死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、因縁の地へと戻る

激動の朝

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「ロア様!」

「うひゃぉ!?」


 眠っていた意識が、強制的に目覚めさせられる。

 それは、俺を呼ぶ声によるものだ。俺は敵襲かと、周囲を見渡す。


「す、すみません。驚かせるつもりは……」

「あ、メラさん……」


 しかしそこにいたのは、敵ではなくメラさんの姿だった。

 ほっと一息つくのも束の間、彼女にだらしない姿を見せてしまったと、恥ずかしくなってしまったが……

 ……そんな気持ちを吹き飛ばすほど、彼女の表情は切羽詰まっていた。


「どうか、したんですか?」

「……はい。とにかく、来てください」


 有無を言わさぬ表情に、俺の気持ちも自然と引き締まる。

 ここは事前に、ディアたちに教えていた、休憩場所だ。運よく空き家を見つけられたので、そこで眠っていた。

 屋根があれば、上出来だった。野宿をしたことを思えば、恵まれた場所だったと言える。

 俺は急いで支度をして、家を出る。


「まさか、こんな早く事が起こるとは……」


 リリーが危害を加えられてから数日。部屋に侵入してきた不審者が現れたのは、昨日のことだ。

 事が起こるにしても、そう立て続けになにか起こることは、ないだろうと勝手に、思い込んでいたが……


「メラさん、いったいなにが……」

「……」


 前を行くメラさんは、答えない。話す時間が惜しいほど、切羽詰まった状況だというのか?

 ……にしては、変だ。メラさんなら、もしリリーの身になにかあれば、なにを置いてもまずは状況説明はきちんとするはず。

 リリーじゃないにしても、この態度はどこか、不気味に感じる。


「……あなた、本当にメラさんか?」


 だからだろうか。疑いに満ちた言葉が出たのは、必然だったとも言える。

 その言葉に、前を行くメラさんは足を止める。自然、俺も足を止め、目の前の背中をにらみつける。

 返事は、ない……そのことが、俺の中の疑念をさらに、大きくしていく。


「おい、なんとか言ったら……!?」


 その無言の空間にしびれを切らし、若干乱暴な口調になり再び声をかけようとした瞬間、メラさんは……いや、メラさんの姿をした誰かは、振り向きざまに俺を斬りつける。

 油断、していたわけではない。だが、どこか気が緩んでいたのだろう。頬に、切り傷が刻まれる。

 完全に、避けきれなかった。それは、メラさんの姿に警戒心を薄めていたというのもあるが……


「速い……」


 振り向いた、メラさんの姿をした何者かの手には……ハサミのようなものが、握られていた。

 いつの間に……さっきまで、あんなもの持っていなかったはずだが。

 いや、それ以前に……


「誰だ?」

「……」


 目の前の女は……メラさんでは、ない。彼女から発せられる殺気が、俺を睨む目つきが、メラさんとはまったくの別人だと告げている。

 見た目は、メラさんそのものなのに……


「なにを言っているんですか? 私はメラですよ」

「いや、あんなことしといて、さすがに無理があるから」


 その人物は、この期に及んでメラさんのふりをしようとするが……本物のメラさんなら、俺に攻撃するはずがない。

 感じる敵意……これに今まで気づかなかった、自分の不甲斐なさにただただ悔しく思う。


「もう一度聞く。誰だお前は」

「……ひゃはっ♪」


 何者か、二度目の質問。それを受けて、その人物は……不気味に、笑みを浮かべた。

 メラさんの顔をして、メラさんではありえない笑い方。それだけで、構えるには充分だった。


「本物のメラさんはどうした? まさか……」

「……」


 その人物は、答えない。

 俺は、それほど長くメラさんと接してきたわけではない……が、それなりの付き合いは通じてきたはずだ。

 そんな俺が、騙されるほど精巧な見た目。なんらかの『スキル』による、変身能力といったところか?

 もしもゲルドの【鑑定眼】なら、ひと目見ただけで相手の『スキル』も相手が何者かさえも、わかったのだろうが。


「……」


 俺の『スキル』は【勇者】……身体能力が大幅に上昇するこの『スキル』だが、言ってしまえばそれだけだ。

 目の前の人物の正体すらも見抜けない……【勇者】っ仰々しい名前なら、もっと万能な機能が備わっていても、いいものを。


「なんでメラさんの姿をしている。本物のメラさんはどこだ。俺を、どこに連れて行くつもりだ?」

「……質問が多いんですね、勇者サマ」

「!」


 瞬間、その人物は動く。ハサミを得物に、俺に斬りかかってきたのだ。

 先ほどのように不意をつかれた形ではないため、避けるのは容易い……が。


「っ、速い……!」


 繰り出される剣撃……とでも言えば、いいのだろうか。とにかく繰り出される連撃は、とにかく速い。俺でなければ、これは……!


「さすが勇者サマ、その反射神経、動体視力……惚れ惚れしちゃいます」

「ちっ」


 そいつは、ハサミの他に拳や蹴りも織り交ぜ、攻撃のパターンを増やしていく。

 動きにくいであろうメイド服で、よくもここまで動けるものだ。


「だが……!」

「お……?」


 突き出された腕をかわし、代わりに腕を掴む。それを自分のように引き寄せるようにして、女のバランスを崩す。

 バランスさえ崩せば、足元を払い……一気に、押し倒す!


「ふぅ……さぁ、吐いてもらうぞ。お前は誰だ」

「……ふふ」


 俺にマウントを取られる形で押し倒され、腹部に腰を落とされ、さらに片腕を捉えている。

 そんな、もうどうしようもない状況で……しかし、女は不気味に笑っていた。
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