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死に戻り勇者、軌跡を辿る
これってデートのような?
しおりを挟む「…………」
「わぁー、すごい!」
現在俺は、王都を見て回っている。人の流れはそれなりに活発で、波に流されないよう、同行者と手を繋いでいる。
共に同行しているのは、リリー、そしてシャリーディア。シャリーディアは、休日ということもありいつもの神官用の服ではなく、私服だ。
桃色のセーターに、白いミニスカート。さらに頭には、ニットの帽子を被っている。かわいい。スカートから覗く白い脚が、否応なく俺の視線を誘導してくる。
そして、それは道行く男たちも同じ。まあ、シャリーディアの場合その容姿がすでに、人を惹き付けるものなのだが。
「リリーちゃん、そんなにはしゃいだら危ないわよ」
そんなシャリーディアは、リリーと手を繋いでいる。そして、リリーの反対側の手は、俺と繋がっている。
つまりだ。俺とシャリーディアが、それぞれの手をリリーと繋いでいるというこの状況だ。俺たちの間にいるリリーは、まるで子供のようで……
これでは、子連れの夫婦、と見られてしまっても、おかしくはなくもなくもないのではないだろうか?
「あの、似合って、ますか?」
「へ?」
わいわいとはしゃぐリリーの面倒を見つつ、シャリーディアが聞いてくる……似合っているか、と。それは、今着ている服のことだろう。
正直、かなり似合っている。それに、いつも神官用の服しか見ていないため、私服というだけで印象ががらりと変わるものだ。本人にそのつもりはないだろうが、変装しているといってもわからない。
「もちろん、似合ってるよ」
「! そうですか、よかったぁ」
と、正直な感想を述べると花が咲いたような、笑顔を見せてくれる。うん、かわいい。
先ほどから、チラチラ視線を感じるし。シャリーディアは、目立つ……だが、それは神官用の服を脱いでも同じようだ。
結局のところ、シャリーディアという人物が目立つのではなく、とんでもない美人だから目立つのだ。人々の視線が向けられることに、変わりはない。
本人は、視線に慣れているのか、それとも鈍感で気づいていないのか……気にして、いないようだが。
「ふたりとも、早く早く!」
「わっ、引っ張るなって」
「ふふっ、元気だね」
リリーがはしゃぐおかげで、初めのうちこそ緊張していたが、次第に緊張はなくなっていった。もちろんリリーは、別に俺の緊張をほぐそうと考えているわけでは、ないだろうが。
俺としても、体感で久しぶりの王都だ。国から旅に出て一年、そして戻ってきて殺され、その後過去に戻った。なので、リリーほどではないが俺も実はテンションが上がっていた。
人がたくさんいて、屋台がたくさんあって……気になる食べ物を見つけては、そこで買い、食べ歩きをする。別にお祭りでもないのに、まるでお祭りのような気分だった。
「たのしーね、ロア兄ちゃん、シャリー姉ちゃん!」
「そうね、楽しいわ」
リリーは、すっかり懐いてくれて、俺たちのことをお兄ちゃんお姉ちゃんと呼んでくれる。
俺には弟や妹はいなかったし、なんだかむず痒い感じだ。村では年下の子供たちに呼ばれることもあったが、会ったばかりの子に呼ばれるのはまた違った感覚だ。
「本当、楽しい……だから、この時間がなくならないように、私たちで頑張らないと」
「……」
シャリーディアは、自分たちの役目はこの時間を守るためにあると語る。俺たちがこのままなにもしなければ、人里は魔族に襲われ、人々が殺される。そんなことは、避けなければならない。
魔王が出現する三年後……どうやら、魔族は魔王が出現すれば出現するし、魔王が消えれば消えるようだ。だから、今はこうして待つことしかできない。
この時間を、人々の笑顔を守る……それこそが、俺が【勇者】を授かった理由なのか。その真意はわからないが、やるべきことはやる。その上で、殺されない未来を掴み取る。
「わぁ、あっちにもなにかある!」
「あ、まったく……ちょっと待ってリリーちゃん! ロアさん、行きましょう」
「あ、あぁ」
ふいに、リリーの手が離れた……かと思えば、シャリーディアの柔らかな手が繋がる。柔らかいし、温かい。
走っていくリリー、その後ろ姿を、追いかけていく。これじゃホントに、デートみたいだ。
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