死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

文字の大きさ
249 / 263
死に戻り勇者、因縁の地へと戻る

音沙汰なし

しおりを挟む


「大丈夫かリリー、ここで待ってても……」

「ううん、私も行く」


 リリーの部屋に行くにあたって、リリー本人を連れていくかどうか……悩んだが、本人の強い意志で連れていくことになった。

 自分を守ってくれたメラさんの心配もあるだろう。それに、殺し屋がいたことを思えば、リリーを一人残して行くのも、気が引ける。

 リリーには、俺の側を離れないように強く念押しする。


「よし、行くぞ」

「うん。じゃあ、入り口はあっちだから……」

「しっかり掴まってろよ、リリー。あと、口閉じといた方がいいぞ」

「え? え、ちょ……まさか、いや、え、きゃあぁあああああ!?」


 リリーを腰に抱き着かせ、俺もリリーを離さないように肩を抱き……その場で、勢いよくジャンプ。このまま、リリーの部屋まで飛んでいく!

 腰に抱き着き、きゃあきゃあと声を上げているリリーは、普通に入り口から入るものだと思っていたのだろう。

 それが正当な進入方法ではあるが、俺はそうするわけにいかない。なにより、中からリリーの部屋まで行くより、こっちのほうが断然早い。

 舌を噛まないため、リリーのは途中から黙り込んだ。


「よっ、と」


 なんの邪魔もなく、俺たちはベランダへと着地する。

 腰にしがみつくリリーは、いつの間にか目も閉じた状態で、ぷるぷると震えていた。

 その姿はかわいらしいものがあるが、いつまでもそうしているわけにもいかない。俺はリリーを離し、部屋の中へと足を踏み入れる。


「……」


 ぱっと見、部屋の中に異常は感じられない……だが。

 なんだろう、この違和感は。いつものリリーの部屋を俺は知らないが、多分、これはいつものリリーの部屋とは違う気がする。


「め、メラ……いないの?」


 俺の後ろに引っ付いたリリーが、探し人の名前を口にする。

 そう、リリーの記憶では、この部屋にはメラさんがいるはずなのだ。


「部屋にさっきの殺し屋が現れ、それをメラさんが守ってくれた……だったよな」

「う、うん」


 部屋に突然、リリーの命を狙う者が現れた。その結果、メラさんがとる行動は一つだろう。

 主を、いや単純にリリーという女の子を守る……それこそ、命を懸けて。

 メラさんは殺し屋からリリーを守る。気絶したリリーが部屋から落ち、それを殺し屋が追ってくる。この二つの事実の間に、なにがあった。

 殺し屋に立ち向かったメラさんが、敵わなかったとしよう。現に殺し屋は俺の前に現れたのだから。

 ならば、メラさんはどこに消えた?


「……争った形跡は、あるな」


 部屋の中は、惨劇……というほどでもなかったが、確かに争った形跡があった。

 だが、血が飛び散っているとか、そんなのではない。流血沙汰にはなっていないということだ。


「……」

「大丈夫だ、そんな顔するな」


 不安げな表情のリリーを見て、俺はなんとか落ち着けようと、優しく声をかける。

 目の前で、自分を守るメラさんの姿を見ているのだ。その不安は、俺が考えている以上だと思う。


「いったいどこに……」


 あの殺し屋は、容赦はしないと思う。こう言ってはなんだが、自分の邪魔をしたメラさんを、放置しておくとは思えない。

 立ちはだかるメラさんを倒し、リリーを追いかけた……そう考えるのが自然ではあるが。

 ……いや。確か殺し屋は、リリーが落ちてきた直後に、現れたよな。


「とりあえず、部屋の中を探そう」


 動けず、声も出ない状態にされている可能性もある。俺とリリーは、手分けしてメラさんを探す。

 物置の中、布団の下、ベッドの下……あらゆるところを探すが、しかしメラさんは見つからない。

 そもそも、部屋の中に人の気配がないのだ。


「メラ……」


 大切な人が見つからない……その気持ちは、俺にもわからんでもない。

 今にも泣きそうな顔で、スカートを握りしめるリリー。その、震えている肩をそっと叩く。


「メラさんのことだ、きっとどこかに身を隠しているだけだ」

「……うん」


 そう、あの人はかなりしっかりした人だ。それに、彼女の『スキル』は【分身】……その力を使えば、早々遅れを取ることもないだろう。

 加えて、聞いた話ではメラさんは元は怪盗だったとかなんとか。実際その身体能力には目を見張るものがある。

 そんな彼女が、室内で満足に動けないだろうとはいえ、滅多なことになるとは思えない。


「……そういや、ディアは?」

「ディアお姉ちゃんは、別に部屋をとって、休んでもらってる」


 この場にいない、ディアの行方を問う。俺とは違い、ディアは正当にこの城を、いやこの国を大手を振って歩ける。

 だから、ディアは俺とは違ってこの城に泊まることもできたわけで。


「なら、ディアのところに行こう。なにか、異変を感じているかもしれない」

「うん」


 まだ朝早い……とはいえ、なにかしらの異変を感じ取ったディアが、警戒している可能性はある。

 俺はリリーに案内を頼み、リリーが使っている部屋へと移動する。もちろん、移動の間人に見つからないように注意してだ。


「リリー、俺だ、ロアだ。入るぞ」


 ドアをノックし、中に呼び掛ける。応答は、ない。

 もしやまだ寝ているのだろうか。その可能性もある。

 少し、躊躇しつつ……俺はドアを、開けた。


「おーい、ディア……」


 ……部屋の中には、誰もいなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

氷の精霊と忘れられた王国 〜追放された青年、消えた約束を探して〜

fuwamofu
ファンタジー
かつて「英雄」と讃えられた青年アレンは、仲間の裏切りによって王国を追放された。 雪原の果てで出会ったのは、心を閉ざした氷の精霊・リィナ。 絶望の底で交わした契約が、やがて滅びかけた王国の運命を変えていく――。 氷と炎、愛と憎しみ、真実と嘘が交錯する異世界再生ファンタジー。 彼はなぜ忘れられ、なぜ再び立ち上がるのか。 世界の記憶が凍りつく時、ひとつの約束だけが、彼らを導く。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...