死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、第二の人生を歩む

踊り子様とお友達

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 その後、逃げようとした俺をラニーが捕まえたまま、動けないままにその場に拘束されてしまった結果……踊り子、リーズレッテに捕まってしまった。


「あぁ、やっぱり! ロア様じゃないですか!」

「ちょっ、その名前は……!」


 俺の姿を見つけるや、そう手を振って近づいてきたリーズレッテ。ただでさえ、ついさっき踊りを終えたばかりの彼女に人々の視線が集まっているのだ。

 当然、俺にもその視線が集まる。

 だから、俺の正体を知ってる彼女に見つかる前に、去りたかったのに。なんで踊りを最後まで見つめていたんだ俺のバカ!


「し、しー!」

「?」

「ロア? あれ、アーロじゃ……うーん? その名前、どっかで聞いた……あ! もしかしてゆうし……」

「ノォー!」


 くそっ、俺と勇者時代に会った疑惑のあるラニーさんにも、なし崩し的にバレてしまった!

 なんだこの望んでない連鎖!


「と、とりあえずこっちに!」

「あら」

「みなさーん、ありがとー!」


 ここで騒がれるのだけは避けたい。ラニーさんとリーズレッテの手を取り、この場から脱出。人がいない場所へと、移動する。

 リーズレッテは、去り際に人々に手を振っていた。


「はぁ、はぁ……」

「ロア様ったら、大胆ですね」

「そ、その名前は……」


 こんなに息を切らしたのはいつぶりだろう。普通に走っただけなのにかなり疲れた感じ。

 リーズレッテは、俺の正体を知っている。そしてラニーさんにも気づかれた……これはもう、隠し通しておくのは無理だな。


「ねぇねぇ、ロアじゃなかったの? なんでアーロなんて名乗ってるの?」

「え、今アーロって名乗ってるんですか? なら、アーロ様ですね!」

「わっ、お、踊り子様が隣に……い、いいにおい……!」


 ……忙しいなこの二人!

 とりあえず二人を落ち着かせ、簡単にこれまでの経緯を話す。人生二周目とか、ゲルドに命を狙われたとか、そういったややこしい話は当然抜きにしてだが。


「なるほど……勇者の旅が終わったから、お役目から解放された人生をエンジョイしようと、ラーダ村までやってきたと」

「まあ、そんなところ」


 かいつまんで説明した結果、理解はしてもらえたようだ。嘘はついていないし。


「じゃあ、踊り子様とアーロは知り合いなんだね?」

「えぇ、以前ロア様……いえアーロ様率いる勇者様一行と、密な時間を過ごさせていただきましたわ」

「み、密な時間……」

「私のことは、リーズレッテでよろしいわよ、ラニーさん」

「お、おぉ! 憧れの踊り子様が、私の名前を……!」


 ラニーさんは、これまでの姿が嘘のように、恍惚とした表情を浮かべて喜んでいる。それほど、リーズレッテと仲良くなれたのが嬉しかったらしい。

 まあ、憧れの人とお近づきになれる喜びは……理解できる。


「アーロ様は、今お隣のラーダ村にいらっしゃるんですね?」

「あぁ。隣ってほど近くはないけど」

「なら、私次はそこに行きます」


 リーズレッテは、目を輝かせながら言う。マジか~。

 いやぁ、踊り子であるリーズレッテが次どこに行くか、俺が嫌と言える立場じゃないから嫌とは言わないけどね。

 それに、ラニーさんのようにリーズレッテのファンがいるかも、しれないし。


「いいけど、俺の正体は秘密にしててくれよ」

「もちろんですよ、アーロ様!」

「……その、様っていうのもやめてほしいんだけど」

「えぇー、でもぉ」


 なぜか、リーズレッテは初めて会ったときから俺のことをロア様と様付けで呼ぶ。まあ、俺だけでなくディアやゲルドたちも様付けで呼んでたから、俺が特別ってわけでもないんだろうが。

 とはいえ、様付けは目立つ。勇者でもない、ただの人間なら、なおさらだ。


「俺からのお願いだよ、頼む」

「……わかりました。じゃあ、アーロさんで」


 なぜか渋々といった感じで、リーズレッテは受け入れた。
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