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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する
リリーの危機
しおりを挟む「……本当だったら、ロアにこんな話はしたくなかったんだけど」
ファルマー王国で不穏な動きが、起こっている。そう言われ、しかし俺はなにを望まれているのかわからない。
もう、俺はあの国に戻るつもりはないのだから。
「……実は、リリー様のお命を狙っている者がいる、という情報があります」
「! リリーの!?」
言いにくそうなディアに代わり、メラさんが口を開く。
しかし、なんでリリーが……? 今の話を聞いていると、リリーじゃなくザーラ国王が命を狙われるのなら、わかるんだが……
「どうして、リリーが……」
「詳細は、まだ掴めていませんが……どうやら、ザーラ国王に賛成する者たちの中に、リリー様を邪魔に思っている者がいるようです」
「つまり、自分たちは戦争を起こしたい。でも、それに反対しているリリーちゃんが邪魔になる……ってことだよ」
「けど、リリーは別に反対だって姿勢を示してるわけじゃないだろ?」
「そうだけど、中には疑り深い人もいるみたいでさ。そもそもリリーちゃんが争い事なんて望むはずがない……だから邪魔される前に、って感じらしいよ」
なるほどな……争い事を起こしたい連中にとっては、国民からの人気も高く王女であるリリーの存在は邪魔ってわけか。
政治に関することは俺はよくわからないが、まあいろいろあるのだろう。
「そんなことになってるのか……」
「えぇ。これも、内密に仕入れた情報だから誰にでも話せる話じゃないし……」
「リリー自身は、そのことは?」
「悟らせないように、しています」
リリーの、王女の命を狙う者がいる。そんなこと、軽々しく話せるものじゃないよな。証拠だってないんだし。
どうやら不穏なのは、国外だけじゃなく国内ものようだ。
「ロアには、もうファルマー王国のことは関係ないと思うけど……それでも、知っておいてほしいの」
「……それは、もしものとき俺に、助けを求めるため、とか?」
「あはは、そこまで都合よく考えてない……って、自信持って言えないや。そもそも話さなければいいんだもんね」
もしもリリーに明確に危険が及ぶと、わかったら……俺は、どうするだろうか。ファルマー王国に戻るか?
だとしても、このラーダ村からファルマー王国までかなりの距離がある。リリーに危害が及んだって、すぐに戻ることはできない。
やはり、心のどこかでは……俺が、リリーの危険を知れば戻る、と思っているのだろうか。
「ごめんね、私……自分でも、よくわからなくて。ロアが逃げる手伝いをしたのは私だし、ロアの気持ちだってわかってる。でも、いざロアが生きてるって知ったら、やっぱり一緒にいたいって気持ちが強くなって……リリーを、だしにするようなことまで……」
自分でも、よくわからない。それは、ディアの本音なのだろう。
俺に生きていてほしいから、王国から逃げる手伝いをした。だが、いざ俺の居場所がわかれば一緒にいたい気持ちが強くなり、俺が戻ってきたくなるようなことを話した。
それは、理屈とかではないのだろう……
「いや。確かにあの国には戻りたくもないけど……もしリリーに危険が及ぶっていうのなら……」
ディアはリリーの話をしたことを後悔しているかもしれないが、俺からしたら自分の知らないうちにリリーにもしものことがあったほうが、嫌だ。
「それにしても、ザーラ国王派の人間がリリーを害するかもしれないのか。まったく、あのおっさんは……」
リリーにまで危害が及ぶのは、さすがにザーラ国王の意思はないだろう。周りの人間が勝手にやったことだ。
それでも、本人の意図していないところで悪い風に進んでいる。ザーラ国王の人間性が、周りにそういう人間を集めているのだろう。
本当に、余計なことしかしない男だ。
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