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XVIII 痛み-I
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――6月上旬。
セドリックがエルを屋敷から連れ去って、約2ヵ月が経過した。
ピアスホールを開けてだいぶ経つが、マクファーデンにはホールが安定する迄例のピアスは着用するなと言われている。その理由は言わずもがな、安定していないピアスホールでピアスの着脱を繰り返せば傷口に雑菌が入り、化膿してしまう可能性があるからだ。今はピアスホールが塞がらない様に仮の小さなピアスを着用しているが、2ヵ月が経った今でも時々傷がじくじくと痛んだ。
安定する迄約3ヵ月。4ヵ月から5ヵ月程経てば完全にホールが安定すると言われている。マリアから貰ったピアスを着用できるのは、もう少し先の事になるかもしれない。そんな事を思いながら、自身の仕事部屋にて、依頼者から預かった香水を複数腕に抱えていた。
勿論、仕事部屋を片付けている訳でも、引き取り手が見つかった訳でも無い。他でも無い私自身が、依頼者から香水を買い取る為に吟味しているのだ。
化粧品に目が無い私は、こうして時々依頼者から預かった化粧品を吟味しては、気に入った物を買い取っていた。香水もその一つだ。
セドリックは現在、依頼不可になった依頼者に書類を渡しに外へ出ている。確か、此処から2つ程隣の街まで行くと言っていた筈だ。
現時刻は18時。彼は基本辻馬車を使わない為、帰ってくるのは遅くなるだろう。19時を過ぎるのではないかと推測している。
まだまだ、時間はたっぷりとある。ホールで寛ぎながら、香水を一つ一つ吟味するとしよう。気分を浮つかせながら、香水を目一杯腕に抱え仕事部屋を後にした。
――丁度、その時。
「マーシャ!」
怒気を孕んだ大きな声が、屋敷中に響き渡った。
紛れもない、セドリックの声だ。こんなに早く帰ってくるとは思っていなかった為、僅かながら焦ってしまう。
バタバタと廊下を駆け、吹き抜けになった二階の柵から身を乗り出し、ホールに立つセドリックの姿を確認する。すると、丁度顔を上げたセドリックと視線が交わった。
「おかえり。随分早かったね」
そう声を掛け、足を踏み外さない様慎重に、一段一段ゆっくりと階段を降りていく。そして既に数本出していた香水を乗せているテーブルに、腕に抱えた香水を雑に並べた。
「帰ってくるの、19時過ぎると思ってたから香水出したのに」
「帰ってくる前に終わらせても匂いで分かる。共有スペースを私物化するなと何度言ったら分かるんだ」
もう何度も耳にした台詞、最早テンプレートと化した言葉を彼が吐き、窓から一番近いソファに腰を掛けた。彼の傍に位置する窓は大きく開かれており、ややひんやりとした風がホールに流れ込んでくる。
肘掛に頬杖を突いて目を伏せる彼は、眠ってしまったかの様に動かない。2つ隣の街まで往復した為、疲れているのだろう。
しかし、頭の中に浮かぶのはエルの存在。此処で休みたいセドリックの気持ちも分かるが、家で彼の帰りを今も待ち続けているエルが少々気の毒に思えた。
セドリックがエルを屋敷から連れ去って、約2ヵ月が経過した。
ピアスホールを開けてだいぶ経つが、マクファーデンにはホールが安定する迄例のピアスは着用するなと言われている。その理由は言わずもがな、安定していないピアスホールでピアスの着脱を繰り返せば傷口に雑菌が入り、化膿してしまう可能性があるからだ。今はピアスホールが塞がらない様に仮の小さなピアスを着用しているが、2ヵ月が経った今でも時々傷がじくじくと痛んだ。
安定する迄約3ヵ月。4ヵ月から5ヵ月程経てば完全にホールが安定すると言われている。マリアから貰ったピアスを着用できるのは、もう少し先の事になるかもしれない。そんな事を思いながら、自身の仕事部屋にて、依頼者から預かった香水を複数腕に抱えていた。
勿論、仕事部屋を片付けている訳でも、引き取り手が見つかった訳でも無い。他でも無い私自身が、依頼者から香水を買い取る為に吟味しているのだ。
化粧品に目が無い私は、こうして時々依頼者から預かった化粧品を吟味しては、気に入った物を買い取っていた。香水もその一つだ。
セドリックは現在、依頼不可になった依頼者に書類を渡しに外へ出ている。確か、此処から2つ程隣の街まで行くと言っていた筈だ。
現時刻は18時。彼は基本辻馬車を使わない為、帰ってくるのは遅くなるだろう。19時を過ぎるのではないかと推測している。
まだまだ、時間はたっぷりとある。ホールで寛ぎながら、香水を一つ一つ吟味するとしよう。気分を浮つかせながら、香水を目一杯腕に抱え仕事部屋を後にした。
――丁度、その時。
「マーシャ!」
怒気を孕んだ大きな声が、屋敷中に響き渡った。
紛れもない、セドリックの声だ。こんなに早く帰ってくるとは思っていなかった為、僅かながら焦ってしまう。
バタバタと廊下を駆け、吹き抜けになった二階の柵から身を乗り出し、ホールに立つセドリックの姿を確認する。すると、丁度顔を上げたセドリックと視線が交わった。
「おかえり。随分早かったね」
そう声を掛け、足を踏み外さない様慎重に、一段一段ゆっくりと階段を降りていく。そして既に数本出していた香水を乗せているテーブルに、腕に抱えた香水を雑に並べた。
「帰ってくるの、19時過ぎると思ってたから香水出したのに」
「帰ってくる前に終わらせても匂いで分かる。共有スペースを私物化するなと何度言ったら分かるんだ」
もう何度も耳にした台詞、最早テンプレートと化した言葉を彼が吐き、窓から一番近いソファに腰を掛けた。彼の傍に位置する窓は大きく開かれており、ややひんやりとした風がホールに流れ込んでくる。
肘掛に頬杖を突いて目を伏せる彼は、眠ってしまったかの様に動かない。2つ隣の街まで往復した為、疲れているのだろう。
しかし、頭の中に浮かぶのはエルの存在。此処で休みたいセドリックの気持ちも分かるが、家で彼の帰りを今も待ち続けているエルが少々気の毒に思えた。
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