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第十二章 中央図書館編
965話 全然物足りない
しおりを挟む驚くべきことが起こった。分身魔法により私は同時に、両側から魔術をぶつけた。
それをオートラインさんはその身一つで受け止めた。性格には受け止めきれてはいないけど……それでも、受けきったとは言えると思う。
さすがに身体はボロボロで、さっきみたいに拳一つで魔術を打ち砕くとは言えない。
でも、二発の魔術を食らって、まだ立っていられるのはすごい。それが、段階的に高めた身体強化の魔法の力か。
まだ見たことのない戦い方をする人に、私は圧倒されていた……のだけど。
「ははははははぁ!」
どうやら私は、オートラインさんの変なスイッチを押してしまったらしい。
血を流し、服も所々破れてぼろぼろな姿のまま、私に迫ってきた。
「俺のものになれエラン・フィールドォオオオオ!!」
「ひ、ひぃ!?」
逃げよう……にも、魔術に耐えうるくらいに強化された身体だ。到底逃げ切れないだろう。
ていうか、魔術食らってなんでまだこんな元気なのさ!?
「お、お気持ちはありがたいけど、ごめんなさぁい!」
私は自分に身体強化の魔法をかけ、繰り出される拳をかわしていく。
……んだけど。は、早い……!
「ははははぁ!」
「っ!」
なんとか避けられ直撃は避けられても、完全に避けることはできていない。
髪の毛の先や頬に拳がかすり、切れた部分から出血してしまう。
直接くらったわけでもないのに……掠っただけで、これか!
「わっ、ちょ、あぶな!」
「ははぁ、ギリッギリでかわしやがる! やべぇ、やべえな!」
「かわし、きれてないって……の!」
見て反応して身体を動かしていたんじゃ、間に合わない。だから、目で見るんじゃなくて……本能で、感じろ。
あぁ、こうしてると、ゴルさんに言われたこと思い出すな。私には、対人戦経験が少ないって話。
学園に入学してから、いろいろあった。そのおかげで、なんとか反応出来てるって感じだ。
でも……
「おらぁ!」
「!? げはっ……」
拳にばかり集中していたから、突然腹部に走る衝撃をもろにくらってしまった。
そこにはオートラインさんの蹴りが食い込んでいて、私を後方に吹き飛ばす。
なんとか着地は出来たけど、うまく立てずに片膝をついてしまう。お腹を押さえる。
「ぅ……かはっ、は……お、女の子のお腹、蹴り上げるとか……」
「あぁ? なんか言ったか?」
あー、これ……やっぱ完全にハイになっちゃってる。テンションあがりすぎて、おかしなことになってる。
「魔法、魔術……それらを駆使して様々な戦略で向かってくる。力押しのバカってだけじゃなく、頭もそれなりに回るみたいだな」
「ばっ……バカ、は、余計……」
回復魔術で、お腹の痛みを和らげていく。これ、内臓にまで衝撃が届いてるんじゃないのか……わたしじゃなかったらヤバいことになってたぞ。
私がいろいろやっていくから、それでオートラインさんの気分も上がっちゃって……か。あれこれ私のせい?
あー、まだ全然物足りないって顔してるよ。
「……私もだよ」
私だって、全然満足していない。それどころか、身体強化では打ち負けて、魔術は砕かれて防がれて……
自分の力が、全然通じない。
こんなことされて、満足できるはずもない。むしろ、もっと……
「……へぇ、魔導大会で見たが、それがそうか」
ふと、オートラインさんは私を見てにやりと笑っていた。
魔導大会? いったいなんの……あ、そっか。
私の髪、白くなってるのか。それに、なんだか気分も昂ってきた感じがする。
「ははっ、まだまだ魅せてくれるじゃねえか、なぁ……っ」
「きひひ!」
私は飛び出し、ロケットスタートの要領でオートラインさんの眼前へと飛び出し、拳を繰り出した。
それをオートラインさんは手のひらで受け止める。触れ合った部分から、周囲に衝撃が伝わる。
うわぁ、これを受け止めるんだ。すごいすごい。
「っ……ただの身体強化じゃ、ねえな。魔力もバカみたいに上昇して、それどころか駄々漏れじゃねえか」
「あははっ」
受け止められたなら、仕方ない。私は受け止められた拳を開き、受け止めていたオートラインさんの手のひらに指を絡ませる。
そのまま、あっけにとられたオートラインさんの隙をつき、その場で軽くジャンプ。身体を一回転させ、オートラインさんの頭へと踵を落とす。
「!? がっ……」
やった、やっとまともな一撃を入れられた。あははは、やっぱり楽しいなぁ。
「っ、ぅ、らぁ!」
「おわっ」
ただ、その場で踏ん張ったオートラインさんは腕を振るい、私を乱暴に吹っ飛ばした。
突然のことに着地を忘れ、地面に背中を打ち付ける。「いてっ」と声が漏れた。
いいの入ったと思ったんだけどなぁ。気も失わないってか。
「お魔、その力……ちゃんと制御できてんのか?」
「へー? んー、まあ大丈夫だと思うよ。私は最強のエランちゃんだから! ぶい!」
「……元がああだから、真剣なのかちゃらけtんのかわからねえな。……まあいいか」
変なことを聞いてくる人だ。大丈夫だよ、ちょっとテンション上がっちゃってるけど、私はちゃんと私だもん。
……ぁ。
「"四段階目"……!!」
また、魔力の段階が上がった……てか、まだ上がるのか。どんだけ上があるのか……
って、腕から血ぃ吹き出てるじゃん。ヤバいんじゃない?
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