死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、第二の人生を歩む

戦いになったら

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 活発化したモンスター……その話を聞くと、どうしても俺の故郷、カルボ村での出来事を思い出してしまう。

 モンスターの大群が、村に迫ってきたあの光景。あれは、尋常ではないものであった。

 あの辺りには生息していないはずの、コアウルフなど、凶暴なモンスターが大群となり、なぜかカルボ村に突撃してきた。ファルマー王国の警備隊が来てくれなかったら、無事では済まなかったはずだ。


「モンスターの活発化……なんだか、怖いことにならないといいですけど」

「まあ、私らが心配したところでどうしようもないんだけど……一応、注意しといてってことで」


 この村が、もしあんな目にあったら……今の俺なら、果たして対処できるだろうか。

 結局モンスターの大群出現の原因はわからずじまい。旅から戻ったら、王国で調べ物をしてみようと思っていたが……

 もし、ディアが調べてくれていたら……いや、どうせ会えないし、なぁ。


「どうしたんよアーロくん。黙っちゃって」

「え……あぁ、別になんでも」

「ははーん、さてはちょっとビビってるな? そういうことなら、お姉さんにどんと任せない」


 大きな胸を叩き、自分に任せろと言うケエラさん。俺が戦えないと思っているから、いざというときは任せろとそう言っているんだな。

 ケエラさんも腕に自信はあるのだろうか。俺の『スキル』【勇者】でも、別に相手の力を図れるわけじゃないから、わかんないや。


「その時は、お願いしますよ」

「ふふん」


 社交辞令、とは違うだろうが、自信満々なケエラさんにとりあえずお任せすると言っておく。本人は、嬉しそうだ。

 対して、俺の正体を知っているエフィからは、少し冷ややかな目で見られた。そんな目しないでくれよ。


「この村はお年寄りが多いからね。戦えない人も多い……だから、私やヨルガだけじゃなく、少ない若者はそれなりに戦いの心得はあるよ。ある程度はね」

「……じゃあ、エフィも?」

「……何事にも、不向きな人っているじゃん?」


 ケエラさんは、わかりやすく視線をそらした。そして、エフィは赤い顔で頬を膨らませている。

 何事にも、不向きな人……つまりエフィは、戦いの心得は持っていない。持っていないどころか、戦いに関してはまったくの不向きだ、ということか。

 まあ、考えてみれば、それなりの戦いの心得があれば、わざわざボディガードは必要ないか。


「エフィちゃんは、運動神経悪いわけじゃないんだけど……なんか、戦いのセンスがないんだよね」

「むむ……」

「まあ、戦いのセンスなんて、なくてもあんまり問題はないですよ。戦いなんて、ないほうがいいんです」


 戦いなんて物騒なこと、本当は起こらないほうがいいのだ。どうしてもという場合は仕方なくても、そういう物騒なものとは関わらない生き方……それは、俺はとてもいいと思う。

 俺の『スキル』なんかは、まさに戦いのための『スキル』だ。この力を持って、穏やかに暮らすなんてことは諦めていた。


「ほぅ、言うねぇ。じゃあ、もしものときはキミがエフィを守りなよ? 少年」

「えぇ、もちろん」


 俺だって、正体を隠しているが、だからといってこの村やヤタラさん、エフィに危険が訪れれば、じっとしているつもりはない。

 大切な場所や人、それが危険に陥るくらいならば、たとえ正体がバレてでも、俺は戦う。


「ま、期待してるよ、若者よ」

「ケエラさんだって年そんなに変わらないでしょう」

「あっはっは」


 手紙と、モンスター活発化の情報を教えてくれたケエラさんは、数本の花を買ってから去っていく。

 客としても来てくれた辺り、やっぱりいい人だ。いい人で、嵐みたいな人だ。

 それにしても、モンスターの活発化か……あまり深くは考えてこなかったけど、原因はなんだろうか。もしかしたら、誰か裏で糸を引いていたり、するのかもしれないな。
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