死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する

急転直下

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 ガリーは、リーズレッテの旅に同行することになった。その旨を伝えに行っている間、俺はこれまでのことを思い出していた。

 【消滅】の『スキル』を持つ、謎の少女。その正体が、魔王の子供だって知ったときは、驚いたもんだなぁ。それから、ガリーをラーダ村まで連れ帰って……

 "緑屋"で一緒に働いて。ずいぶん長く、一緒に暮らしたもんだ。


「なんかちょっと寂しそう?」

「そんなことないっての」


 その後戻ってきたガリー。エフィもヤタラさんも驚きこそしたが止めることはなく、むしろ後押ししてくれたらしい。

 まあエフィはかなり泣いたらしいが。それでも、ガリーがやりたいことならと認めてくれたわけで。

 ……ガリーと過ごす最後の夜。とはいえ、なにが変わるわけでもない。ただ、今日はガリーは、エフィと一緒に夜を過ごすことにしたらしい。


「よかったの?」

「よかったもなにも……ガリーとは一緒に住んでたけど、会話らしい会話もなかったしなぁ」

「そっか……っ!」


 ガリーはエフィの所に。つまり、今夜は俺とディアと二人だけなわけだ。

 それに気づいてか知らずか、ディアは先ほどから顔を赤らめたりしている。しかもこっちをチラチラと見ている。

 これは……


「では、今夜は私はロア様のお家にご厄介になりますね」

「……メラさんは、エフィちゃんの所で寝なよ」

「そういうわけにもいきません。お二人の時間を、邪魔してはいけませんから」

「……ちっ、ならこっちも邪魔しないでよ」

「なにか言いましたか?」

「いいえー、なんにもー」


 ……結局、メラさんは俺の家に泊まることになった。あんなニコニコした笑顔でこっち見られたら、断れないよ……怖いよ。

 ガリーとは、明日の朝一……出発する前に、声をかければいいだろう。俺よりも、エフィとの方が仲良くしていたわけだし。積もる話もあるだろうしな。

 ちなみに村人たちには、まだ伝えていない。宴の後でもうだいぶ寝ているし……明日に伝えるらしい。

 いきなりだが、まあこれも仕方ない。


「へぇー、シャリーディア様とアーロ様はひとつ屋根の下で寝てるんですかー。へー」

「勘ぐっても別になにもないからな?」

「えぇ……本当にね」


 リーズレッテは宿に、ディアとメラさんは俺の家に、そしてガリーはエフィの部屋に……それぞれ、泊まることになった。

 ディアは俺と一緒の布団で寝たがったが、メラさんが別の部屋に引っ張っていった。ディアのやつ、なんかもういろいろと隠さなくなってきたな。

 今日も、疲れた……思わぬ宴で、盛り上がったし、いつもより余計に疲れた。

 布団に潜り込むと、すぐに睡魔が襲ってきて……


「すぅ……」


 いつの間にか、眠っていた。

 ……そして、朝。


「ふぁあ……」


 いつも通りの時間、自然と目が覚める。起き上がり……窓の外を見る。うん、いい朝だ。

 今日でガリーともお別れか。ディアとメラさんも、これ以上はここに留まれないだろう。

 一気に寂しくなるが……別れのときくらい、すっきりした顔で……


「……ロア様!」

「わっ」


 微妙に感慨に耽っていたところへ、ノックもせずにメラさんが入ってくる。

 あぁ驚いた……聞いたことのない大声だ。それに、顔色もなんだか良くない。


「め、メラさん? おはよう……ど、どうしたの?」

「はぁ、はぁ……あ、ロア様……お、おはようございます。実は……」

「いや、落ち着いてよ。まず深呼吸して」


 一刻も早くなにかを伝えたいと言わんばかりだが、こんなときこそ冷静にならなければ。深呼吸を二、三度繰り返し、メラさんは落ち着く。

 そして……改めて、俺を見る。


「ロア様……落ち着いて、聞いてください」

「あ、あぁ……」


 なんだ? すごい深刻な顔……なにか起こったのか?

 そんな俺の疑問に答えるかのように、メラさんは口を開いた。





「リリー様が……何者かに、刺されました」
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