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死に戻り勇者、第二の人生を歩む
思わぬ到来
しおりを挟むエフィの【放水】の『スキル』。俺の周りには、【鑑定眼】に【獣化】、【百発百中】といった、戦いに特化した『スキル』が多かった。魔王を倒すための人材が集められたのだから、当然なのだが。
そう考えると、エフィの『スキル』のなんと平和なことか。
「お水もたっぷり、お日様もポカポカですし、みんな元気に育ってね!」
一通り水をやり、エフィは最後にそれぞれ声をかけていく。もちろん、植物に言葉が通じているわけではない。
それでも、こうして話しかければ元気に育ってくれる……それがエフィの持論である。
「エフィちゃん、精が出るねぇ」
「あ、おばあちゃん!」
こうして、植物の世話をしていると村人がよく話しかけてくる。エフィの人柄ここに極まれりだ。
そして、エフィを通じて、俺にもよく話しかけてくれるようになった。
「それにしても、今日は鳥がよぉ鳴いとるねぇ」
「言われてみれば、そうだねぇ」
腰を折ったおばあちゃんが、空を見上げる。空は快晴、雲ひとつない青空だ。
そして、耳をすませば……確かに、今日は鳥の鳴き声が大きい。それも、複数の鳥が鳴いているわけじゃない……おそらくは、一匹の鳥だ。
「……この、声……」
おばあちゃんとエフィが、鳥の鳴き声を気にしながらも談笑を続けていく中で……俺は、聞き見を立てていた。
聞こえる鳥の声……やたらと、大きい。それに、どんどん大きくなっている……?
「? アーロさん、どうしました?」
「この声……ただの鳥じゃ、ないかも」
ただ、大きな声で鳴いているわけではない。これは、おそらく興奮状態に近い、鳴き声だ。それが、近づいてきている。
空を、見上げる。空には、雲一つない……そのはずだったが、よく目を凝らせば、なにかが、動いている。
空で、なにかが動いている……いや、飛んでいる、のか? しかも、どんどん影は、大きくなっている。
「! あれは、モンスターだ!」
「え」
気づいたときには、俺はエフィとおばあちゃんを庇うように、前に立っていた。あそこで飛んでいるのは、ただの鳥ではない。
巨大な影は、確かに鳥の姿をしている。しかし、それはただの鳥にしては大きい……それに、動き方が荒々しい。
ようやく目に見える範囲に現れたのは、鳥型のモンスター。あれは……コアプテラ、か? 鳥ではなく、恐竜に近い姿をした鳥類。
「なんで、コアプテラが……?」
本来、この周辺にはいるはずのないモンスター。それがなぜいるのか、考える暇はない。奴は、一直線にこちらに向かってきている。
もし、他の村人に見つかれば……騒ぎになるだろう。
「なら、こいつで……」
「アーロさん、それって……」
「ただの小石」
俺は、足下に落ちていた小石を拾い、コアプテラを睨みつける。小石といっても、手のひらサイズのものではあるが。コアプテラのくちばしからは、鋭い牙が覗いている。
俺は、コアプテラの胴体に向けて、石をぶん投げる。
「グェッ……!?」
胴体に石は命中し、コアプテラは石の勢いに押されるようにして、ぶっ飛んでいく。
ここでコアプテラを殺せば、死体が村の中に落ちる。なので、遠くにぶっ飛ばす必要が、あった。
「よし、じゃあ行ってくる!」
「え、行くって……」
俺は、ぶっ飛んでいくコアプテラを、追う。その場から勢いよく飛び出し、久しぶりのロケットスタートを切った。
うはぁ、久しぶりにこんなに思い切りよく走ったな。けれど、村の外に追い出したコアプテラを、放置はできない。また、戻ってくるかもしれないからだ。
コアプテラは村の範囲から出たのを確認。俺は、飛び上がり、ぶっ飛んだままであったコアプテラの首元を掴み……
「お、らぁ!」
「ギャア!?」
地面に向けて、思い切りぶん投げた。巨体は、地面に激突した。
さあて、一気にかたをつけるか……!
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