復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~

白い彗星

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第3章 『竜王』への道

解決に向けて

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 『呪病』の正体……それは、その名前の通りに呪いであるとのこと。呪いのような病が、まさか実際に呪いだったとは。

 その呪いをかけた者……つまり術者を倒せば、『呪病』を消すことができる。そうなれば、『呪病』に苦しんでいるすべての人を救うことができる。ノアリ以外を救わない、という選択肢も消えることになる。

 とはいえ、ノアリを救う代わりに何人死んでも構わない、なんて……俺は、こんな薄情な人間だっただろうか。


「……」


 結果的に全員を救うことができることになったとはいえ、この考え方は……こんな考え方ができるようになったのは、果たして正解なのだろうか。


「ヤーク様?」

「! なんでもないよ」


 とにかく、とにかくだ。全員を救えるなら、それに越したことはない。今はそれでいいじゃないか。

 となると、呪いをかけた術者を見つけないといけないが……


「それで、術者ってのはどうやって見つけたら……」

「基本的に、呪いの範囲はそう広くはない……せいぜい国ひとつの範囲。遠隔で別の場所からは呪いの効果は表れないということじゃ」


 範囲は広くない……とはいえ、国ひとつも充分な広さな気がするが。まあいいや。

 とにかく、呪いの範囲が決まっている、ということは……


「術者は、国の内部にいる?」

「そうなる。それに加え、呪いをかけている間、術者はその場から離れることは出来ん。離れれば呪いの効果は消えるからの」

「ということは……術者は、国から一歩も外に出たことがない人? そんなの……」

「よく思い出せ。その『呪病』とやらはいつから流行りだした?」


 そう言われ、俺は咄嗟にアンジーを見る。『呪病』の存在はノアリが発症した時に知ったんだ、いつからなんて俺にはわからない。

 だけどアンジーなら、それを把握していてもおかしくはない。


「ええと……奥様は、最近と。ですが……確か、それと似た病が出た時期があります。そう……8年ほど、前かと。その時点ではまだ名前なども付いておらず、流行るほどではなく途絶えたはずです。ただ、今回流行り始めるまでにも何度か症状はあったはずです」

「ふむ……つまり、その術者は8年前に実験的な意味で『呪病』を発生させ……その後何度か呪いの効果を試した後、ここに来て呪いを流行させた、ということか」


 8年前……初めて聞く情報で、アンジーとザババージャさんが推論を立てていく。

 確かに母上はこの頃流行ってる、としか言ってなかった。だが、実際にはそんな前から起こっていたのか。継続的ではなく、断続的とはいえ。

 ……俺が生まれた、いや転生したのと同じ時期か。


「その、呪いが起こった時期に必ず国にいた者に限定して、調べるしかないじゃろう。ただ、呪いは魔術とは違うとはいえ、根本的には同じものじゃ。つまり……」

「……魔法を人間が使えないように、呪いも使うことはできない?」

「例外はあるがの。それに、呪いを使うにはかなりの力量と知識、そして邪な心が必要……少なくとも、そこいらの民草に扱える者ではない」

「てことは……」


 王族か、それか貴族……その中に、『呪病』の術者が高い。しかも、人間ではない者……

 これだけ限定できれば……


「ここから出て、通信の魔石でガラド……父上に状況を話せば、早期解決に動いてくれるはず!」


 あ、あぶねー……思わず、アンジーの前でガラドと呼び捨てにしてしまうところだった。誤魔化せたか?

 ……ぎりぎりだったが、特に気にしていない様子だ。


「なら、さっそく……」

「まあ待て坊主」


 急ぎ、結界の外へ出ようとしていたところへ、ザババージャさんの待ったが入る。

 逸る気持ちが、抑えきれそうにないんだが……


「結界の外へ出る、それはこの村を後にするということじゃが……」

「あ、そうか……そしたらクルドやザババージャさんともお別れに……」

「ザバちゃんでええいうのに。いや、問題はそこじゃなくての」


 なにを言いたいのかわからない。首を傾げる俺に、ザババージャさんはおもむろに袖を捲り腕を露に。

 か細く、血管の浮き出た腕だ。


「えっと……?」

「ここを出ていく前に、ほれ。血ぃ抜いていかんか」


 ザババージャさんは、己から血を抜けという。確かに、ここに来た理由は『竜王』であるザババージャさんの血を分けてもらうこと。

 だがそれは、『呪病』を治す手立てがそれしかないから。術者を倒せば治せるとわかった今、無理に血をもらう必要はない。


「ありがたいですけど、でも……」

「あぁ、術者を倒せば呪いは解ける。が、呪いなんぞを使う輩は頭のねじが外れとる、なにが起こるかわからんぞ。やると言っとるんじゃ、貰っといて損はないと思うがの?」


 術者を倒して、それですべてが解決するわけではない……そのような意味の言葉を告げられ、俺は口の中が渇いていく感覚がした。
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