死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、軌跡を辿る

魔族vsコンビネーション

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「はぁはぁ、おのれぇ……!」


 上空に飛んだ魔族は、怒りに満ちた表情で俺たちを見つめている。

 どうやら、逃げるつもりではないようだが……そりゃそうか。見下していた人間相手に逃げるのは、プライドが許さないよな。

 もし逃げようとしたら、めちゃくちゃ煽ってやろう。


「私の魔力を防ぎ、この体にダメージを与えるとは……ははは、だが、ここまでは追ってこれまい! 人間は飛べないからな!」


 なぜか、高らかに笑う魔族。あいつ、上空でダメージを回復させるつもりか。

 というか……あいつ、上空なら安全だと、本気で思っているのか。


「はぁ……ミランシェ!」

「言われなくても!」


 こういう状況に備えて、遠距離にも対応できるミランシェがいるのだ。彼女は、弓矢を構え、魔族へと狙いを定める。

 その様子を見て、笑う者がいた。


「くはは! そんなものが、魔族に通用するわけがないだう! 届かぬとはいえ、浅はかな考えだな!」


 ……あいつ、本当に俺たちの情報なんにも知らないんだな。

 確かに、ただの弓矢に魔族にダメージを与えるだけの威力はない。……ただの弓矢なら、だ。


「はっ」

「いきます!」


 矢を放つ。その直後、シャリーディアにより精霊術の付与が開始。ただの矢は、炎を纏いし精霊術の力が加わった矢へと変化する。

 狙いは、もちろん魔族。


「バカな、精霊術だと!」


 途端に、焦った魔族は体を大袈裟に動かし、矢を避ける。

 矢は一直線にしか動かない以上、軌道を読みやすい。狙いがバレれば、それだけ避けるのも容易い。


「ふん、精霊術には驚いたが、当たらねば意味はない!」

「そうだな。……当たらなければ、な」

「なに……っ、か……!」


 不思議そうに首を傾げる魔族の顔が、驚愕に染まる。それもそのはずだ……完全に避けたはずの矢が、背中に刺さっているのだから。

 ただの矢なら、ダメージはないに等しい。だが、精霊術を付与してあれば、威力は段違いだ。


「バカな、矢が……曲がったとでも、いうのか!」

「まあ、間違ってはいないかな」

「なに……」


 ミランシェの【百発百中】、それは打ったものを視界にあるものなら、なんでも命中させることができるものだ。

 だから、魔族が避けた矢は、実際に曲がり、魔族の背中に命中した。見えていなければさすがに当てようもないが、見えていれば必ず当たる。

 普段ならばあり得ない、軌道の変化をも可能とする。


「く、そ……あつっ!」

「ただの炎でも、魔族に効果は薄い……やっぱり、精霊術は全然違うんだな」


 魔族の皮膚は、人間のそれとは全然違う。だから、人には危険な炎であっても、魔族にはたいした効果はない。

 しかし、精霊術は違う。精霊の力を借りた術……それは、いくら魔族でも簡単には防げない力を持っている。


「だが、こんなもので私を倒せるなどと……」

「あぁ。だから……もっと効果のある方法で、お前を倒す」

「もっと……!?」


 地響きが起こる……ような錯覚。それは、俺の後ろで【獣化】したドーマスさんが、天高くへと飛び上がったからだ。

 普通に人間がジャンプしても、到底届かない位置にいる魔族に、ドーマスさんは迫る。


「バカな、こんな巨体で、なんだその動きは……っ! くそっ、どうなって……!」


 眼前に迫るドーマスさんの姿に、魔族はその場を退こうとする。しかし、突如胸元を押さえ、その場に留まってしまう。

 背中に刺さった矢、その先端に纏った炎が魔族の体内を燃やし、魔族の動きを奪っている。体内を燃やす炎は、いくら魔族であっても耐え難い苦しさを感じているはずだ。

 精霊術だけでも魔族へダメージを与えられる。が、俺たちが狙っていたのは、そこからさらなる攻撃に続けること。


「ぬぉおおおおお!!」

「いかに獣の姿をしていても、人間ごときの拳が効へぶら!?」


 炎の苦しみにその場を動けない魔族は、ドーマスさんの拳を顔面に受け、思い切り地上へと吹き飛ばされる。

 なにか言っていた気もするが……魔族程度で、ドーマスさんの、【獣化】した拳を耐えられるわけがない。


「ぐ、ぅう……」

「あ、まだ生きてる」


 地面が大きくへこむほどの、強烈な一撃……それを受けてまだ、魔族は原型を留めていた。
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