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暗殺者と第四王女
二話 暗殺の世界
しおりを挟む俺が、どこかの組織に所属した方がいいと……この男は、良心で言っているのだろう。さすがに、それくらいはわかる。
わかるが……
「まあ、何度も突っぱねられてんだ。今さら無理やり引き込もうとは思わないが……どこかの組織に身を置いた方が、安定するぞ。たとえばウチとかな、どうだ」
「たった今無理やり引き込むつもりはないと言ったのはどの口ですか」
デルビートの言うことは、おそらく正しい。そして俺が異常なのも、理解している。
普通……この場合暗殺の世界で普通なんて言葉が正しいかはさておいて、普通、暗殺の仕事をこなすとなれば、組織に属するのが定石だ。
組織に属していれば、定期的に組織に入ってくる仕事を貰い、成功すれば見合った報酬を受けとることができる。対して俺は、言ってしまえばフリーの暗殺者だ。仕事なんてまず入ってこないから、安定した報酬なんて受け取れない。
だからこうして、いろいろな組織を渡り歩き、そこで仕事を貰っている。紹介料を組織に払わなければいけないので、組織に属しているよりも貰える報酬は減る。
組織に属すか、フリーでいるか……どちらの待遇がいいか、明らかだ。フリーの暗殺者が仕事を貰おうとしても、まず無理だ。有能な人物ならばすでにどこかの組織にスカウトされ、厚待遇にその身を置く。
だからフリーの暗殺者なんて、門前払いを受けるのが当たり前だ。たまに、向こうの方から紹介してくる場合もある。が、やはり難しい……ただのフリーならば、な。
「まあ、お前の腕なら一人でも生活には困らんだろうがな。現にこうして、お前じゃないとこなせない仕事を渡しているわけだし」
「おかげで、なんとかやっていけてますよ」
自惚れるわけではないが、暗殺の腕で俺の右に出る者はそうはいないと思っている。こうしてフリーで生きていけているのも、そのためだ。
組織に属せば、基本その組織に来た仕事しか受けられない。逆にフリーならば、その決まりに縛られずに仕事を受けることができる。しかも、俺ならば今回のように難易度の高い仕事を貰えるから、紹介料を引いても報酬は割高だ。
どの組織にも顔が利き、出入りができる……その代わり、どこにも所属せず、どの勢力にも偏らない。そんな俺を、同業者たちは『はぐれ』と呼ぶ。
俺自身、贔屓にしているところなんてない。……と言いたいところだが、やはり"ここ"は別だ。
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