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ダンジョン創造者とダンジョン攻略者
最終話 必ずぎゃふんと言わせてやる
しおりを挟むさてと。ダンジョンに入ることができるランクになるため、クレアとパーティーを組むことにしたわけだが。
低ランクだから仕方ないとはいえ、やれるクエストと言えば薬草集めとか、木の実集めとか。
まあ危険が少ないものばかりだ。
塵も積もればなんとやら、という言葉がある。なので、こうしてクエストをこなしていけば、いずれはランクも上がる。
とはいえ、こんなことをいつまで続ければいいのだろう。
そもそも俺は、ただクレナイがダンジョンでぎゃふんと言うところを見たいだけなのに。
こんなことする意味なくないか?
「どうかしましたか、レイさん」
「いや……なんでもない」
クレアとパーティーを組んで、数日。今日も今日とて変わらぬクエスト。
果たしてこれでいいのだろうか。
「なあ、クレアはもっと、ぎゅんってランク上げたいとは思わない?」
「ぎゅん?
そりゃあ、早く上がればいいなーとは思ってますよ。でも、こういう地道な作業も大切だと思うんです」
「ふーん」
なんというか、クレアはとてもまじめな子だ。見ているこっちがまぶしくなるくらい。
こういう子を見ていると、まあ放っておけないなとも思ってしまうわけで。
「そういえば、レイさんってお姉ちゃんこと好きなんですか?」
「……はい?」
突然の言葉に、動きが止まる。それは、まったく予想もしていないものだった。
俺が、クレナイを、隙? いや、好き?
いったいなにがどうして、そんな話になるのだろうか。
「だってレイさん、お姉ちゃんのこと見る目が、他の人とは違うんですもん」
「……それは……」
この子……バカポンコツのくせに、妙なところで目ざといな。
俺がクレナイを見る目が、他とは違う……それは、確かにその通りだろう。そこは、否定しない。
しかし、そこに恋愛の情は存在しない。
恋愛関係がプラス要素だと言うのなら、俺がクレナイに向けているのはむしろマイナス要素だ。
なんとかして、俺の作ったダンジョンでクレナイをぎゃふんと言わせたい。俺のダンジョンをことごとくクリアしていくクレナイは、俺にとってむしろ憎たらしい相手だ。
俺がクレナイに向ける目が他と違うのは、そういう理由からだが……もちろんそんなことは言えないわけで。
「気のせいだろ」
「そうですかね」
「そうだ。だいたい、クレナイとはまだ数回しか会ってないのに、そんなこと思うはずが……」
「私がどうかしましたか?」
「!」
「あ、お姉ちゃん」
ふと、聞きなれた声がした。ダンジョンをクリアしていくクレナイのことを気にして、彼女ばかりを追いかけていたため、すっかりと聞きなれてしまった声だ。
振り返ると、そこには赤髪を揺らす女性の姿があった。
クレナイだ。
「なっ……どうして、ここに」
クレナイがいるなんて、まったくの予想外だ。先ほどの会話、聞かれていなかっただろうか。
なるべく平静を保つようにしなければ。
「実は、先ほどこの近くにできたダンジョンをクリアしてきたところで。今はその帰りです」
「! ダンジョン……?」
「えぇ」
なんでもないことのように言うクレナイ。その反応が、鼻につく。
クリアしてきたダンジョン……というのは、間違いなく俺が作ったダンジョンだろう。この近くにも、確かあったはずだ。
それを、クリアしてきただと?
しかも、クレナイは見たところ一人……こいつ、ソロでダンジョンをクリアしてきたっていうのか。
お、落ち着け俺。心を惑わせるな。落ち着いて、深呼吸を……
「わー、さすがお姉ちゃんだよ!」
「そんなことはない。わりと簡単なダンジョンだったし、それほど苦労もなかった。私でなくとも、クリアまでそう時間はかからないだろう」
……が、我慢だ。落ち着け俺……
「そうかなぁ。迷宮攻略者のお姉ちゃんだからこそって気もするけど」
「そ、その呼び方はやめてくれ。恥ずかしい」
……どうやら、クレナイにとって迷宮攻略者って異名は恥ずかしいものらしい。本人で名乗ったわけじゃないのか。
まあ、クレナイの功績を知った誰かが、勝手に呼び出して……それが広まったってところか。
それにしたって、この女……俺のダンジョンを、さも当然のようにクリアしやがって……
「こほん。クレアたちも、クエストか?」
「うん! 薬草採取だよ!」
なにが嬉しいのか、クレアはにこにこ笑っている。クレナイもこんな性格なら可愛げがあるのだけどな。
……いや、それはそれで怖いな。
「そうか、お疲れ様。進捗はどうだ?」
「えっとねー……」
「ちょうど終わったところだ。帰ろうぜ」
指定された数の薬草は、採り終えた。あとは、ギルドに完了報告をするだけだ。
カゴに薬草を入れ、それを持ち上げる。
クリアも同様に、立ち上がる。
ちなみに、二人分にわけているが、クレアのほうが量は少ない。
「うん! お姉ちゃんも帰ろう!」
「そうね。よろしいか、レイさん」
「俺に許可取らなくても」
そんなわけで、俺とクレアは、ダンジョン帰りのクレナイと共に歩き出す。
その間隣では、姉妹の仲睦まじい会話が繰り広げられていた。仲の良いのこでなによりだ……会話の内容が、ダンジョンでの出来事を振り返るものでなければ、素直にそう思えたんだけどな。
やれあのトラップが簡単だっただの、やれあのモンスターが弱かっただの……ダンジョンをまだ知らないクレアは興味深そうに聞いていたが、正直俺にとっては苦痛の時間だ。さっさと離れてしまいたかった。
「やっぱりお姉ちゃんはすごいね!」
「いずれクレアも、そうなれるさ」
なってたまるか。おのれクレナイめ……
二人の会話を……というか、クレナイの言葉を聞きながら、俺は改めて、決意を固める。
見ていろクレナイ。必ずお前を、俺の作ったダンジョンで、ぎゃふんと言わせてやる! と。
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