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転生魔王は友達を作る

デート中の二人と追う二人

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「うぅう……いい話だった」

「いつまで泣いてんのさ」

 デート中の、真尾とさな……
 その二人を追う、二つの影。

 その正体は、あいと流水だ。
 二人は、元々共に尾行しようなんて考えていなかったし、示し合わせてもいなかった。
 なのに、なんで一緒にいるかというと……

「目的の一致で行動を共にする……早まったかな」

 どうせ、さなも流水も目的は同じだ。
 ならば、こちらも行動を共にしたほうがいいのでは、というシンプルな考えだ。

 あいはうまく尾行できる自信があったが、流水はそうではない。
 見るからに怪しい尾行スタイル、いつ見つかってもおかしくない。
 その前に補導されてもおかしくない。

 もし流水が、真尾あるいは警察に捕まったとして、その後の真尾は警戒心が引き上がるだろう。
 今は、さなとのデートで警戒心も緩んでいるだけ……

「ぐふぅうう……」

「……」

 目の前で泣いている流水を、あいは冷めた目で見ている。
 これならば流水が見つかるリスクがあってでも、別行動していたほうがよかったかもしれない。

 現在、あいと流水はフードコート内にいる。
 理由は、ここで昼食を取っている真尾とさなを見張るため。
 そして、流水が泣いている原因はというと……

「男なのに、女々しいなぁ」

「うるせぇな、あんな感動的な映画に男も女もあるかよ。
 それに、お前は感動しなかったのかよ?」

「いや、したけど……」

 あいとて、先ほどの映画は感動した。切ないラブストーリー、ひっそり泣いた。
 今思えば、たまたま後ろの席が取れたからよかったものの、どうせ映画館の中で目立った動きはないだろうし、一緒に映画館に入る必要はなかった気もする。

 しかも、こいつと……
 映画の内容に感動というか感激し、今なお泣いているこいつのせいで、あいの涙はすっかり引っ込んでしまった。

「二人はうどんか……あれもおいしそうだ」

 泣いている流水は放っておいて、あいは自分で注文したカレーライスを食べる。
 辛口だ。あいは辛いのが好きなのだ。

 流水は、泣いているのに必死なので、なにも頼んでいない。

「なかなかいい調子みたい」

 二人の会話は聞こえないが、傍目から見ると、いい雰囲気に見える。
 さなも、微笑みながら応えているし、無理しているわけではないのがわかる。

 ふたりきりのデート、それは今のところうまくいっているようだ。
 それに引き換え……

「ぐすっ……」

「……」

 なぜ自分は、この男と行動を共にしているのだろう。
 尾行するためとはいえ、男女二人で行動している……

 これでは、まるで……こちらも、デートしているみたいではないか。

「すごく、不本意」

 あいはムッとしつつ、カレーライスを食していく。
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