死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、第二の人生を歩む

いい人たち

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「おじいちゃーん」


 第一村人エフィに案内された俺は、彼女に続いて一つの建物の中へと入る。その際、エフィは扉を開けると同時に中にいると思われる人に呼びかける。

 確か、村長のところに案内してくれるって行ってたけど……それで、呼びかけるのがおじいちゃんって、まさか……


「おや、どうしたエフィ」


 居間に座っていた、老人がこちらに目をやる。優しそうな男性だ、それにエフィを見る目があたたかい。

 エフィは老人に近づいていくと、そのまま抱きついた。ふむ、彼女は彼女で甘えん坊なのだろうな。


「あのね、紹介したい人がいるの」

「なんと! 男か? 彼氏か?」

「え、違うよ?」


 二人の会話。今のは、誤解されても仕方ない言い方だと思うぞエフィよ。

 エフィは、俺へと視線を向け、続いて老人も俺を見る。俺は、軽く会釈をして、返す。


「はじめまして、アーロと言います。その……」

「この村に住みたいんだってー」

「ほぉ? ええんじゃないかい」

「!?」


 とりあえず自己紹介、そしてこの村に住まわせてもらうための許可を……と言おうとしたところで、驚くべき早さで事が進んでいく。

 いや、早くね?


「えっと……いいん、ですか?」

「この村は、いろんなところから来た者を受け入れとるからな。余程の悪党でもない限り、断りはせんよ」


 老人は、抱きついているエフィを優しく退けて、立ち上がった。


「村長の、ヤタラじゃ。ここにるエフィの祖父でもある」

「よ、よろしくお願いします」


 ありがたいことではあるが、あまりにあっさり行き過ぎて拍子抜けだな。

 だが、ふとヤタラさんが俺を見つめているのに気づいた。それも、全身をだ。


「あ、あの?」

「ふむ、エフィが連れてきた子じゃ。悪い人ではないのじゃろう……じゃが、少々訳アリと見た」

「!」


 訳アリ……その単語に、反応してしまう。

 やっぱり、俺の事情を隠したままってのは、悪い気がするな。全員とはいかなくても、せめてこの人たちくらいには。


「別に、話したくなければ話さなくてもいいぞ?」

「いえ。これから住まわせてもらおうっていうんですから、正直に話します」


 そして俺は、正直に話した。【勇者】という『スキル』を持っていること、魔王を討つために旅をしていたこと、国の王子や仲間に命を狙われたこと、遠くへと逃げてきたこと……

 死に戻りしたことやマーチという男に魔王を討たれたことなど、複雑なことなどは除いて、全てをありのままに。


「え、じゃあ、アーロさんじゃなくてロアさん?」

「ごめん、いきなり嘘ついて。でも、ここではアーロの方で呼んでくれると、ありがたい」

「わかりました」


 俺の説明を受けても、二人とも驚きこそすれ、受け入れてくれた。

 うん、いい人たちだ。


「ほほ、ここに住む者たちには訳アリも多い。お前さんだけが特別というわけでもないよ」

「ありがとうございます。でも……俺が言うのもなんですが、信じてくれるんですか?」

「驚いたが、嘘をついとるわけでもないようじゃしのぅ」


 嘘をついていない……そう、ヤタラさんは言う。そんなこと、どうしてわかるのか。

 もしかして……


「ヤタラさん、嘘を見抜く『スキル』を、持ってるんですか?」

「いや。とだ、長生きしているせいか、人を見る目が養われただけじゃよ。年の功というやつじゃな」


 そうか……別に、『スキル』がなくても、わかることはあるんだな。

 信じてくれて、その上で受け入れてくれる。今まで会った中でも、特段にいい人たちだ。


「じゃ、早速村の新しい住人を、紹介しようかのぉ」

「え、今から!?」

「善は急げ、ですよアーロさん!」


 すでに二人の中では、俺を村人たちに紹介する方向で進んでいるらしい。正直、この二人がすごくいい人たちなだけで、村人が俺を受け入れてくれるとは限らないんだが……

 そう思っても、エフィに引っ張られるようにして俺は、家を出た。
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