないと思うぞ」
「……実は王族にのみ伝わる秘伝の書なんてあったりして?」
「あったとして、いくらお前にも見せることはできないな」
「ですよねー」
とりあえず許可をもらったので、部屋の中を見て回ることにする。
国王専用だから豪華ではあるものの、部屋は部屋だ。そこまで目を見張る者もない。
本棚には、いくつかの本が並んでいる。サライアちゃんの家もそうだったけど、お偉い人っていうのは結構な本を持ってるものだなぁ。
師匠もいくつかは本を持ってたもんなぁ。
とりあえず拝見……うーん、難しそうな歴史書ばかりだぁ。
「私歴史とか興味ないー」
「自分で見てもいいか聞いておいて……!
……ま、王族としての教養の一部だ。国を背負う存在である以上、国の歴史も知っていないといけないからな」
「……偉いなぁ」
私、魔導のことならいくらでも本は読めるけど……歴史のこととか、そういったことは苦手だぁ。
そういえば、学園祭の巨大迷路でも歴史に関する問題が出たりしたな。あのときはまったくわからなくて苦労したもんだよ。
少しくらいは知っておいたほうがいいのかしら。
「あ、でも私でも知ってることあるよ。確か、ゴルさんたちの名前についてるラニって名前は初代の王様なんだよね」
「……そうだな」
ゴルさんの本名、ゴルドーラ・ラニ・ベルザ。コーロランやコロニアちゃんにも同様にその名前がついている。
ラニってのはこのベルザ国の始まりの王族の名前なのだ。ゴルさんたちはそれを代々継いでいる。
その人は、ベルザ王国が名前もない国だった頃の、始まりの王様と言われてたとか。つまりはこの国を最初から作ったってことだ。
「初代国王、ラニ・ベルザ。一代にして、この国をベルザ国として栄えさせ、さらにその名を他国へと知らしめた……伝説の王と言われている。書物には、そういった記述もあるぞ」
「ほぇー」
私にはよくわからないことだけど、それでも一代で国を国として発展させたというのはすごい。ということはなんとなくわかる。
そしてその人の名前を代々受け継いでいるゴルさんは、この国をさらに発展させようと日々頑張っているわけだ。
それも、学業と両立しながら。すごいや。
「大昔中ドラゴンと契約したっていう魔導士、その人だったりしてー」
「ふ、ありえない話ではないな」
それからしばらく、ゴルさんとは話をして盛り上がった。
まあゴルさんはお仕事中なので、私が一方的に話しかけてゴルさんが答える……というのが主ではあったけど。
ただ、いつまでもお邪魔しているのも悪いので。そろそろ帰ることにしよう。
「それじゃ、私そろそろ帰ろうかな」
「ん、そうか」
用意してもらった紅茶はすっかり飲み干して、お菓子もほとんど食べてしまった。いやぁおいしかったおいしかった。
ゴルさんの力になれたかはわからないけど、今日ここに来れてよかった。
「送るか?」
「いや、ゴルさんも忙しいだろうし、一人で大丈夫だよ」
「そうか。では、またな」
「うん、またねー」
挨拶を交わしてから、私は部屋を出る。
王の間ではちょうどジャスミルのおじいちゃんがいて、私と目が合う。
軽く会釈されたので、私も会釈を返す。
「お帰りですか?」
「うん、ゴルさんも忙しそうだし」
ちらっと部屋に振り返る。
それを見てジャスミルおじいちゃんは、少し笑ったような気がした。
「?」
「いや、失礼。エラン殿と話しているときのゴルドーラ様は、とても楽しそうに見えるもので」
「楽しそう?」
私は首を傾げた。楽しそう……かな?
私にはいつもと同じ表情に見えるんだけど。そりゃたまに笑う時はあるけど。
「はい。ああ見えて、いろいろ抱え込んでいるのですよ」
……立場的にも、そうなんだろうな。昔からゴルさんを見てきただろうジャスミルおじいちゃんが言うなら、多分間違いない。
ゴルさんはそれを外には出さないだけで。
「なのでこうして、と心を許せる友人と話されているときは、年相応の表情になっているのです」
「私よりも、リリアーナ先輩たちのほうが適任な気もするけど」
「リリアーナ殿たちは、それぞれ気軽に来れる立場ではありませんから」
ま、そりゃそうかもね。お城なんて、貴族でも気軽には来れない。
私は……まあ、呼ばれたわけだし?
「なのでこうして、たまにでもゴルドーラ様に会いに来てくださると嬉しいです」
「……そっか」
ゴルさんが、忙しいのに学園に足を運ぶ理由は……もしかしたら、自分でも学園にいるとリラックスできるとわかっているからかも、しれないな。
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