死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、因縁の地へと戻る

戻ってきた

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 ワモニグラ……ワモちゃんと名付けられた、すっかり村の一員となったモンスターの出迎えを受けて。

 その丸っこい頭に、俺とディアは乗せてもらう。


「わっ……こ、これ大丈夫なの?」

「大丈夫だって。ありがとなー!」


 それにより、俺たちをここまで乗せてくれたモンスターたちはお役御免。

 何日も付き合わせて悪かったな……自由に、戻るといい。


「さ、行こう!」


 村はもうすぐそことはいえ、せっかく出迎えてくれたのだ。一緒に帰るとしよう。

 ワモニグラは村へと移動していく。ちらほらと、村の中には人の姿が見えた。

 そして……村の入口付近には、忘れもしない。俺がラーダ村にたどり着いたその日からお世話になり続けている、『緑屋』の姿……

 徐々に近づいていく……店先に、一人の女の子が、立っているのが見える。


「よっ」

「あ、ロア!」


 俺は、途中で飛び降り、村へと足を踏み入れて……店先で、花の世話をしている女の子へと、駆け寄っていく。

 この村で初めて出会い、こんな怪しい俺を受け入れてくれて……ここで、働かせてくれた人物。


「エフィ!」

「!」


 こちらに背を向けていた彼女に、声をかける。その肩が、ピクリと震えたのがわかった。

 彼女は、ゆっくりとこちらへと振り向いて……


「アーロ、さん……?」


 驚いたような表情で、唇を震わせていた。

 その表情は、すぐに笑みへと変わる。


「ただいま」

「……おかえりなさい!」


 彼女は……エフィは、俺が初めてこの村に来た時と、同じ笑顔で迎えてくれた。


「ちょっとー、待ってってば!」

「プゥ―!」


 後ろから、俺を追いかけてくる声。

 振り抜くと、ワモニグラに乗ったままのディアが、手を振っていた。


「し、シャリーディアさん!? なんで!?」

「あー……まあ、話すと長いんだけどさ」


 俺はともかく、この場にディアまでいることに、驚いているようだ。まあ、そりゃそうなるよな。

 さて、なにから話そう……エフィには、俺がリリーの件で国に戻ったことで、多大な迷惑をかけた。全部、包み隠さずに話すべきだろうな。

 それに、村長でありエフィの祖父でもある、ヤタラさんにもな。

 とりあえず、店の中に入る。


「おや、戻ったのかい」

「ヤタラさん、ただいま戻りました」


 店番をしていたヤタラさんは、俺の姿を見ても驚いた様子はなく、微笑んでいた。

 さて、まずは簡単に、起こった出来事を話すか……


「では、そろそろ昼食にしようとしようと思ったところじゃ、休憩にしよう。二人こそ、旅の疲れが残っておるんじゃないのか?」

「いや、大丈夫ですよ」

「じゃ、みんなでお昼にしましょう!」

「え、わ、私も?」

「もちろん!」


 休憩中の札を表に出し、俺たちは店の奥へ。

 時間も、お昼時だったので、昼食をごちそうになりながら、俺たちは今日までの経緯を話した。


「よかったです、そのリリーという子がご無事で」


 話を聞いて、まずエフィが漏らした感想がそれだ。

 俺から聞いただけの、会ったこともない相手。なのに、今日このときまで、リリーの安否が気がかりだったらしい。


「それに、よかったです。アーロさんの無実が証明されて」

「だのに、この村に戻ってきて、良かったのかの?」

「はい。最初から、そのつもりでしたから」

「アーロさん……あ、もうアーロさんじゃ、変ですよね」

「いや、アーロのままがいいかな」


 もうすっかり、この村で過ごしていくうち……アーロという名前が、しみついてしまった。

 今更、ロアとエフィたちに呼ばれても、なんか違和感がある。

 それに、村のみんなは俺の事情を知らないわけだし。

 ……いずれ、みんなにも本当のことを、話さないとなぁ。


「それで、村ではおかしなこととか、なかった?」

「平和でしたよ、皆さん、アーロさんがいないからって手伝ってくれたり、ワモちゃんもいっぱい頑張ってくれて。ただ、皆さんアーロさんがいつ帰ってくるんだろうって、待ち焦がれてましたけど」

「それは……嬉しいけど、怖いな」


 村のみんなに、そんなにも思われているのは、嬉しい。嬉しいが……

 俺の脳裏に、初めてこの村に来た日のことが思い出される。あの日は、俺の歓迎会ってことで……めちゃくちゃ、飲まされたなぁ。

 またああいうことにならないと、いいけど。


「それで……シャリーディア殿も、この村に住みたい、と」

「殿、なんていりませんよ。ご迷惑でなければ、ですが」

「迷惑なことなど。また、村が賑やかになりますわい。それにこんな美人ともなれば!」


 ははは、とヤタラさんは笑う。この人こんなに笑う人だったんだ。

 とにかく、ディアがこの村に住むことも、問題はないようだ。まあ、ここまできてダメですと言われても、それはそれで困るのだが。


「それで、住むところは……」

「ロアと一緒の家でいいわよ?」

「いや、そういうわけには……」

「なによ、別にいいじゃない。私のために家を貸してもらうのも悪いし。家だって、広いじゃない」

「けどな……」

「ま、まあその話は一旦置いておきましょう」

「休憩が終われば、戻ってきたことをみんなに知らせてあげるといい」

「……そうですね」


 あぁ、戻ってきたんだな俺は。この、賑やかで、居心地のいい空間に。
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