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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する
ゲルドvsガリー
しおりを挟むゲルドの短剣は、ガリーの胸元を突き刺す……!
ゲルドの『スキル』【鑑定眼】であれば、いかに魔族といえど一撃で命を絶つことができる。その力こそ、ゲルドの本領だ。
ガリーはゲルドのあらゆる攻撃を避けていたが、それでもゲルドは的確に急所を狙っていたことだろう。そして、それが胸元についに当たり……
パキン……ッ
「……あ?」
なにかが、砕けたような音が響いて……地面に、なにかが落ちた。
……折れた、ゲルドの短剣であった。
「な、に……!?」
折れた短剣に、ゲルドは驚きを隠せない。そして、驚きを隠せないのは俺もだ。
ガリーの胸元を貫かんばかりのゲルドの攻撃……生半可なものでは、なかったはずだ。
しかし、その攻撃が通用しないどころか、剣が折れたのだ。
「ほぉ、【鑑定眼】で貫けない場所があるとは。……いや、こりゃあ、寸前に体を捻って急所をずらしたか。俺の『スキル』が危険だと判断して……っ、ち!」
驚くゲルドであったが、すぐに行動を移す。ガリーが縛られた状態のままの足で、ゲルドに蹴りを入れてきたのだ。
ガリーの飛び蹴り、それをゲルドは後退することでかわす。しかし、今度は自分が追撃する番だと言わんばかりに、ガリーの反撃が始まる。
「おっ……こいつ、縛られた状態で……!」
今のガリーは、いわばミノムシみたいな状態だ。文字通り手も足も出ない……であるはずなのに、ゲルドに反撃を許さないほどの猛攻で、攻撃していく。
手段は主に蹴りであるため、足に注視すれば攻撃を避けることに苦労はない……と思われたが、そうでもないようだ。
「くそっ、おとなしくしとけ!」
繰り出されるガリーの蹴りに、ゲルドも蹴りを放つことで対抗する。
ゲルドの武器は、なにも短剣だけではない。そして、生じた隙を狙う……
「もらっ……!?」
しかし、そううまくはいかない。無防備になった体に、ゲルドの短剣が迫る……かと思われたが、次の瞬間には、短剣の刃の部分が消えていた。
消える……消滅、していたのだ。
「あ、手が……」
二人の戦いを見ている位置にいれば、よく見える。縛られていたはずのガリーの手……それがいつの間にか、解放されていたのだ。
そして、その手のひらから放たれた【消滅】の力により、短剣は消滅した。
「いつから……っはは! 手が使えないふりぃしてたってわけか! 知恵も回るようだな魔族!」
「……!」
縛られていたとはいえ、その気になれば自ら脱出できた……ということか。さらに、手は使えないと思わせておいて、油断を誘う。
人との戦闘は俺とが初めてだと思っていたが、どうやらそれなりに頭も使っているようだ。
「……あなたは、私を殺したいの?」
「お、ようやく喋ったな。あぁそうだな、魔族なんて危険な存在を放っとくわけにもいかないからな!」
「……そう」
魔族なんて危険な存在を放っておけない……か。ゲルドの奴、そんなに世の中のこと考えているような性格じゃなかっただろう。
強い奴と戦いたい、そして殺したい……そのくらいに、自分本位にしか考えていないはずだ。
「しかし、なんでまだ魔族が残ってるのかねぇ。魔王は死んだはず……それとも、人間との混血は具合が違うのかねぇ」
「! そうか、あなたは……勇者パーティーの……」
「あん? そうだが……魔族のガキにも知られてるとは、俺も有名になったもんだなぁ!」
対峙する二人……ゲルドの得物は短剣二刀。ただ、先ほど使い物にならなくなった短剣を捨てて新しいものを出したあたり、まだまだ短剣を隠し持っている可能性は高い。
ガリーは丸腰だ。だが【消滅】の『スキル』はある意味どんな武器よりも危険だ。だからだろうか、ゲルドはガリーの手のひらに常に注意を払っている。
ゲルドは【鑑定眼】で、『スキル』の情報もわかるはずだ。もしかしたら、【消滅】は手のひらから出せないから、注意しているのは手のひらだけなのかもしれない。
「はっはぁ、いいぞ! このところ歯ごたえのある奴がいなくて、退屈していたところだ! ここいらにいるのは雑魚モンスターばかり、王国でも兵士ごときじゃ相手にならねぇ! ロアも殺し損ねてイラついてたとこだ!」
「……」
やはりゲルドの記憶からは、この村で俺と出会った事実は消えているらしい。
だが、遅かれ早かれバレるのも時間の問題だし……今のうちに、どこかに逃げるか?
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