死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する

新しい住人……?

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「ふむ……」


 いよいよもって、この少女……ガリーをどうすべきか、わからなくなってきたな。

 この子自身は、両親を人間に奪われたむしろ被害者と言える。だが、被害者だからなにをしてもいいわけでは、ないだろう。

 彼女は、その『スキル』【消滅】を使い、モンスターの活性化を各地で促してきた。結果として、たくさんの人々が襲われたのは事実。


「別に、殺すなら、殺せばいい」

「……」


 捕らえられた本人は、この様子だ。殺せばいい、か……腕を折るって言われただけで震えていたくせに、強がっちゃって。

 もしも俺が、勇者のままだったら……この子を、殺していたんだろうか。人々に害を成し、魔王の娘で、第二の魔王になりえるこの少女を。

 今の俺は、ただ平穏に住んでいる一村人だ。


「俺は、キミを殺すつもりはないよ。少なくとも、これ以上抵抗しないなら、危害を加える気もない」


 相手が、人の言葉がわかるっていうのは良かった。こうして、話し合いで解決できることもある。

 となると、問題は……この子の今後。このまま放置するのはなしとして……ファルマー王国に引き渡すか?

 ザーラ国王は、他国に無断に進行してまで、モンスターの活性化の真相を突き止めようとしていた。であれば、原因であるこの子を引き渡しても嫌とは言えまい。


「……それは、なしだな」


 考えて、即座に切り捨てる。俺を、危険分子だからって殺そうとした……いや現在進行形でころそうとしている国王だ。騒動の原因、加えて魔王の子供となれば、即死刑でもおかしくはない。

 それに、だ。国に連れ帰る以前の問題。ガリーの【消滅】の力により、バングーマさん含む兵士四名が犠牲となった。

 光の正体がガリーだと話せば、生き残りのチュナールさんがその場で斬りかかって来てもおかしくはない。なんせ、仲間の仇だ。


「うーん……」

「?」


 俺はガリーを殺したくはない。かといって、他の人なら殺してもいいのかと言われると、それも違う。

 となると……必然的に、残された選択肢は一つになっていくわけであるが。


「また、ヤタラさんに頼むか……?」

「??」


 そう、ラーダ村に住まわせてもらえるよう、頼む。現状、目の届くところに置いておいた方が、個人的に安心できる。これは、ワモニグラのときも同じ理由を感じた。

 だが……ただでさえ、ワモニグラを住人(?)にする際に、悩んだのだ。

 今回のは、ただのモンスターとかではない……それよりも、凶悪とも言える。モンスターと人という時点でまず違うし……それ以上に……


「魔王の子供、って事実をどうするかだよなぁ」


 俺の場合は、ヤタラさんとエフィにだけは事情を話した。二人は受け入れてくれたが……今回は、そんな簡単な問題じゃあない。

 魔王の子供……その事実を隠したまま過ごすというのは無理だ。


「角と目の問題があるからなぁ」

「なんだ、なにか文句あるのか」

「ないよ」


 角は元々持って生まれたもの、目の色は気がついたら変わっていたらしい。多分だが、母親を殺されて人々を惨殺した時、力が覚醒して体に変化が起こったのだろう。

 ともかく、見た目から普通の人間だと訴えるのは無理だ。少人数だけにガリーの正体を話す手はそもそも使えない。

 じゃあ普通に、「この子は魔王の子供ですが危険はないのでみんな気にせず仲良くしてください」と言えって?

 ……無理だろう。


「まあ、このままここでじっとしているわけにもいかないか」


 すでに、エフィたちの下を離れてからしばらくの時間が経った。遠く離れているとはいえ、あまり遅くなるとラーダ村から、心配になった皆さんがここまでやって来ないとも限らない。

 問題があるとすれば、ヤタラさんの『スキル』で俺と再会した記憶は忘れたらしいゲルドの存在だが……

 ま、なんとかなるだろう。念のためゲルドと鉢合わせないようには、気を付けないと。


「じゃ、行こうか」

「? どこへ」

「とりあえず、ここに放置もできないんで……ラーダ村まで」


 言って俺は、ガリーを肩に担ぐ。後ろ手に手は拘束していたため、この体勢なら手が不自然な動きをしようとしたら、わかる。

 しかし、軽いな。小柄であるが、ちゃんと食べているのか。


「ちょっ……お、おろせ!」

「はいはい、暴れない」


 バタバタと足を揺らし、抵抗するガリーを気にも留めず、俺はその場からラーダ村へ……瀬角にはエフィたちと別れた場所へと、向かい走る。

 もう朝日も昇っている……村人は、起きている頃だな。


「あばばばばばば!」

「口閉じとかないと、舌噛むぞー」


 もはや暴れることすらしなくなったガリーに、口を閉じるように注意する。

 並外れた身体能力を持っているとはいえ、このような速度で移動したことはないんだろうか。


「って、村に着く前に……これだ」


 俺は走りつつ、道端に落ちていた袋を拾う。うん、これなら色付きだし、中身も見えない。いざとなったらガリーの顔に被せて、正体を隠そう。

 いずれ話すこととはいえ、いきなりこんな子を連れ帰ったらみんなびっくりするだろう。


「お、まだ残ってた」


 村が見え、出発した時と同じ場所に走る。そこには、俺が去った時と同じ……エフィやヤタラさんたちが、俺の帰りを待ってくれていた。
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