復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~

白い彗星

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第3章 『竜王』への道

幕間 目標

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「と、いうわけなんですが……」


 先生から聞いた、騎士学園の話。先生との稽古が終わった日の夜、、両親に早速話した。

 これから、もっと剣を上達させるなら、騎士学園で腕を磨いた方がいいんじゃないか。そう、先生からの提案があったことを。


「なるほど……」


 それを聞いて、机を挟んで正面に座る父上は、腕を組み小さく頷く。その隣では母上も座っている。


「先生の話だと、その学園を作るよう進言したのは父上だとか」

「ん、あぁ……ちょっと、気がかりなことがあってな」


 気がかりなこと、ね……両親は、俺に昔の話をしたがらない。もっとも、自分から話すものでもないとは思うが。

 とはいえ、経歴が経歴だけに両親の昔のことは誰でも知ってるくらいだし、もちろんアンジーや先生だって知っている。両親だって、俺に頑なに内緒にしたいわけでもないだろう。別に、隠そうとする必要もないだろうに。

 それとも……俺を殺したことを、思い出すから忘れようとしているのか?


「先生から聞きました、父上が、魔王を討伐した後、そう進言したと」

「あぁ、そうだ。父さんたちの昔の話だが……魔王と呼ばれる存在を、討ったことがある」


 知ってるよ……一緒に、旅をしていたんだからな。


「その魔王の散り際、気になることを言っていてな……いや、大袈裟にとらえすぎだとは思うんだが。万一を考えて……今からでも、若い力を育てておこうと、思ったんだ」

「……そうなんですか」


 俺の考えていた通りの答えだ。父上……ガラドは、あのときの魔王の言葉に影響されて、学園を設立させた。

 王族としても、魔王を討伐した勇者の言葉……無下にはできなかったのだろう。となると、騎士学園が設立されてから、長くても11年ってことか。新設されたばかりといっていい。

 そこで、力あるものを育てる、か。ま、以前のように『国宝』で俺のような役立たずが選出されるよりも、力を蓄えた騎士を選んだ方が何倍も役立つだろう。


「それで……ヤークは、どうしたいんだ。わざわざその話をするということは……」

「……はい。俺、騎士学園に通いたいです」


 まっすぐと、目を見て……伝える。先生から話を聞いたときから、考えていたことだ。

 強くなる……目の前の男を殺すための、技術を向上させる。しかしそれ以外に、ただ純粋に剣の腕を磨いてみたいと……そう思う、自分もいて。


「や、ヤーク……でも、そんなのまだ早いでしょう? こんな急いで決めなくても……」


 と、戸惑いを見せるのは母上だ。確かに、8歳の息子から、学園に入学したい、という話が出るなんて思ってもみなかっただろう。

 俺も、考えていなかったことではあるが……


「でも、それが今の目標なんです」


 今の目標は、間違いなくそれだ。剣を始めた動機はともあれ、せっかくの第2の人生……やりたいことを、謳歌したい。


「そうか……それがヤークのやりたいことなら、好きにやってみるといい」

「父上……」

「ただし、母さんも言うように、まだ時間はたっぷりとある。その間、他にもいろいろと考えてみることだな」

「はい!」


 母上も、それ以上口出しするつもりはないようだし、一応は納得してくれたようだ。まだ数年の時間がある……先生に、もっとその学園のことを聞くのもいいかもな。

 だが、学園設立を進言したのは父上なのだから……より詳しいのは、父上かな。


「父上は、騎士学園についてどこまで関与しているんですか?」

「うぅん……正直、設立を進言した以外、たいして関わってはいないな。たまに、学園に足を運ぶくらいか」


 どうやら父上は、学園のことにはあまり詳しくないらしい。自分から設立を進言したのだから、もうちょっと関われよとも思うが……ま、忙しいのだろう。

 まあ、いいさ。わからないなら自分で調べるだけだしな。

 ……そして、翌日。


「え、騎士学園?」

「あぁ」


 今日は稽古の日ではないが、それでもノアリはちょくちょく遊びに来る。今日はノアリに、俺が昨日決めたことを話している最中だ。

 騎士学園に、進路を決めたと。


「でも……なんで、私に?」

「ん? なんで……なんでだろうな」


 自分でも、なぜかはわからないが、ノアリに話していた。同じ鍛錬仲間として、話しておきたかったのだろうか。

 答えになっていないのに、なぜかそれを聞いたノアリは嬉しそうだ。


「ノアリ?」

「な、なんでもない。……そっか、騎士学園、か……」


 まだ早いだろうとは思うが……目標を早くから持つのは、悪いことではない。

 すごい、今からわくわくしているや。そしてこの決断はきっと、後悔することはないだろうと、思っていた。
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