復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~

白い彗星

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第7章 人魔戦争

再びの襲来

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 リーダ様の登場により、場の空気は一変した。現在の立場はどうあれ、やはり王族というわかりやすい立場の人間の存在は、人々の目を集める。

 それからはとりあえず、場の雰囲気も落ち着いた。騒ぎ立てていたおっさんはバツが悪そうに、いくらかの取り巻きとどこかに消えていった。


「やれやれ……さて、皆さん。まずはご飯にしませんか」


 朝食もまだだった者たちは、朝食を取ることとする。いくら学園内の食堂で、食料はまだあるとはいっても……今は非常時だ。切り詰めて、食べていかなければならない。

 そういった、食事を分ける係は昨日、ガラド含めた話し合いで決めたらしい。数人の女性が、均等に配分する。


「それにしても皆さん、よくぞご無事で」


 朝食を取りながら、リーダ様が俺たちを見回しつつ言う。ここに来るまでの間、ガラドから大まかな話は聞いていたはずだが……実際に顔を見て、無事を確信したのだろう。

 それにしても……こうして、王族とご飯を一緒に食べている、なんて不思議な気分だ。シュベルトと、前までは一緒だったのにな。


「そういうリーダ様こそ、無事でよかったですよ」


 ガラドの話によれば、発見できたのはリーダ様だけらしい。他の兄弟たちは、まだ見つけられていないという。

 確か、リーダ様の下にも何人か弟や妹がいるんだっけ。未だ、王位継承を争って水面下で動きがあるとか……

 俺にとっては、どうでもいい話だ。


「ひとりで、心細かったですけどね。僕を捕まえた魔族は、どこか行っちゃいましたし……ガラドさんに助けてもらわなければ、どうなっていたことか」

「その、ガラドさんはどこに?」

「他のみんなの、ケアをしてくるって言ってましたよ」

「大変なことだな、彼も」


 敵は、魔族だけではない。さっきのおっさんみたいに、限界が来ればここにいる人たちからも、不満を訴える声は出るだろう。

 こんなとき、ミーロが無事だったらもっと、みんな落ち着かせることができるだろうに。"癒しの巫女"と呼ばれる存在だ、その力は計り知れない。

 今も眠っている人たちは、食事とかは必要ないんだろうか。そのあたり気になるところだが……確認しようもない。

 とりあえずは、様子を見ておくしかない。


「あなたとははじめましてですよね。僕は、リーダ・フラ・ゲルドと言います。一応、この国の次期国王という形になってます」

「我は、クルド……竜族だ。国が大変だというのは、すでに聞いている。今回はそこを、魔族に付け入られることになったようだな」


 国王が亡くなり、第一王子が殺され国中が騒ぎになっていた……そこを、魔族に狙われた。

 もしも、国中がこうまで混乱の渦中になければ、もう少し良い対処が出来ていたかもしれない。まあ、あの魔族がいきなり国内に現れた時点で、どうなっていたかはわからないが。


「……そういえば、捕まえたセイメイはどうしたんです?」


 俺たちがなんとか追い詰め、結果的に拘束に成功したセイメイ。その身柄は、リーダ様がどこかへと連れて行った。

 厳重な管理のため、俺たちにもどこに連れて行ったかは教えてもらえなかったが。


「彼のことならば心配いりません。ちゃんと、捕まえていますから」

「……そうですか」

「それよりも、考えるのは魔族のことですよ」


 ……ま、今この状況に、セイメイのことは関係ないしな。

 一度引いた魔族も、いつ攻めてくるのかわからないわけだし。


「それにしても、話しに聞いたことしかなかったですが、本当に竜族なんてものが存在するとは。会えて光栄ですよ」

「そうたいしたものでもないぞ、我は」

「いえ、それに、こうして我々に力を貸してくれている。それだけで、なんと心強いことか」


 朝食を終え、しばしの談笑。こんな状況だが、あまり張り詰めてばかりもいられない。

 ……それから、わずか数時間後のことだ。


「む……」

「クルド?」


 クルドと、外を見回っていた時だ。周囲を警戒しつつ、歩いていたのだが……突然、クルドの足が止まる。

 そして、額に手を当てて……つぶやいた。


「来た……」

「え?」

「魔族の、気配だ」


 それは、俺が想像していたよりも、ずっと早い襲撃。昨日の今日だ、まさかこんなに早く、魔族が行動を移すとは。

 それにしても、俺にはなにも感じない。やはり、魔族の気配がわかるクルドがいてくれて、よかった。


「クルド、魔族はどこに……」

「後ろだ」

「……え?」

「すぐ後ろに、いる」


 言われて、ゆっくりと振り返る。そこには……顔も含んだ全身を、白銀の鎧に包み込んだ、ひとりの男が立っていた。

 たった数時間前に、見別れたばかりの姿だ。忘れるわけもない。


「魔族……!」

「これは、数時間ぶりですねぇ。またこうして出会えたこと、嬉しく思いますよ」


 こっちは、まったく嬉しくない。もう会いたくなかった……とも、言えないのが悲しいが。

 眠ってしまった、国中の人たち。その眠りを覚ます方法を、聞かなければならない。

 そのためにも、こいつを拘束して無理やりにでも……


「ぬぅん!」

「って、クルド!?」


 警戒を、怠らずに先手を取る……そう考えていたところへ、先に動いたのはクルドだった。まさかの出来事に、俺は反応が遅れる。

 クルドは、肥大化させた右腕を振るう。その拳の先にいるのは、もちろん魔族だ。


 ドォッ……ン……!


 空気を震わせるような、一撃。それをまともに受ければ、ただでは済まない。

 ノアリには手加減した一撃をおみまいしたと言っていたが、確かにあれは手加減だったとわかるほどの、一撃。

 それを……


「……やれやれ、血の気の多い方が、いるようですね」

「っ」


 魔族は、手のひらで安々と受け止めていた。
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