旅する二人の小説家

夜船 銀

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旅の始まり

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その少女はその孤児院でもっとも沈んだ顔をしていた。まるで自分は世界で一番不幸だと言うように。周りの子どもたちはみんな楽しそうに笑っているから余計、その表情は暗く見えた。だから思わず、俺は声をかけてしまった。子供の頃の自分とあまりに似ているような気がしたからだ。

「なぁ、お嬢ちゃん。」
「・・・」
「随分つまらなそうな顔をしてるな」
「・・・」

少女はわずかに顔を上げた。随分特徴的な目をしている。いろんな色が重なってまるで虹のようだった。俺はなぜかこのとき、この少女が笑った顔が見たくなった。だってそうだろう?こんなに小さいのにこんなに不幸そうにするなんて、図々しすぎる。そして幸いにも俺はこの少女が興味を持ちそうな話を持っていた。

「俺と世界を旅して回らないか?」

少女の暗い表情に変化はなかったが、その目に少し光がもどったのを俺は見逃さなかった。

「俺はこれから夢だった世界旅行に出発する予定なんだけどさ。俺、一緒に旅してくれるような知り合いもいなくてね。相棒を探してるんだ」

会ったばかり、それもこんな少女に俺は何をペラペラとしゃべっているんだろう。自分らしくない。でもなぜか。どうしてもこの子を旅に連れていきたいのだ。この子に、ずっとこの顔をさせてはいけない。

「不幸そうな顔をするのはその旅が終わってからでも遅くはないでしょう。二人で世界中のおいしいもの食べて、きれいな景色を観て、いろんなものに感動してさ…」

俺はこの子を笑顔にしたい。少女の目がどんどんと光を取り戻していく。

「二人で面白おかしく旅をしないか?」

少女の目がパッチリと見開いた。

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