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転生魔王は青春を謳歌する

嫌な予感

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「いやぁー、体育祭のときさ、会ったじゃん。
 そんとき、来たんだよね。こう、ビビビッと」

 闇野たちと別れたあと、教室に戻った俺は、鍵沼に話しかけた。
 小鳥遊をデートに誘った件についてだ。

 これまで鍵沼は、告白されることはあってもそれを断わっていたはずだ。
 まして、自分から女子をデートに誘うなど、なかった。

 それが、いったいどういう風の吹き回しで……
 それとなく聞いてみた結果が、これだ。

「ビビビ……」

「そう、ビビビッ」

 なんだろう……わかるような、わからないような。
 そんな俺の気持ちがわかったのだろう。鍵沼は言葉を続ける。

「うーん、多分、真尾が初めて如月さんを見たときの感覚、って言えばわかるんじゃないか?」

「なるほど」

 その説明であれば、わかりやすい。
 俺がさなを一目見たときの感覚……アレか。

 確かに頭の中に電撃が走ったような感覚があり、ここだ、となにかが訴えてきた。

「アレか」

「おう、多分アレだ」

 俗に言う、一目惚れ……アレと同じ感覚が、鍵沼にもあったというのだろうか。

「だが、どうやって小鳥遊に約束を取り付けたんだ」

 クラス自体は、体育祭の件でわかっているだろう。
 だが、クラスも部活も別である以上、直接会いに行くくらいしか方法はないだろう。

 まさか、いきなり別のクラスに突撃したりはしないだろうが……

「そりゃもちろん、さらさちゃんのクラスに行って本人に約束を取り付けてきたわけよ! 名前は調べりゃわかったし……
 さすがにお前みたいに公開で誘う勇気はなかったけどな」

 まさかだった。

「お前……」

「どうよ俺の行動力!」

 ドヤ顔を浮かべ、俺の行動力をアピールしてくる鍵沼。
 どうと言われても、すごいとしか言いようがないな……色んな意味で。

 だが、もしもさなが別のクラスだったら……俺はしょっちゅう、会いに行っていたことだろう。
 そう考えれば、別に不思議でもないか。

 もっとも、俺も同じことをする……とは口が裂けても言わないが。

「それはそれとして」

「まさかのスルー!」

 鍵沼からデートのお誘い……それだけでも、小鳥遊の胸はいっぱいになってしまっているだろう。
 それが、クラスにまでおしかけてきたとなれば、それはもう大変だろう。

 さすがにクラス全員の前で誘うということはなかったようだが……
 逆に考えれば、クラスから小鳥遊をどこかに誘い、二人きりの状況でデートに誘った、と。

 ……小鳥遊の様子が異様に変だった理由がわかった。

「で。デートの日はいつなんだ」

 先ほどは、小鳥遊にデートの日付を聞くのを忘れていた。
 そんな調子じゃなかったしな。

「週末だよ、土曜日」

 てことは、後二日か……
 心なしか、鍵沼はすでに嬉しそうだ。

「んん? なんで日付を……もしかして、お前も俺のデートが気になるから、尾行するつもりかー?」

「誰がするか」

「あはは。
 いやぁ、しかしかわいい女の子と買い物なんて、ワクワクするよな!」

 嬉しそうどころか、すでに鍵沼は浮かれている。
 なんか殴りたい。

 と、そこへ……

「いて!」

「バッカじゃないの、浮かれちゃって気持ち悪い」

 突如頭を押さえる鍵沼と、その後ろから聞き慣れた声。
 少し首を動かせば、そこにいる人物が見える。

 そこには、鍵沼の頭を殴ったであろう、あいの姿があった。

「てて……なにするんだ静海お前」

「なんかニタニタしてたから、気持ち悪くてつい」

「つい!?」

 ギャーギャーと言い争う二人を尻目に、あいの隣にいたさなは困ったように苦笑い。
 うん、困った顔もかわいい。

 それから、しばらくの間不毛なやり取りが続けられた。
 ただ……どちらかというとあいの方から突っかかっている感じだったが。

「あいのやつ、どうしたんだ?」

「さあ」

 さなにもわからないか……なら、俺にもわからない。

 しばらく二人の言い争いを眺めていたが、さすがにきりがないので途中で止めることに。

「はぁ、はぁ、なんだってんだよ……
 あ、もしかして俺に先を越されたのが悔しいのか」

「はぁ?」

「そうだよなー、お前デートとかしたことなさそうだもんなー。
 というか、真尾も如月さんもしてるよなー。寂しい奴め」

「なんだとこの!」

「どーどーどー。
 鍵沼も煽るな」

 暴れるあいを止め、鍵沼の頭を軽く叩く。
 どうもこの二人は、事あるごとに喧嘩するなぁ。

「えっと……鍵沼くん。さらさちゃんと、で、デートするんですか?」

 とりあえず落ち着いたところへ、さなが一歩前へ。
 さなも気になるところなのだろう。同じ部活の仲間なのだし。

 それを受けて、鍵沼は、なんとも腹の立つ顔でうなずいた。

「そーぉなんだよ。
 なんつーか、やるしかない! って思ったっつーかね」

 なぜか照れくさそうに話す鍵沼の姿に、さなは苦笑い。あいは不機嫌そうだ。
 俺も、驚いてはいる。小鳥遊が鍵沼を好きなのだから、デートに誘うとしたらその方向からだと思っていたのだが。

 なんにせよ、鍵沼から小鳥遊をデートに誘ったことは間違いない。
 小鳥遊には闇野がついているから、心配ないとは思うが……

 なぜだろう、とても嫌な予感がする。

「……」

 そして、その嫌な予感は……わずか一日後に、的中することとなる。
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