復讐の転生者 ~仲間に殺された男は、かつての仲間の息子となり復讐を決意する~

白い彗星

文字の大きさ
287 / 307
第8章 奪還の戦い

今後の身の振り方

しおりを挟む

 ライオス家にたどり着き、これまで行動を共にしていたエルフは離脱。

 ミーロが皆を促し、家の中に入っていく。ちなみに、家の周りにはアンジーが結界を張っているため、滅多なことでは人は来ない。

 そして現在、広間にはヤークワード、ミーロ、キャーシュ、アンジー、ヤネッサ、ロイ、ノアリ、ミライヤ、リィ、アンジェリーナ、さらに目を覚ましたリエナが、それぞれ座っている。

 これだけの人数がいても、部屋にはだいぶスペースの余裕がある。


「こ、ここがヤークワード様のご実家……ふぁあ……」


 と、みんなが座ってもひとり最後までオロオロしていたリィが、感激しているかのように目を輝かせている。

 確かミライヤが初めてこの家に来たときも、こういう反応だったなぁ……と、ヤークワードはぼんやりと思った。


「申し訳ありません……私は、なんの役にも立てず……」

「いつまでも気にしてちゃダメよ、大丈夫だから」


 落ち込んだ様子で謝罪を口にするのは、リエナだ。

 彼女は、騎士学園での攻防の中で、校長ゼルジアルに一撃をもらい、つい先ほどまで気絶していたのだ。

 怪我こそ、ヤネッサの治療のおかげで治ったが、役に立てなかったことは変わりない。


「しかし……」

「あ、私は、その……」


 アンジェリーナに宥められても、やはりすぐに気を持ち直すには至らない。

 それに、自分と同じく攻撃を受けたミライヤが、こうしてぴんぴんしているのだ。先ほども戦いに身を投じていたというし、どうしても比較してしまう。

 しかし当のミライヤは、自分は純粋な人間族の体ではないことをわかっている。言ってしまえば常人より頑丈なのだ。

 なので、そこまで悲観することでも、ないとは思うが。本人的には、そういうわけにもいかないらしい。


「まあ、各々の反省は一旦置いておきましょう」


 と、軽く手を叩いてロイが口を開く。

 今話し合うことは、自分たちの行動を振り返っての反省ではない。今後の、動き方についてだ。


「話を整理すると……ヤークはガラド様殺しの罪で騎士学園へと連行された。
 そこで、我々は彼を学園から連れ出した」

「ヤークがいなくなったのも、私たちが連れ出したっていうのも、もう話が広まっていると思う」


 今日一日……というよりたった数時間の出来事であるが、ずいぶんと濃い内容のような気がする。

 一同は、起こった出来事の情報交換と移る。途中ローブを被った謎のエルフが助けてくれたこと、彼曰く"王"が結界を張っていたこと、それによりアンジーたちは弾き出されてしまったこと、校長ゼルジアルが魔物と成り死闘を繰り広げたこと、この国に宣戦布告してきた魔族が再び現れたこと……

 そして……


「え……王って、セイメイのことだったのか!?」

「えぇ」


 ヤークワード始め、ミーロたちも気になっていた存在。あのエルフが王と慕う人物の正体に、驚きを見せるのはやはりヤークワードだ。とはいえ、薄々勘付いていたのも事実だ。

 彼、シン・セイメイとの因縁は決して浅くない。一度対峙したことに加え、彼もまた、ヤークワードと同じ転生者だと言うのだから。

 もっとも、彼の場合は他者の力でなく自らの力と意志で、転生したようだが。


「セイメイが……どうやって……」

「それは、わからなかったわ」


 あのとき、ヤークワードたちは死力を尽くして、セイメイを倒した。とはいっても、最後は魔力封じの拘束具を持って現れたリーダ・フラ・ゲルドによって拘束されたのだが。

 ……そして、その後どこかへ、連行されたはずだ。


「逃げ出した? それとも……」


 あの凄まじい力なら、並大抵の拘束はセイメイにとって意味のないもの。

 しかし、あれは魔力封じの拘束具。いくらセイメイと言えども、簡単に抜け出せはしまい。彼自身の力でないとするならば……


「それに、どうしてヤーク様を助ける手助けをしてくれたのか、不思議です」


 ふと、思案しているところにミライヤの声。その疑問は、当然ながら誰もが持つものだ。

 ヤークワードたちによって拘束されたセイメイ。ヤークワードたちに恨みこそあっても、助ける義理などないはずだ。

 それも、騎士学園でも屈指の魔力使いクロードを足止めし、別にエルフを差し向けるサービスっぷりだ。


「その、エルフの王とやらが考えていることは今、考えてもわからないでしょう」


 うんうんと唸る中で、ロイがバッサリと切り捨てた。それは、その通りだ。

 いくら理由を考えても、結局は、本人の胸の内のことは誰にもわからないのだから。

 ただ、完全なる善意からではない……それは、ヤークワードはなんとなく思っていた。


「そうね、今考えるのは……」

「ヤーク様の、今後の身の振り方……」

「学園に侵入した私たちも、言っちゃえば犯罪者を逃がした扱いだから、どうなることか」


 今後避けては通れない問題。それが、他ならぬヤークワードの扱いだ。もはや国中に犯罪者として広められた形になり、無罪を証明しようにもその方法がない。

 それに、彼を助けに学園に侵入したノアリ、ミライヤ、アンジェリーナ、リィ、リエナ……彼女らの身の振り方も、考えなければならないだろう。なにせ、学園在籍の生徒なのだ、顔は割れている。

 ヤネッサだけはまだバレていない可能性もあるが、時間の問題だろう。


「みんな……」

「おっと、謝るのはなしよ。それを承知で、助けに行ったんだから」


 みんなを巻き込んでしまったことをヤークワードは謝罪しようとするが、ノアリが手を出し制止する。これは、覚悟の上だと。

 他のみんなも、同じ気持ちだ。


「ただ、ひとつはっきりさせておかなきゃ、いけない」


 コホン、と咳払いをひとつ。ノアリは、ヤークワードを見据える。

 その視線の鋭さに、思わず背筋を伸ばしてしまうほどだ。

 そして、ノアリは口を開く。彼の口から、真実を聞くために。


「ヤーク……あんたは、ガラドさんを殺したの?」


 全員の視線が、ヤークワードに……集まっていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【番外編】貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン
ファンタジー
『貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。』の番外編です。 本編にくっつけるとスクロールが大変そうなので別にしました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

処理中です...