死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、軌跡を辿る

新たな『スキル』

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 ……時間の経過というのは、存外に早いものだ。

 俺たちは、魔王を討つための旅に出るため、訓練を重ねていた。そのかいあってか、自分でも以前よりたくましくなったのではないかと思う。

 ゲルドもドーマスさんもミランシェもシャリーディアも、それぞれたくましく成長していた。それぞれが『スキル』とうまく付き合い、コンビネーションを育み、時には捕まえてきた魔物と戦う。

 魔物との戦いは、一対一のものから、実戦を想定しての多人数または多数魔物と、バリエーションを増やしていった。魔王復活が近づいているためか、捕まえてくる魔物の数も増えた。

 そう、あれからもう、三年の月日が経った。俺がこの国に来て、みんなと出会って……長いようで、あっという間だった。

 そして今日は、記念すべき日でもある。その理由は……


「……これが、『スキル』」


 そう呟くのは、十五歳になったばかりのリリーだ。今日ら彼女は『スキル』を授かった。

 頭の中に、あの声が聞こえたのだろう。不思議そうな表情を浮かべつつ、自分の手を開いたり閉じたりしている。


「リリーちゃん、おめでとう!」

「おめでとう、リリー」


 シャリーディアとミランシェが、我先にとリリーにお祝いの言葉を贈る。

 これでようやく、大人の仲間入り……そう理解したリリーは、照れたように笑っていた。その笑い顔は、以前のような子供っぽさを残しつつ、大人の色気のようなものがあった。

 背中まで伸ばした髪は、自分を大人に見せたいからだろうか。短い髪も似合っていたが、長い髪もこれはこれでありだ。それに、体も女性として確かに成長している。


「うんうん、なんかこう……妹の成長を見守る、兄貴ってこんな感じなのかな」

「なに言ってんだお前は」


 呆れたようにゲルドに反応されてしまった。ちょっと気持ち悪かっただろうか。

 国王やドーマスさんも、リリーを祝福している。国王はともかく、ドーマスさんは完全に親の顔になっている。


「しかし、ガキだガキだと思っていたが、なかなかいい女に育ったじゃねぇか。特にあの長く伸びた藍色の髪……ぜひとも愛でたいねぇ。男を知らない純粋な瞳ってのも、いい」

「お前こそなに言ってるんだ」

「冗談だよ」


 お前が言うと冗談に聞こえないんだよ。

 とにかく、リリーの成長具合も大切ではあるが、今気にするべきはそこではない。リリーが授かった『スキル』についてだ。


「おめでとうリリー。それで、『スキル』は……」

「ロア兄ちゃん。うん……声が、聞こえたよ。私の『スキル』は、【絶対防御】だって。お祖父様の言った通り」


 リリーの授かった『スキル』の名は、【絶対防御】。その名の通り、あらゆる攻撃を寄せ付けない、鉄壁の壁だ。

 その力は、おそらくは今リリー本人が考えているよりも、凄まじい。


「じゃあ、早速で悪いけど、その『スキル』見せてもらえるかな」

「わかった」


 俺たちはリリーから少し離れる。リリーは、目を閉じ集中力を高めていく。俺は【勇者】を得たとき、その能力の使い方がなんとなくわかった。

 リリーもそんな感じなのだろう。両手を前に出し、深呼吸を繰り返す。そして……


「えいっ」


 その掛け声と同時に、リリーを包み込むように、円状の壁が出現する。透明であるが、光の反射でそこに壁があると、わかる。


「おぉ、あれが……」

「【絶対防御】か」

「わ、わー!」


 驚くドーマスさんたちを尻目に、リリーはめちゃくちゃ喜んでいる。おそらく、初めて『スキル』を使用したことで、興奮してしまっているのだろう。

 よし、『スキル』の発動は、これで問題ない。後は、その性能を、本人に、そしてみんなに実感してもらうことだ。


「じゃ、次はその壁が本当に攻撃を弾くのか、確認させてもらわねぇとな」


 同じことを考えていたゲルドが、言う。【絶対防御】、その名に偽りがないのかを確かめる。

 問題は、なにを攻撃手段として確かめるかだ。ここは無難に、まずはミランシェの弓矢のような軽いものから、シャリーディアの精霊術と……


「ならその役目、私が引き受けよう」

「へ?」


 まずはミランシェに、頼もう……そう思っていたところで、意外な人物が名乗りを上げた。

 ……なぜか、ドーマスさんだった。
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