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第一章 怖くて偉大で大きな木
16.大樹戦 大技
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二人はもう一度、自らの力を纏う。力を溜めこめ、練りこみ、存分に効力を発揮できるように。
この化け物相手に攻撃が強すぎたということはないだろう。天樹はこれまで戦ったものの中で比較しても群を抜いて化け物だ。
ラザクは炎を刀に纏わせ、超高温で燃えゆる炎刀をかざす。
そしてカウラは、雷を今まで以上に練り込む。
「あれ、やんのか?」
「ええ、今回はそう決めました。」
カウラはそう言うと、雷を自力で発生させる限界まで練り込み、超電圧を作り上げる。そして、作り上げた雷を手から腕へ、腕から胴体へ、胴体から足へと流すように染み渡らせた。そのまま、全身に渡らせた雷を凝縮させ、手と足を中心に黄色の光を帯電させた。
「この状態は苦手なんですよ。」
「なんでだ?」
「これ、使い終わった後、2日間くらい手足が常にビリビリと痛むんですよね。」
「…ふぅーん。不便なんだな。ちなみに俺もお前のその状態は苦手だ。」
「……何故です?」
「その状態のお前に鬼ごっこで勝ったことがねえからな。」
「…………」
カウラはラザクの言葉に訝しげな表情だ。
本来カウラのこの状態、「雷纏」は機動力を莫大に加速させる。通常のトップスピードのギアを雷纏によって半強制的に外しているのだ。
普通ならばカウラの速度についていけるものはいない。
だが、この横にいる男は走力が並みのそれを超えている。追いつきはしないがついていける足力を持ち合わせている。
この男には今後、尋常離れしているなどという言葉を使わないでほしい。
「…なんだよ。」
カウラからの怪訝な瞳を向けられたラザクはジト目で見つめ返す。
「いえ、別に。それより、どうするかですよね。とりあえず、いつも通りのやり方でいいんじゃないですか?」
カウラはラザクの瞳には目もくれず、天樹に視線を向けながら告げる。ラザクはその言葉を聞き、
「いつも通り、まあ、それが一番やりやすい。」
と、カウラの提案に同意する。
「決まりです。では、行きますよ。」
「ああ。」
二人はお互いに為すことを理解すると、それぞれが明後日の方向に跳躍した。
連携するといった意志はないようにも見えるかのようであり、二人は片方のことを見向きもせず自分の進む方向に向かって飛ぶ。
いつも通り、これは二人が戦う上で常にやってきた方法だ。
して、その戦法は、「自分の判断で戦場を打破する」である。
お互いのことを考えないわけではない。
しかし、自らの本能に従い、戦うのみだ。このやり方がこの二人にとって一番戦いに適している。
余計な連携は不要。その場しのぎで闘うことで結果的に相対する敵をいつも葬り去ることができていた。
「…らぁっ!」
カウラは雷纒の状態で右へ、ラザクは咆哮と共に、炎刀を握りしめながら左へと飛躍する。
天樹は共にいた二人が急に別れたことを察知すると、巨大な根を存分に使い、それぞれ追跡させた。
だが、
「はあ‼︎上等だぁ!」
ラザクは後ろの光景を見て、凶笑を浮かべながら声を発する。ラザクの後ろには根が突っ込むように迫っている。しかし、追跡する根の数が明らかに多い。
ラザクの方が脅威な敵だと天樹が判断したのか。はたまた別の理由なのか。
ともかく、カウラへと追跡する根の数と比べても明らかに同数ではなかった。
「舐められたものですね。」
カウラはこの状況に対し、憮然とした態度だ。
だが、カウラは戦況を見据え、自ら纏った雷纒で追跡から逃れ続ける。
今、するべきことは。
カウラは頭の中で、今わかる天樹の特徴を思惟する。
というのも、カウラは天樹に対して一つ仮説を立てていた。
自分の全力の雷突をくらってもビクともしない根、ラザクの炎を打ち消す天樹。
そんな光景を見せつけられたわけである。しかし、カウラはまだ策が潰されていないと考慮していた。
この世には完璧などない。
この天樹とかいう化け物は現実離れしてはいるが、はたして完璧な生物か。
カウラはそれに対して異議を唱える。
完璧など程遠い。烏滸がましいことこの上ないと。
「…………」
カウラは天樹に目を向け注視しながら、懐から手のひらサイズくらいの石を取り出す。緑色に光り輝く鉱石のようだ。
「私が出した仮説を証明させてもらいますよ」
カウラは天樹に向かって聞こえもしないだろう言葉を投げかけた。
根に追われながらも天樹の近辺を飛び回り続け、回避し続けている。
だが、カウラは逃げるだけではない。
飛びながらとりだした鉱石を握りしめ、そのまま手中で砕き割った。手のひらに鉱石が砕かれ、いくつかの石が生み出される。
カウラは天樹の根の上を飛躍しながら移動し続け、砕いた岩を根に向かって満遍なくばら撒いた。
根の海の隙間に岩が入り込んでいく。
「ラザク!気をつけてください!」
「あぁ?何が?…っておい!ちょっと待て!」
ラザクは、カウラが今から為すことを理解し天樹から大きく距離をとろうと、疾走する。
カウラはそんな相方のことなどおかまいなしに両手で雷を練り込み始めた。
練りこみながら上へ上へと超高速で飛んでいき、ある程度の高さまでくるとその場から天樹を見下ろして。
下を見ると、巨大な天樹とちっぽけなラザク、そして自分を追ってくる根。
その様子を見ながら、まだ上昇し、上昇しながらカウラは雷纒状態で超高電圧の大きな雷突を作り上げる。雷纒状態で生み出される黄色い槍はバチバチと轟音を起こし、周囲に電気が散舞している。
そして、カウラは轟音高ぶる雷突を下に向かって構えると、そのまま振りかぶって、
「はあぁっっ!!」
盛大に、ぶち投げた。
カウラを追跡する根を目掛けて、ではない。
狙いは下に存在する根の海だ。
光る雷突は超高速で落下し、根に向かって進んでいる。
だが、真の狙いはここからだ。
「散りなさい。」
カウラが伏した目でそう言うと落下中に雷突は途中で姿を変え始めた。一直線に天樹に向かっている雷の槍は空中で分散し始める。
巨大な雷突から一本一本槍が分解されていき、何本もの黄色い光が根の海を覆い尽くした。
なぜ、雷突が分離したのか。
その理由は、カウラのばら撒いた光る鉱石だ。
「持ってきた甲斐がありました。」
カウラは手元にある余った石ころを見ながら、そう呟いた。
ナギラミ鉱山と言われる地。
数々の雷鳴が轟く山地であり、世界でも最も多くの落雷が起こる場とされる。
別名「雷轟山」とも称される鉱山。
カウラの持つこの石ころは、そこから採掘された鉱石であり。
して、その鉱石の特徴は避雷針の効力を持つことであった。
「雷光を、とくと、味わいなさい。」
カウラは天樹を見下ろし、空で一言、告げる。
いくつもの雷突はそれぞれが自分の行く先を見つけたようであり、根の海の様々な箇所にある緑の鉱石に向かって衝突しようと高速で落下した。
その様は、数十本の光る槍が雨のように降り注ぐようにも捉えられ、見るだけならば美しい光景だ。
だが、一つ一つの雷突はそれぞれが威力を殺しておらず、超電圧を込めて何十本もの雷塊が落下するとなるとそこは地獄絵図だと言えるだろう。
雷突分散による超広範囲攻撃。カウラの持ち技の一つである。
雷突が鉱石のある場まで落下し、衝突。
途端、辺りは黄色の光で埋め尽くされ、耳には雷が落ちたかのような轟音が鳴り響く。
カウラは空から当たった部位全体を吟味するため、天樹の元へと降りようとする。
だがその前にあることに気がついた。
「ほお、…。」
カウラが目にしたそれは先ほどまでカウラを追っていた根だ。だが、今その根たちは追跡を止め、自分の本体の元へと帰っているようであり。
カウラは口をにやめる。だが、油断はしない。
一つの仮説を確かめるため、その場から降下し、攻撃箇所を見る。そして、目の前まで降り、観察し、もう一度笑みを浮かべた。
カウラは自分の立てた仮説が正しかったと納得する。どうやら、天樹の根に当たった攻撃箇所は甚大な被害を受けていたようだ。
雷突が貫通しているところもあれば、完全に焼け焦げ分裂させられている根もあった。
「やはり。」
カウラは顎に手を当てる。
そう。うねっている根が常に硬いわけがない。
というより、そもそも鉄さえも貫通する雷突を防ぐほどの硬さならば、あんなにクネクネと蛇のように動かすことなど考えにくい。
じゃあ、なぜ雷突が効力を発揮する時としない時があるのか。
それはつまり、当たる箇所を部分的に硬化させていると推測できる。
「けれど、今回のは防げなかったようですね。天樹様とやら」
カウラは天樹に対し、皮肉じみた敬称を用いて呼ぶ。
天樹は数々の根を粉砕させられて苦しんでいるようであった。
あたりにきしゃぁぁといった不快音が鳴り響く。
カウラは今回、雷突を分散させて放ち広範囲で攻撃した。
威力は一本の雷突と比べれば劣るところはあるだろう。
だが、どうやら天樹には十分だったようである。
「硬化できる箇所は一つか数か所か。とりあえず、一度に多くの部分を硬化させることはできないようですね。」
天樹はカウラのその言葉が理解できたかのように暴れて呻いた。
根をこんなにも損傷させられたのは初めてであったとでもいうように。
天樹は暴れ、むやみやたらに周りの木々をなぎ倒す。
「打開策は少しだけだけれど見えましたね。」
カウラは天樹に視線を向けながらそうつぶやく。
この化け物は理解できないような生体だが、結局はただの化け物だ。
決して完璧な存在、生物として完全体ではない。
「おい…。」
カウラが天樹を見据えているとラザクが近くに寄ってくる。ラザクは憮然とした様子だ。
「どうしました?」
「まあ、弱点がわかったのはいいが。…やるなら早く言えよ。死ぬとこだったろうが。」
ラザクはカウラの広範囲攻撃の巻き添えをくらわぬ為、天樹からだいぶ遠くへと避難していた。ちょうど今、戻ってきたようである。
「まあ、無事だったんだし、あなたは死んでないし。よかったじゃないですか。」
「…ちょっとくらい人の心配しろよ…。」
「あなたの心配?ハッ!」
ラザクがため息を吐きながらこぼした言葉に対しカウラはありえないといった表情を向けた。
この化け物相手に攻撃が強すぎたということはないだろう。天樹はこれまで戦ったものの中で比較しても群を抜いて化け物だ。
ラザクは炎を刀に纏わせ、超高温で燃えゆる炎刀をかざす。
そしてカウラは、雷を今まで以上に練り込む。
「あれ、やんのか?」
「ええ、今回はそう決めました。」
カウラはそう言うと、雷を自力で発生させる限界まで練り込み、超電圧を作り上げる。そして、作り上げた雷を手から腕へ、腕から胴体へ、胴体から足へと流すように染み渡らせた。そのまま、全身に渡らせた雷を凝縮させ、手と足を中心に黄色の光を帯電させた。
「この状態は苦手なんですよ。」
「なんでだ?」
「これ、使い終わった後、2日間くらい手足が常にビリビリと痛むんですよね。」
「…ふぅーん。不便なんだな。ちなみに俺もお前のその状態は苦手だ。」
「……何故です?」
「その状態のお前に鬼ごっこで勝ったことがねえからな。」
「…………」
カウラはラザクの言葉に訝しげな表情だ。
本来カウラのこの状態、「雷纏」は機動力を莫大に加速させる。通常のトップスピードのギアを雷纏によって半強制的に外しているのだ。
普通ならばカウラの速度についていけるものはいない。
だが、この横にいる男は走力が並みのそれを超えている。追いつきはしないがついていける足力を持ち合わせている。
この男には今後、尋常離れしているなどという言葉を使わないでほしい。
「…なんだよ。」
カウラからの怪訝な瞳を向けられたラザクはジト目で見つめ返す。
「いえ、別に。それより、どうするかですよね。とりあえず、いつも通りのやり方でいいんじゃないですか?」
カウラはラザクの瞳には目もくれず、天樹に視線を向けながら告げる。ラザクはその言葉を聞き、
「いつも通り、まあ、それが一番やりやすい。」
と、カウラの提案に同意する。
「決まりです。では、行きますよ。」
「ああ。」
二人はお互いに為すことを理解すると、それぞれが明後日の方向に跳躍した。
連携するといった意志はないようにも見えるかのようであり、二人は片方のことを見向きもせず自分の進む方向に向かって飛ぶ。
いつも通り、これは二人が戦う上で常にやってきた方法だ。
して、その戦法は、「自分の判断で戦場を打破する」である。
お互いのことを考えないわけではない。
しかし、自らの本能に従い、戦うのみだ。このやり方がこの二人にとって一番戦いに適している。
余計な連携は不要。その場しのぎで闘うことで結果的に相対する敵をいつも葬り去ることができていた。
「…らぁっ!」
カウラは雷纒の状態で右へ、ラザクは咆哮と共に、炎刀を握りしめながら左へと飛躍する。
天樹は共にいた二人が急に別れたことを察知すると、巨大な根を存分に使い、それぞれ追跡させた。
だが、
「はあ‼︎上等だぁ!」
ラザクは後ろの光景を見て、凶笑を浮かべながら声を発する。ラザクの後ろには根が突っ込むように迫っている。しかし、追跡する根の数が明らかに多い。
ラザクの方が脅威な敵だと天樹が判断したのか。はたまた別の理由なのか。
ともかく、カウラへと追跡する根の数と比べても明らかに同数ではなかった。
「舐められたものですね。」
カウラはこの状況に対し、憮然とした態度だ。
だが、カウラは戦況を見据え、自ら纏った雷纒で追跡から逃れ続ける。
今、するべきことは。
カウラは頭の中で、今わかる天樹の特徴を思惟する。
というのも、カウラは天樹に対して一つ仮説を立てていた。
自分の全力の雷突をくらってもビクともしない根、ラザクの炎を打ち消す天樹。
そんな光景を見せつけられたわけである。しかし、カウラはまだ策が潰されていないと考慮していた。
この世には完璧などない。
この天樹とかいう化け物は現実離れしてはいるが、はたして完璧な生物か。
カウラはそれに対して異議を唱える。
完璧など程遠い。烏滸がましいことこの上ないと。
「…………」
カウラは天樹に目を向け注視しながら、懐から手のひらサイズくらいの石を取り出す。緑色に光り輝く鉱石のようだ。
「私が出した仮説を証明させてもらいますよ」
カウラは天樹に向かって聞こえもしないだろう言葉を投げかけた。
根に追われながらも天樹の近辺を飛び回り続け、回避し続けている。
だが、カウラは逃げるだけではない。
飛びながらとりだした鉱石を握りしめ、そのまま手中で砕き割った。手のひらに鉱石が砕かれ、いくつかの石が生み出される。
カウラは天樹の根の上を飛躍しながら移動し続け、砕いた岩を根に向かって満遍なくばら撒いた。
根の海の隙間に岩が入り込んでいく。
「ラザク!気をつけてください!」
「あぁ?何が?…っておい!ちょっと待て!」
ラザクは、カウラが今から為すことを理解し天樹から大きく距離をとろうと、疾走する。
カウラはそんな相方のことなどおかまいなしに両手で雷を練り込み始めた。
練りこみながら上へ上へと超高速で飛んでいき、ある程度の高さまでくるとその場から天樹を見下ろして。
下を見ると、巨大な天樹とちっぽけなラザク、そして自分を追ってくる根。
その様子を見ながら、まだ上昇し、上昇しながらカウラは雷纒状態で超高電圧の大きな雷突を作り上げる。雷纒状態で生み出される黄色い槍はバチバチと轟音を起こし、周囲に電気が散舞している。
そして、カウラは轟音高ぶる雷突を下に向かって構えると、そのまま振りかぶって、
「はあぁっっ!!」
盛大に、ぶち投げた。
カウラを追跡する根を目掛けて、ではない。
狙いは下に存在する根の海だ。
光る雷突は超高速で落下し、根に向かって進んでいる。
だが、真の狙いはここからだ。
「散りなさい。」
カウラが伏した目でそう言うと落下中に雷突は途中で姿を変え始めた。一直線に天樹に向かっている雷の槍は空中で分散し始める。
巨大な雷突から一本一本槍が分解されていき、何本もの黄色い光が根の海を覆い尽くした。
なぜ、雷突が分離したのか。
その理由は、カウラのばら撒いた光る鉱石だ。
「持ってきた甲斐がありました。」
カウラは手元にある余った石ころを見ながら、そう呟いた。
ナギラミ鉱山と言われる地。
数々の雷鳴が轟く山地であり、世界でも最も多くの落雷が起こる場とされる。
別名「雷轟山」とも称される鉱山。
カウラの持つこの石ころは、そこから採掘された鉱石であり。
して、その鉱石の特徴は避雷針の効力を持つことであった。
「雷光を、とくと、味わいなさい。」
カウラは天樹を見下ろし、空で一言、告げる。
いくつもの雷突はそれぞれが自分の行く先を見つけたようであり、根の海の様々な箇所にある緑の鉱石に向かって衝突しようと高速で落下した。
その様は、数十本の光る槍が雨のように降り注ぐようにも捉えられ、見るだけならば美しい光景だ。
だが、一つ一つの雷突はそれぞれが威力を殺しておらず、超電圧を込めて何十本もの雷塊が落下するとなるとそこは地獄絵図だと言えるだろう。
雷突分散による超広範囲攻撃。カウラの持ち技の一つである。
雷突が鉱石のある場まで落下し、衝突。
途端、辺りは黄色の光で埋め尽くされ、耳には雷が落ちたかのような轟音が鳴り響く。
カウラは空から当たった部位全体を吟味するため、天樹の元へと降りようとする。
だがその前にあることに気がついた。
「ほお、…。」
カウラが目にしたそれは先ほどまでカウラを追っていた根だ。だが、今その根たちは追跡を止め、自分の本体の元へと帰っているようであり。
カウラは口をにやめる。だが、油断はしない。
一つの仮説を確かめるため、その場から降下し、攻撃箇所を見る。そして、目の前まで降り、観察し、もう一度笑みを浮かべた。
カウラは自分の立てた仮説が正しかったと納得する。どうやら、天樹の根に当たった攻撃箇所は甚大な被害を受けていたようだ。
雷突が貫通しているところもあれば、完全に焼け焦げ分裂させられている根もあった。
「やはり。」
カウラは顎に手を当てる。
そう。うねっている根が常に硬いわけがない。
というより、そもそも鉄さえも貫通する雷突を防ぐほどの硬さならば、あんなにクネクネと蛇のように動かすことなど考えにくい。
じゃあ、なぜ雷突が効力を発揮する時としない時があるのか。
それはつまり、当たる箇所を部分的に硬化させていると推測できる。
「けれど、今回のは防げなかったようですね。天樹様とやら」
カウラは天樹に対し、皮肉じみた敬称を用いて呼ぶ。
天樹は数々の根を粉砕させられて苦しんでいるようであった。
あたりにきしゃぁぁといった不快音が鳴り響く。
カウラは今回、雷突を分散させて放ち広範囲で攻撃した。
威力は一本の雷突と比べれば劣るところはあるだろう。
だが、どうやら天樹には十分だったようである。
「硬化できる箇所は一つか数か所か。とりあえず、一度に多くの部分を硬化させることはできないようですね。」
天樹はカウラのその言葉が理解できたかのように暴れて呻いた。
根をこんなにも損傷させられたのは初めてであったとでもいうように。
天樹は暴れ、むやみやたらに周りの木々をなぎ倒す。
「打開策は少しだけだけれど見えましたね。」
カウラは天樹に視線を向けながらそうつぶやく。
この化け物は理解できないような生体だが、結局はただの化け物だ。
決して完璧な存在、生物として完全体ではない。
「おい…。」
カウラが天樹を見据えているとラザクが近くに寄ってくる。ラザクは憮然とした様子だ。
「どうしました?」
「まあ、弱点がわかったのはいいが。…やるなら早く言えよ。死ぬとこだったろうが。」
ラザクはカウラの広範囲攻撃の巻き添えをくらわぬ為、天樹からだいぶ遠くへと避難していた。ちょうど今、戻ってきたようである。
「まあ、無事だったんだし、あなたは死んでないし。よかったじゃないですか。」
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